幽霊
幽霊が現れた。
姿は透けていて足は無く、宙に浮いている。
周囲にそれを投射する物は無いため立体画像というわけではない。何よりもどこか生々しさを感じられる。
私の気のせいで、ただの幻かと思い目を瞬かせるが、それはやはり私の目の前でこちらを怨めしそうに眺めている。
「ぎゃあ~っ! 化け物~っ!」
堪らぬ恐怖に私は手近にあったものを次々と手当たり次第に投げ続けた。
林檎、皿、フォーク、ナイフ、しかしながらどれも効果がない。
座っていた椅子を持ち上げて渾身の力を込めて叩きつける。
何度も何度も繰り返してみるが、やはり空振りのようにすり抜けてゆく。
椅子を投げつけてその場を逃げ出す私。だが幽霊は執拗に追い掛けて来る。
くそっ、私に何の怨みがあるというのか。
再び周囲の物をぶつけてみるが、やはり全ては素通りする。
「ちょ、止めて。
いくら何でもそれは酷いよ~」
幻聴までもが聞こえてきた。
やはりこれは本当に幽霊なのか。
「うるさいっ! ここはお前の居ていい場所じゃない! おとなしく地獄へ行きやがれ!」
幽霊は泣きながら去っていった。
これで漸く一安心。
それにしても、言葉こそが最も有効な武器というのは幽霊相手でも変わらないのだな……。
実は友好的な幽霊。そして偏見から理を以て相手を否定する主人公。
理解できないものへの拒絶反応は得てしてこういうものですよね。(苦笑)




