【剣使い】
「 拙僧、トール殿の特異性はある程度理解する事にしましたぞ。」
なんだよ藪から棒に。
まあ、そうしてくれると助かるけど。
あれから陽が傾くまで【西の渓谷】を探索して、本日の戦果はふたり合計で、
リザードマン ✕ 28匹
ハイリザードマン ✕ 1匹
というところで落ち着いた。
え? ゴブと桁が違う??
そりゃ、基本群れる魔物とそうでないのの差だよ。
魔石の単価はリザードマンのが数倍以上高いが、数で補って余りあるのがゴブ狩りだ。
特にロングソードなんていう破壊の権化みたいな得物ならそれも可能だ。、、ハイリスクだけど。
今回だってハイリザードマンのドロップを除いたとしても、二人割で収支は十分にプラスだ。
普通の冒険者なら、まず間違いなくこちらをえらぶだろうな。
ほんと、トール氏は随分と変わり者だったようだ。
「 とはいえ、あの【気化】というスキルは、全く訳がわかりませんぞ」
昨夜と同じ野営地。
夜もとっぷり暮れて、なんか絵面的に昨日見たやつだな、コレ。
焚き火のチロチロする炎が、心地よいなあ。
もともと都会育ちのアウトドア好き男子だったから、こういう焚き火とか野営ってワクワクするんよな。
「 まるで神の御業、、力も技も何も通用しない、、」
まあ、落ち着けよ。
ほれ、酒な。どうどう。
キミもキャンプの夜を愉しみたまえよ。
トールさんに言わせれば、炎だの氷だのバンバン出してくるこの世界の魔術のが訳がわからんよ?
その点、【気化】はただの自然現象だから。
そこにあったモノのカタチを変えてるだけ。
ただ、まあ対人でも使用可能なのは、、黙っておこう。うん。
☆【気化】
☆等級 SSS+++
☆LV 10«new»
☆全ての物・事象・魔物・生体を気体に変える事が可能
あーー、なるほど。うん。順当にバグってきてるね。そろそろボクの手にも負えなくなるなあ。
あ、ちょっと表現がマイルドになってる。
その分どうとでも解釈できそうで怖いけどな。
たぶんそのうち、『全てを気化可能』とか言い出しそうな予感がする。
てか、あとこれ何が追加されるのかな?
もうそろそろカンストなんじゃない??
あと、は、
☆【両手剣】→【剣使い】
☆等級 B→A
☆LV 20«new»
☆剣を扱う時に常時発動
重量操作«new»・体力増加«new»・体捌き(オート)«new»・威圧効果(大)«new»・瞬脚
おおう。
なんか名称変わっとる。。
クラスチェンジ、的な?
この世界の定番のロングソードの使い方してないから、変わっちゃった、とか??
でもLVは引き継ぐのか。
普通は、またLV1からだよな。。
でもこれ、剣全般ってことかな?
等級も一個上がるってことだろうな。。
そういえばハイリザードマン倒してから、妙に身体が軽く動くようになったな。
コレのおかげか。
もうこれ、ここにきてトールさんの成長速度が、少しおかしいのが確定したな。
だってこの世界に転生してまだ1週間くらいだよ?
簡単に上がりすぎだってば。
完全にコレ、俺様TUEEEEE系やん。
「 、、聞いとるのですか!? トール殿っ」
ああ、はい。ごめんなさい聞いてませんでした。
もー面倒くせえな。
次の日。
トールさんとウーバイくんのパーティーは、のんびりと歩いて、昼過ぎにはリオレに帰還した。
道中も、特にイベントはなかったな。
まあ、リオレ周辺に限った話だけど、少なくとも街道沿いに魔物は出てこない。
冒険者がほぼ狩り尽くして、それぞれのリポップスポットまでの封じ込めがとっくの昔に完了しているからだ。
ゴブリンなら【小鬼の森】とか、リザードマンなら【西の渓谷】とかは、つまりは奴らのリポップスポットなんよ。
街道から外れると、さすがに偶にはぐれモノがいたりするけど、ホントに事故みたいな確率だな。
街道は街道で、領主の騎士か、王都から派遣されている騎士団による巡回が頻繁に行われているし、怪しそうな場所には詰所や砦が築かれていて盗賊すらなかなかお目にかかれない。
とはいえ、騎士団の方はあんまり評判良くないけどな。
交易路の要衝リオレとその周辺は、他地域と比べても治安が良いと言っていい。
「おかえりなさい! どうでした?お二人のパーティーは??」
帰還報告を入れに、冒険者ギルドの受付けに立ち寄る。
カウンターからちょこんと顔を出して笑顔で出迎えてくれるライア嬢は、今日も変わらず小学生みたいで、かわいい。
「やあ、ただいまライアさん。」
いかん、。
親戚の伯父さんのノリで、ちょっとデレそうになるのをグッと堪える。
気を抜くとお小遣いとかあげそうになる。
このヒト歳上。このヒト歳上。思い出せー。
「悪いんだけど、支部長いるかな?」
「あら。 たしか【西の渓谷】でしたよね?」
小さいのに察しが良くて助かるなあ。
あ、違うって。 3コ上のお姉さんだった。
「 うん、ちょっと報告ね。」
さすが西門支部のベテラン受付嬢。
根掘り葉掘り聞かずに、ヒラリと手のひらでカウンター横の扉を示してくれた。
ウーバイくんと一緒に扉の方へと回り込む間に、先回りしてライア嬢がノックしてくれる。
数秒のち、この前説教された時にさんざ聞かされた支部長の声で返事が返ってくる。
「 トールさんが報告あるそうです。」
言いながらライア嬢が重そうな扉を開けてくれた。
悪いねえ、こんどおこず、、いやいや違った。
「 なんだ?どうした。 ジャスレ司教まで、ってそうかお前ら【西の渓谷】に肩慣らしに行ってたんだったな」
書類から少し目をあげる。
さすが元軍属。チラチラ威圧感がにじみ出とる。
まんま、前職?のパワハラ上司やな。。
こっちの世界でも変わらないんだなあ。
「ええ、その件で、、」
マジックバッグ(無限収納)からゴトゴトンと、ハイリザードマンのドロップアイテムを机に置いた。
あ、さすがに毒腺は出してないけど。
「 ん、!? これ、!」
☆暴君蜥蜴の尾骨
☆等級 B
☆LV ―――
☆尻尾の先端の一際硬い突起骨
☆暴君蜥蜴の魔石
☆等級 A−−
☆LV ―――
☆水の属性を宿す希少価値の高い魔石
【西の渓谷】に棲むリザードマンは青く輝く水属性の魔石を落とす。サイズはおおよそウズラ卵。
それに対して、この魔石は大人の握り拳ほどの大きさで青い輝きも遥かに強い。
その隣にある六本の鋭い突起を持つ尾骨も、サイズから推測される本体の大きさは通常のリザードマンよりふた周りは大きいだろう。
「ハイリザードマン、狩った」
「狩った、って、、お前ら2人で?」
うんうん、分かるよその気持ち。
トールさんも、ちょっとどうかと思ってるから。
「 拙僧は雑魚を受け持っただけですな」
をいっ!
「ハイリザードマンは、トールどのの単独討伐ですぞ。」
こんのクソ坊主っ!
そこら辺は適度に濁して、って言ったやん!
「 いやいや、そりゃ偶々で、」
「あー、わかった分かった。 細かい事は報告書にして出せ。 【知り得た情報と考察】だけでいいっ」
冒険者はパーティーを組んでいたとしても、基本的にはみな個人事業主だ。
秘匿しておきたいノウハウまで公開していたら、商売あがったりだからな。
だけど客観的な事実やその考察は、情報として共有されるべきものが多い。
エリアボスの情報なんかは、その最たる例だ。
その点で、この支部長。
トール氏の時からあんまり付き合いなかったけど、事務方としてはかなり優秀だな。
相手を観る眼がしっかりあって、話が早い。
お互いの都合をしっかりと汲んで、どちらにも利があるように落としこむ度量もある。
こういう手合は上手く付き合って味方につけておかないとあかんタイプだ。
ただのパワハラ上司でなさそうで、何より。
じゃー、ついでだ、
「あー、あと、 毒腺もあるんだけど?」
「まとめて買取り所に出しとけっ こっちから連絡しといてやる」
すいませんねー。お手数かけちゃって。
今後ともよろしくお願いしますーーーー。




