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初めての狩り

で、やってきたのがこの工場。

いや、トール記憶で知ってはいたが、冗談抜きでモロに工場だな。

タイヤ交換待ちのクルマとか置いてあっても違和感あんまりないな。


「なんじゃ、トール。 、お、そーじゃ、ウチの若いもんが世話になっとったな」


で、その工場の一番手前で大物のフルプレートを組み上げていた筋肉モリモリの出川哲朗みたいなのが、こちらも見ずに野太い声をかけてきた。

うぷ、働く男の背中から染み出す汗のニオイ。

ここまで酒の饐えた匂いが漂ってくる。


てか、なんなの。この巨大なフルプレート。

こんなデカい人間おるんか?


まあ、そこには触れないでおこう。。



☆ユザミ・ディ・バッハ

☆種族 ドワルブ(男)264才

☆職業 クランマスター(ランクA)

☆体力 S−

☆魔力 A+

☆耐久 S++

☆敏捷 D

☆知性 A

☆運勢 B−−−

☆加護 鍛冶神の加護

☆所持スキル 【刀剣鍛冶】【防具鍛冶】



「いえいえ、こちらこそ。 仕事振ってもらってありがとうございました」


そう、実はこの工場。

先日まで参加していた護衛依頼の受注元請け先の冒険者クラン【鎚の響き】のクランハウスなのだ。

ドワルブ族のみで構成された冒険者の集まりで、商隊の護衛任務大手である。

ほら、ドワルブ族ってモノ造りの得意な種族だから旅程の中で荷馬車の故障とか簡単に直しちゃうのよね。

そりゃ、商人さんたちからすれば重宝するわな。


とはいえ、荒事専門ではないので足りない分野は外注で補うわけだ。

ちなみにトールさんは斥候要員ね。

彼ら、身軽さとか皆無だからな。


「 お? そいや、一昨夜はウチのと打ち上げしとったんじゃろ?  オマエ珍しく潰れとらんな??」


あー、やっぱトール氏お酒弱かったんだな。

こっちのトールさんはね、酒豪なんだよ。

エリート営業職の肝臓、なめんな? 客先より早くに潰れてたんじゃ商売になんないのよ。


ちなみにこの世界のドワルブ(ドワーフ)族。

しっかり大酒飲みで力持ち。

でも、小柄でヒゲもじゃってわけではないんだよな。

なんてのかな、オールブラックスみたいな感じ。

変な踊りもするし。

この世界、ちょいちょいオリジナリティ出してくるよな。。


「ははっ、昨日はダメでしたがね。 ペース配分がわかってきたんすかね」


適当に誤魔化しとこ。


「   親方ーーー、来月の、、て、おう、トールお疲れっ!」


奥からぬおっ、と出てきた大男。



☆ドズル・ジ・デシニア

☆種族 ドワルブ(男)64才

☆職業 冒険者(ランクB)

☆体力 A

☆魔力 C+

☆耐久 S+++

☆敏捷 D−−−

☆知性 B−

☆運勢 C−−

☆加護 ―――

☆所持スキル 【補修鍛冶】



前の護衛依頼のリーダーを務めていたデシニア。

ちなみにドワルブは苗字で呼ぶのがマナー。

名はその氏族のみしか呼んじゃダメなんだそうな。

サンライズ的にもダメだろうな。


てか、トールさんは【ステータス確認】で名までわかっちゃうけれど、普通は赤の他人に名なんて教えないそうな。


「や、デシニアさん。 お世話になりました」


元請けさんだし、若く見えても俺なんかより遥かに年上だからな。

言葉遣い大切。


「 また次も頼むぜ。 お前のお陰でほとんどトラブル無しだったからな!」


デシニアさんは【鎚の響き】の若手頭らしい。

体格はプロレスラーみたいで、キズだらけの顔も怖い。でっかい戦斧とか背負ってたな。

で、どっかのトゲトゲのついた深緑の軍服を着た中将さんクリソツ似。

同じく娘さんがいるらしいが、名前は知らん。

まさかミ〇バ様じゃないよな。。

将来、変なおかっぱアタマのネーチャンに振り回されんように祈る。


元デキるエリート営業職としては、クライアントへの挨拶フォローも重要な営業活動。

こーいう地道な積み重ねが息の長いコネを生みだすのだ。

ドワルブとか3〜400年くらい生きるらしいからな。トールさんの老後もよろしく頼みたい。








はい、そんな訳でね。

はるばる来たよ【西の渓谷】。


夜明け前にリオレの西門から出て、いま朝四つ。

現代風にいえば10時くらいかな。


トールさん、結構脚速くて普通の歩きの感覚で時速8㌔くらい出てる。

藪とか岩場とかも、身軽にヒョイヒョイとお構いなしやね。

とはいえ、上には上がいる。

獣人族の奴らなんか普通にロードバイク並みのスピードで移動するからな。


そんな訳で距離的には40キロくらい離れてるのかな。

トール氏記憶頼りで歩いて来たけど、方向感覚や認知能力はトール氏てばかなり優秀な感じだ。

踏み跡すらないルートを迷いもせずに来れちゃったよ。GPSとかいらんな。

さすが中堅ソロ冒険者。


ただ、トール氏記憶だとこんなにハイペースで歩き(小走り?)続けるのは無理っぽい感じだったんだよな。

体力B−、敏捷Bあたりのパラメータが影響するんやろうか。

確かに街で見た非戦闘系の一般人は、軒並みFとかだったなあ。

今度同じ冒険者でランクCのステータスと比べてみたいな。


まあこのあたりのステータス値の検証も、本日の課題ではあるんやけど。



で、この【西の渓谷】。

いわゆるリザードマンの狩場である。


昔はもっと街に近いところでも出没していたらしいけど、乱獲がたたり年々生息域が街から遠くなってきているのだとか。

冒険者の存在意義からすれば立派な成果だが、環境保護的には、どうなんやろ。。

まあ魔物は本能でヒトを襲い喰らう。

そんなもん保護しようとか考えないほうがいいか。

クレーム電話入れてくる似非ナチュラリストなんかおらん世界線やろし。


【西の渓谷】と呼ばれるエリアに入ってほどなく。

灌木がまばらに生えて赤茶けた岩がゴツゴツと隆起侵食されたような広大な地形が現れる。

まるでグランドなキャニオンみたいやな。


いや、さ。 行ったことないけど。


渓谷、というと深いV字の谷底を滔々と沢が流れてせせらぐ水音が聞こえる、、みたいなイメージ。

けどココは緩く段丘状に侵食された岩場という感じ。


荒涼としてる。


東京ドーム何個分とかの巨大な岩盤を、大昔から流れが少しずつ削り取って出来上がってきた奇景といったところか。


しばらく気配を抑えて探りながら進むと、、


あれだ。。。



細長く前に伸びた、乱杭歯を覗かせた凶暴凶悪そうな顔。

前脚は細くて小さめだが手先には鋭く湾曲した鉤爪が見える。

対照的に後ろ脚と尻尾は太くて、いかにもパワフルな印象だ。

ジュラシックなパークにでてくるヴェロキラプトルみたいな、というかまんまそれやん。


マンとかつける要素あんまりなくて、モロ爬虫類。ほとんど意思の疎通なんかできそうにない。

実際できんけど。

うーん、思てたんと違う。。。


だ、けれども、お誂えむきに単独。


これも今日の検証にこの【西の渓谷】を選んだ理由のひとつ。

リザードマンは、基本的に群れない魔物だ。


地形的にも開けた条件なのでトールさんのエモノのロングソードを振りやすいというのと、人型に近いゴブリンとかより殺すのに忌避感が少なそうだからというのも、理由としてある。


ジリジリと詰めて、彼我の距離が数秒のダッシュで詰められるまで近づく。

あかん、めっちゃ変な汗かいてきた。

落ち着け落ち着け。トールさんはやればできるコ。

落ち着け落ち着け。。


【気化】


その瞬間、リザードマンの足元の岩がゴッソリと消えて無くなる。

グェ、とか変な声をあげて盛大にコケるリザードマン。

間髪入れずにダッシュして抜剣!


ここに来るまで、走りながら何度も練習してきた一連の動作。

流れるようにスムーズにリザードマンの首に袈裟懸けに剣閃が走った。


ガキンッ


あれ?  ザシュッ、とかのイメージだったんだけど、伝わってきたのはそんな鈍い衝撃。

かったい木に思いっきり鉄パイプでぶん殴った感じ。

斬鉄剣とかあんなん嘘っぱちや。

え、やばっ 全然切れてないやん!


見た目以上に硬い鱗に護られているのか、リザードマンの首は、半分程も切れていない。

足元の岩が突然消失して、体勢を崩しまくってはいるがそれでも尻尾を支えにすぐに片脚を地面に突き立てて強引にこちらへと鋭く大きな口を向けて来る。

粟立つような血液混じりのだ液を振り飛ばしながら襲いかかる乱杭歯が、妙にスローモーションに見えた。


【気化】ッ


咄嗟に、さらに追い打ちでリザードマンの尻尾と脚の下の岩を消す!

少し離して柄尻に添えていた左手を一気に引き下げて、重たい刀身を梃子の原理で跳ね上げる。


一番スピードに乗った剣先が、更にバランスを崩して仰け反る喉から下顎を真っ二つに裂く。

ロングソードに込められた運動エネルギーは、そのままリザードマンの細い身体を宙に跳ね上げて数メートルも弾き飛ばした。

最後に頬のすぐそこを、リザードマンの太い尻尾の切っ先が抜けていく。

いや、当たっていたのか。

頬がザックリと縦に裂けて自分の血の匂いが喉の奥まで染み込んできた。


アドレナリンが沸々とこめかみを焦がす。

呼吸を忘れる程にロングソードを握る手が震える。

思っていたより遥かに硬い感触だ。

これが魔物を斬るということか。。。


握りを上段に。刀身を斜め下に。

防御を主目的においた構えのまま、体感ずいぶん長い時間が経った。

裂けた頬が、ドクドクと脈を打って熱くあつく跳ねるように感じる。


まだ。


まだ。。。。



弾き飛ばされ何度か大きく痙攣していたリザードマンの身体から蒸気がたち、ロングソードの刀身の向こうで、そしてゆっくりと消えていった。


跡には、小さな青い魔石がひとつ、残って転がった。



あかん。

ヒザわらっとる。。。

握力、もうない。。。

めっちゃキツいやん。

トール記憶に、こんなんない。


やばい、ポーション!ポーーションっ!!


冒険者って、こんな特に意識もなく魔物を狩ってるのか。

リザードマンて、ちょっと強めだけどそれでも、雑魚キャラの範疇にいる魔物だぞ。

ちょっと見通し甘かったかも知らん。

剣の扱いがどうとか、そんなの以前の問題やん。

スキル【両手剣】はしっかりと仕事をしてる。

アホほど重いロングソードをズブの素人のトールさんがこんなに使いこなしてるんだから。


ただ、そんなことより。


魔物に生命があるのかどうかは別として、その生命のやり取りがこんなキツいなんて、な。

ヤバい、トラウマになりそう。

これ、まだトール記憶がある分で泣いてないだけでさ、なかったら絶対泣いてた。




ちょっとムリっ、撤収!








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