オルバ婆さん(熟女)
武具の新調をしても、まだまだ懐がポッカポカなトールさん。
野営の装備を一新すべく、中央街の市場をブラブラ流してみてる。
探してるのは、寝袋、マット、水筒、ランプ、あたりだな。
寝袋は、この前の【小鬼の森】で一緒になった【民の護り手】が使ってたから、きっとあるに違いない。てか多分あれはクランの共同装備なんだろうなあ。大手クランは、そういう所が違うわ。
マットは、まあトール氏の持ってたウールのがあるんだけど、、。
正直、薄くて、、致命的にボロい。
かさばってもいいから、も少し厚いのが欲しい。
睡眠、大切。
水筒もトール氏は多分持ち運びを考えてたんだろうけど、最小限のサイズしか持ってなかったから、これも大きいものを。
ランプは、、まああれば。
実は【ステータス確認】で出てくるウィンドウがぼんやりと発光してるので、手元はそれで事足りるんだけど人前で使えんし。
まあそんな感じで露店エリアをひやかしてるんだけど、やっぱりその手の旅人向けの装備なんてほとんど扱ってる店がない。
そらそーやな。需要ないもん。
住民相手の市場だもんな。食料関係とか日用品とかだよな。
となると、やっぱりあそこだよなー。
でもトール氏記憶によれば、あんまり近づきたくないんだよなーー。
賑わいをみせる中央街の広場から、少し西へ。
祭祀教の教会よりももう少し運河に近い裏路地に、その店はあった。
ぱっと見、何かの倉庫への入り口にしか見えない。
入り口以外に外への窓は見当たらず、外から中をうかがうことも難しいな。
間口の大きさは、コンビニくらい。
ただ、両隣をほかの建物で挟まれてるから奥行きはよくわからんけどな。
お店らしい装飾や看板もないのだけど、入り口が開いていれば営業中だということらしい。
「こんちはー」
恐る恐る入り口をくぐって薄暗い店内へ。
天井の明かり採りの窓から柔らかく入った光だけしかないが、まあ薄暗いくらいか。
他に客は、、いないなあ。
壁は天井まで棚がびっしりで、何かようわからんモノでいっぱいだ。
真ん中には大きなテーブル。その奥に背の低い棚が並ぶ。
いずれも商品なんだかゴミなんだか分からんモノで埋め尽くされてる。
「なんじゃ、トール。 何の用じゃ」
一番奥の椅子に座ったままでこちらを睨んでくるのが、この店のオーナー。 オルバ婆さんだ。
この婆さんが、リオレ冒険者の間では超絶有名人なんだよね。
まあ、ひとつは目利きの確かな道具屋店主として。
そしてもうひとつは、そのおっかなさだ。
気に入らない客は魔道具で追っ払う、ボッタくる、中には呪いをかけられたなんて噂もある。
トール記憶でも、なんかいつでも叱られてた記憶しかない。
☆グライトフ・オルバニー(隠蔽偽装中)
☆種族 魔族(女)308才
☆職業 道具屋店主(熟練度S)
☆体力 S−−
☆魔力 S++
☆耐久 B
☆敏捷 B
☆知性 S−
☆運勢 B−
☆加護 魔導神の導き
☆所持スキル 【魔導師】【隠蔽】【心眼】
え" 、。
ちょ、まてまて。
魔族て。
そのうえ、このステータス!
この国では、というか遥か遠くの魔凰国以外には、魔族は存在しないことになっている。
理由は魔力の根源といわれる魔素が薄くて、長く活動できないから、とか。
のに、、
「なんだい、相変わらず無愛想な男だね」
ああ、やばいやばい。
いやちょっとさ、ビックリしてたんだわ。
ステータス知らんかったら、ただのヒューマンの婆さんにしか見えんし。
「ひやかしなら帰っとくれよっ」
扱っているものは冒険者向けの道具類なのだけど、とにかくいつも不機嫌だ。
だいたい、怒られる。客なのに。
ただ、売りモノは悪くないので、そこら辺に慣れてきた中堅あたりには受けがいい。
ただ、そのちょっと扱いにくい婆さんが、まさか魔族だなんて聞いたことないわ。
「いやいや、寝袋見にきたんだよ」
「 寝袋ぉ、 ? 、んんん? 」
えええ、、なによ?
そんな睨まれるほど、トールさん嫌われてたっけ?
金払いもいい方だったはずなんだけど。。
なんか、めっちゃ睨んでくるな。
ん? そいやスキル【心眼】て、、
☆【心願】
☆等級 S
☆LV 28
☆目に見えない対象物の本質を感じる
鑑定・看破・予知
「 、、おまえ、何者だい? あの小僧じゃないね」
うわっ、! 寒っ!!
なんか急激に冷気がおりてきた!
絶対にこの婆さん、トールさんの何かに気づいた。
あかんあかん、【気化】!
降りかかる冷気を全部気化させてしのぐ。
えー、強制バトルイベント!?
「 ! ほぅ。 何だか知らないが、やるじゃないか」
「あーっ! たんまタンマっ!! ちょっ、待てって!!」
あわてて両手を挙げて降参ポーズをとる。
コッチの世界でこれ、通じんのかね?
「 も、一度聞いてやるよ? 、おまえ、何者だ?」
うーわー、めっちゃドス効いとるわ。
これ、手降ろしたら殺されるな。
とりあえず正直に話しとかんと、わりとマジで殺されそう。
まあ、向こうの隠し事もこっちの手の内にある訳だしな。
痛み分けドローってことで。
いや、トールさんもさ。
【むこう】で約40年。【こっち】で20年の合わせて60年分の人生経験があるわけですよ。
もちろん殺されそうになったことなんて、トール氏の何回かくらいしか無いんよ。
基本、平和主義ね。人殺しダメ。戦争反対。
だからこんな危ない婆さん相手でも、いきなり【気化】の餌食にする気なんて更々ない。
後味悪そうだし。
さっき婆さんが放ったなんか知らん魔法も、【気化】で消せたし。
まあ何があっても何とか出来そうな気もするからな。
強者の余裕ってヤツ? 知らんけど。
ざっくりだけど、これまでのコトをかいつまんで話してやった。
婆さんも、とりあえず黙って聞いてくれたし。
まあ、トールさんの背後にはずっと氷の弾丸みたいなのがキュルキュル音をたてて回転してたけど。
「 驚いたね、まさか生きてるうちに、また【オクリビト】に会えるなんてね 」
ひと通りトールさんの話が終わったときに、そう言って婆さんは狙いを定めていた氷のキュルキュルを消して、傍らの椅子に座り込んだ。
「 【オクリビト】って、なんです?」
「 滅多にあるもんじゃない。 オマエさんのように神々によって送り込まれてくる異世界人のコトさね」
言いながら、婆さんは手のひらを胸の前に上げて、そしてひっくり返した。
途端に店の入り口が自動で閉まって、店内の空気がピーンと張り詰めた。
空気の膜みたいなのかな? 試しにちょっと角ッコを【気化】で消し飛ばしてみた。
よしよし、消えるね。
「安心おし、ただの結界だよ おまえ、もうみえてるんだろ? アタシの正体が」
言うなり、婆さんの頭の方からまるでAVのモザイクみたいにボヤボヤしだすと、ほんの数秒の間でその場に一人のやけに色っぺえ熟女が現れた。
艶めかしいツヤのある黒い光沢生地のスリムなドレスにメリハリの効いたナイスバディ。
これまたツヤッツヤの長い黒髪に、羊みたいな小さな赤い巻き角。
キターーーー。魔族キターーーーーー。
しかもテンプレ魔族。正しく魔族。魔族のお手本!
「 フン! なんとも気が抜けるねえ 」
あ、ごめんごめん。
トールさん、歳甲斐もなく舞い上がっちゃった。
だってあんまりにもあんまりなんだもん。
「アタシの【心眼】で全部を見きれないとか、これだから【オクリビト】は嫌んなるよ」
あ、見えてないんだ。まあでも、トールさんの話しの信憑を裏付ける程度には見えてるってことか。
ん? てか、その言い方だと、、
「オレのほかにも【オクリビト】って、いるんか!?」
「 なんだい? 会ってみたいのかい??」
あ。ナニその悪そうなカオ。
いや別に会ってみたくはないけどさ。
気になるやん。そんだけ。
「ふん、つくづく気が抜ける男だよ まあそれよりどうすんだい? アタシと殺りあうのかい??」
またそんな剣呑なこと言わんと。
てか簡単に殺されそうなタイプの方ではないよね。
ココはさ、まあ出会い頭の事故みたいなもんだしさ。ドローでよくない??
お互い大っぴらに知られたくないヒミツ持ちなんだし、仲良くやろうよ?
「魔族とヒューマンが、仲良くだぁ? ナニ抜けた事ほざいてんのさ」
まあ、その辺の確執?的なものは、オレの知ったこっちゃないし。ねえ。
正直、魔族とヒト族が争ってる理由なんてもんも、知らん。なんせこの世界にはネットもないからな。
教えてグー◯ル先生とか出来んし。
あ。魔族熟女、呆れてる?
いーじゃん、世界平和。人類みな兄弟、でさ。




