ハイリザードマン
とりあえず見えてる範囲、全部【気化】!!
流石に岩棚までは届かなかったが、それでも二人を要に扇状にゴッソリと靄に変える。
向かって右から二匹と左から一匹。
いきなり自分の目の前から身を隠していたブッシュが消えたんだ。驚けこのトカゲ野郎。
右からの二匹のうち外側にいたのは消えてないブッシュへ飛び込んだが、もう一匹はそのまま突っ込んでくる。【気化】のカモだっ。
ひと睨みで靄に変えてやる。
気分的にはアレだな、石化魔法のメデューサ。
さらに見えてる範囲の障害物を【気化】させて更地にしてやる。
隠れた一匹もすぐに発見!
でもコイツ勘が鋭いな。やたら動きまくって【気化】が当たらん。
「右は任せたっ!」
同時に左からのもう一匹の動きに合わせて瞬脚で跳ぶ。
瞬歩の倍以上の距離を予備動作無しで一気に詰める瞬脚。内臓が置いてかれるような感覚にはまだ慣れてないが、そんなのはこの際どうでもええ。
コイツは右の程オツムの出来が良くないらしい。
アホみたいに直線で突っ込んでくる。
基本的にリザードマンは隠密からの奇襲で獲物を狩る爬虫類独特の習性が濃い。
確かに動きは早くトリッキーだが、見えているなら対処も容易だ。
呆気なく【気化】で半身を捉えられて、僅かな時間差で全身が靄に変わった。
右手ではウーバイがもう一匹を翻弄している。
岩棚の上では、まだヤツがこちらを威嚇するように見下ろして盛んに奇声を上げていた。
ロングソードを横薙ぎにして靄になったリザードマンを両断。
少し遅れてウーバイも一匹を仕留めたようだ。
さて。。
岩棚の上でふんぞり返ってるヤツの足元。
ひのふのみの、、、おお、。
手下のリザードマン、呼んだのか。
まんまモン◯ンやんか。。
「あと5匹、ですな」
いやいや、それプラスでメインのハイリザードマンですぜ旦那。
あれ、号令かかるの待ってんのかね。
手下ども威嚇してくるけど、かかってこん。
近づいたら【気化】の餌食にしたるのに。。
きっちりと統率してるね。
さて、どう出る? トカゲの親玉よ?
かかってこいや、オラ。
ひと呼吸の僅かの均衡は、ハイリザードマンの高さを抑えた鋭い跳躍で終わりを迎える。
ジグザクに斜面を蹴って真っ直ぐこっちへ駆け下りてくる。
視界の隅には一斉にウーバイに向かう手下どもがチラリとかかるが、多勢に対処しやすいウーバイのスキルと鉄棍なら、持ちこたえるだけなら可能だろう。盾こそ持ってないが、ウーバイは十分タンクとして機能できる。
最大の脅威をトールさんに定めた訳やな。
トカゲのクセになかなか見る目あるで。
しかもコイツ、手下が殺られるところを観察してたのか、【気化】が不規則な素早い動きに対応できないのを見抜いてら。さすが上位種。
「こちらは引き受けましたぞっ!」
うーん、心強いね。
じゃあコッチはトールさんに、、て。
いやコイツ手強いぞ。。
なんせ図体がデカいからリーチが長い。
牙の咬みつきも脅威だけど、あの硬そうなたてがみも怪しい。近くで見るとヌメってるから、毒とか持ってそう。
しかもリザードマンだと精々カウンターバランサーの役割しか果たしてなかった尻尾もムチみたいな使い方してくるし。
先端のトリケラトプスっぽい突起。当たると痛そうだな。
リザードマンがヴェロキもどきだとすれば、ハイリザードマンはスリムなTレックスあたりだなっ
なんだっけ、アロサウルスだったっけ??
スリムなだけに動きが素早くて、なかなか【気化】の照準がブレて当たらない。
フェイントからのヒットアンドアウェイを繰り返してコチラの消耗を狙ってきてるな。
エリアボスの戦い方としては地味だけど、絶妙にいやらしい。
頭小さいくせに知恵は働くようやな。
とはいえトカゲ脳。
攻撃を何度も躱されて、相当イラだってる。
体力補正(大)と体捌き補正(大)舐めんな!
身体がデカいぶん、予備動作がバレバレなんだよ。
あんだけの質量の身体を動かすには、相応の溜めが必要だからな。
加えてコッチはスキルの派生スキルとも言える予備動作なしの瞬脚で常人離れしたダッシュがかけられる。
もちろん筋肉は悲鳴あげっぱなしだし、三半規管もぐわんぐわんいってるけどなっ
タイミングさえ間違わなければ、体重と加速と装備重量の載った一撃をくれてやれる。
まあ、効いてないっぽいけど。
硬えなあ、コイツ。
何度目かの攻撃を凌ぎ、チマチマと打撃を与えて、ようやく斜面の上の高台に引っ張り上げれた。
これでコッチの足場の不利もチャラだ。
さーてさて、トールさんのターンだぜ。
細かいステップで大きく円を描くように跳ね、たてがみをブルブル震わせて低く短い威嚇音を吠えるハイリザードマン。
もうこれ、絶対にマンの要素ないで。完全に恐竜やん。
シビレを切らしたのか、こちらへ間合いを詰めるために脚と尻尾に一瞬大きな力を溜める。
半開きの大きく裂けた口端からは泡が混じった唾液が飛び散る。
その下の岩を、ごっそり【気化】で消し飛ばす。
踏みしめるべき地面を失った巨体は、どうすることも出来ずにバランスも失う。同時に動きも止まる。
すかさず【気化】!
その当たり判定の結果も見ずに瞬脚で一気に跳んでロングソードを一閃する。
その剣閃が抜けきる最後の最後で肉を断ち切る手応えが伝わる。
振り切った反動で急制動をかけて身体を捻って振り返ると、【気化】による靄状態から戻る途中の、首の無い巨大なトカゲが血飛沫をあげて倒れ込んでいくのが見えた。
よっシャッ!! みたかトカゲめっ!
と、。 ウーバイは!?
岩棚から斜面をのぞくと、二匹のリザードマンと対峙しているウーバイくん。
斜面の高さを上手く利用して一方的に打撃を与えているようだ。
さすがA級相当の実力者。
とはいえ、加勢加勢。
瞬脚2本で一気に斜面を駆け下りて、すり抜けざまに一匹の頭をかち割る。
同時にウーバイの鉄棍がもう一匹を貫いて、ようやく辺りは静けさを取り戻した。
あ、、あしぃ、ふともも、、いてえ。。
ウーバイくん、、【ヒール】よろ。
☆暴君蜥蜴の毒腺
☆等級 B−
☆LV ―――
☆たてがみや背びれに毒を供給する器官
☆暴君蜥蜴の尾骨
☆等級 B
☆LV ―――
☆尻尾の先端の一際硬い突起骨
☆暴君蜥蜴の魔石
☆等級 A−−
☆LV ―――
☆水の属性を宿す希少価値の高い魔石
「 初戦の戦果としては、破格ですな」
うん、トールさんも同意。
魔石はともかくとして、二つのレアドロップ。
てかやっぱりアイツ毒持ちだったんだな。
きっと毒系のスキルみたいなの持ってたんだろうけど、そんなの出す前に殺られちゃったんだな。。
妙な未練とか残さずに、迷わず成仏してほしい。
とにもかくにも、冒険者ギルドに情報がなかったハイリザードマンとの交戦情報。
現ランクCのトールさんと特例登録したてでランクDのウーバイくん。
この二人のパーティーのランクはCだ。
まあ、ランク詐称と言われたらそれまでだけどさ。
ともあれ記録上はランクCパーティーが推奨ランクBの魔物を討伐、ということになる。
「問題は、トール殿のスキル、でありますな。」
だよねえ。
なんせ単独で討伐しちゃってる訳だし。
まあそのあたりは口裏をあわせて、、
「ああ拙僧、戒律と誓約ゆえに偽証はできませぬぞ」
「まあほら、そこはさ。」
わかってますよ。ウソはあかんのよね。
ただ、真実を語らない、のはウソにはならんわけだからね。
「実際に俺が倒すとこ、見てないでしょ?」
あ、。 そんな詐欺師を見るような目で見ないでほしいなあ。
そもそもトールさんの秘密に関して口外しないと、誓約してるでしょ??
とはいえあのハイリザードマンを過小報告すると、次に出くわした冒険者に迷惑がかかる。
『ロングソード一発でしたわー』なんて口が裂けても言えない。
「 なーんか、すでに手傷負ってたよ〜?」
あ。。ますます目つきが厳しくなる。
厳つい坊さんの顔だからコワいってば。
チャコさんとかなら泣いちゃうぞ??
「 、、ふぅ、、まあ、そういう事にしておきましょう。 神よ我をお許したもう、。」
なんかブツブツ念仏唱え始めとる。
とりあえず、ドロップ品回収して。
あと【気化】させたブッシュも、戻せる範囲でもどしとかないとな。。




