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ウーバイくんと初狩り

☆ウーバイ・ジャスレ

☆種族 ヒューマン(男)30才

☆職業 司祭(熟練度A)

☆体力 A++

☆魔力 A

☆耐久 B+

☆敏捷 B

☆知性 A−

☆運勢 A−−

☆加護 地母神の導き

☆所持スキル 【オーバーヒール】



ウーバイ・ジャスレは、祭祀教の司祭である。


父母共に敬虔な祭祀教の信徒であり、その影響もあって貧しいながらも幼少の頃から彼は教会の教義に触れていた。

彼の読み書きの教科書は、祭祀教の経典であった。


この国の、特に王都から離れた地方へ行けば、こういった家庭は特に珍しいものではなかった。

物資も文化も恵まれ進んだ都市部と違って、地方にそれらの恩恵は少なく、さらには魔物や盗賊の類などの外敵の脅威に曝される環境だ。

自然、人々は信仰に頼る生活が常となる。


またそういった辺境において、教会の持つ物理的な力は時に民衆を護る役割も果たす。

土地の開拓には魔物の駆除は必須であるし、人の営みを繋ぐ街道の土木整備や、盗賊の摘発や討伐などは、ある程度の大きさの組織の力が必要となる。

本来ならばそれらは領主なり国軍なりの役目であるのだが、そういったものは細かい所までは目が届かないのもまた、常であった。


祭祀教会は、そういった意味でも辺境の民の暮らしに寄り添った、なくてはならないものでもあったのだ。



そんな環境で育ったウーバイ。

成長し修道士に志願し、徳を積み助祭となり、平民出の出世としては最上位である司祭まで早々に昇りあげたウーバイ。



そんな彼のこれまでの人生。

それに至る転機が訪れたのは、まだまだ少年とも呼べる12歳の、ある日のことであった。


その日は村の灌漑用水の手入れを村人総出で行っていたのだが、その中で彼の父親が櫓から落ちて意識を失うほどの大怪我を負う。


小さな村だ、救命用のポーションなどないし、ましてや【ヒール】を扱える修道士なども居はしなかった。

その場の誰もが、この不運を諦めて受け入れようとしていた。


だが、ウーバイは懸命に祈った。

ピクリとも動かず、おびただしい流血も止まらない父親の身体をしっかりと抱きしめながら、とにかく我武者羅になりふり構わず祈った。

歯を食いしばり、知る限りすべての経典の文句を並べ、祈りにありったけの力を込めた。

誰に祈ったのかも、今となっても全く思い出せないが、。


しかし確かに、奇跡は顕れた。







「 、、?  どうかしましたか?」


焚き火の揺れるあかりに照らされたウーバイ。

じっ、と小さな焔を見たままで、呼吸までとまってるんじゃないの?ってくらい動かない。


「あ、ああ、いえいえ、 なんでもありませんぞ」


手元の短い薪を焚べるその表情からは、さっきまでの虚ろさが消えていた。


「 いやしかし、トール殿のマジックバッグは素晴らしいですな!」


お? なんだ唐突だな。



王都からやってきた祭祀教の司祭とパーティーを組んで、今日で4日目。

初めての実戦は、不確定要素が比較的少ない【西の渓谷】にやってきたというわけ。


初日の今日は移動だけで、前にも利用したギルドの野営地に入った。

今夜は他にもふたパーティーほどがこの野営地を利用している。


司祭とのパーティーを組む上で、トールさんは幾つかの情報を解禁した。

だって色々伏せたままで魔物相手の戦闘なんてできんからなあ。。

まあ、もちろんウーバイのみ。

他の誰にも話すな、とは念押ししてるけどさ。

僧侶、特に助祭以上の位になると、信徒の懺悔などを受ける事も多くなる。

当然、彼らには他人の秘密を口外しないという誓約がある。 彼らの主上との誓約だ。

拷問されても口に出さないレベルの、強い誓約だ。


あ、ちなみに呼び名は『ウーバイ』『トール殿』で落ち着いた感じだな。

どの、は要らんのだが、彼的には譲れないらしい。

めんどくさいので、妥協した。


で、ウーバイへの情報公開。

まずは、スキル【気化】だな。

これは運命神の加護の付属スキルだろうということにしておいた。

さすがに祭祀教の司祭だけあって、肯定的な神様絡みの話にしてしまえば、ほとんどフリーパスで納得したようだ。

かなーり無理がある話だと思うんだけどな。

宗教って、コワ。。


あと、【ステータス確認】。

まずはステータスという概念から話さないと通じなかったけど、これもまあ祭祀教の経典にそれらしい記述があるらしく、理解が割と早かった。

まあ、話が脱線して小一時間ほど経典の解説を聞かされたけど。。


さすが、経典の虫。

彼の懐には常にお気に入りの経典が一冊は入っているらしい。


ちなみに浮かんでくる半透明のウィンドウは、やっぱりトールさん以外には見えないようやな。

こんなにハッキリ見えてるのになあ。


【無限収納】は、マジックバッグで誤魔化せるから伏せたまま。もちろん容量も有限ということにしてある。

あと、異世界転生関連も、当然教えてない。

秘密、というよりは知らせる必要がないと判断したからだ。


「 時が停まったまま収納できるなど、高位の商人や貴族くらいしか持っていないでありましょう」


声がでけえよ。。

まあ、さすがに容量無限はあり得ないにしても、時間停止のマジックバッグは、この世界にもままあるものらしい。

とはいえ中堅冒険者の装備としてはかなりの贅沢品であるみたいやけど。。


そんな訳でふたりともほぼ空荷で動けるのと、ウーバイの【オーバーヒール】のおかげで移動速度が速い速い。何せ疲れる端から回復していくんだから。


今日はリオレで昼飯食ってから出て、余裕でこの野営地まで着いちゃったよ。


スキル万歳。


ウーバイの【オーバーヒール】は、まんま【ヒール】の上位互換スキルだな。

魔力の消耗は多くなるが、体力値と耐久値の回復量がケタ違いに多い。

ステータス的な話にすると、【ヒール】で回復するのが体力で、【オーバーヒール】では体力と耐久が回復する、といった感じだな。

また、自分自身ならばいわゆるオートヒール状態に設定することもできるらしい。


さらに状態異常回復の【キュア】や解呪の【ディスペル】などの効果も付加される。

もちろんそれらの回復量の調整も可能だ。

ちなみにウーバイのスキルLVは、24な。すごいのかどうかはわからんけど。

今度、巨乳修道士のウィオラさんのスキルレベルを

覗いてみよーー、っと。ぐふふ。



ウーバイの魔力はAなので、小まめに掛けていれば

数時間単位の継戦能力が見込める。

そして戦闘向きのスキルこそないが、ウーバイの得物は彼の身の丈ほどの長さの鉄棍だ。

見た目は均一な太さだが、中央部がやや重めのバランスに整えてある鋼鉄製の六角鉄棍で、さらに片端の先端が鈍く尖らせてある。

持たせて貰ったけど、やべー重さだった。ゴブリンくらいの魔物だったら、直撃したら粉砕しそうな重さ。

こんなん振り回されたら近づけんわ。


これ別に特注とかじゃなくて、祭祀教の儀礼用の鉄棍らしい。

どこの教会でも今でも置いてあるものなんだと。

その昔はコレを装備した僧兵の部隊が実際に編成されていたとか。

こんな凶悪な武装を携えた筋肉モリモリで、殉教する気マンマンの坊主どもの軍隊。。。

まんま巨神兵やん。。。コワ。宗教コワい。



てな感じなので、トールさんのロングソードとウーバイの鉄棍。

この2人の相互連携攻撃はなかなかに難しそうだ。

どちらも大きく得物を振り回して、の必殺打をブチ込むスタイルだからなー。

そんなもん、近くや背後で振り回すとかお互い危なくてかなわん。


やっぱりトールさんが斬り込んでーーの、ウーバイがヘイトを稼ぐ立ち回りでサポートに、今のところは、なりそう。

回復要員でもあるから一歩二歩引いたところから全体を見ることができる利点もあるしな。




【無限収納】から酒を取り出してチビチビと呷る。

大酒飲みのウーバイも、さすがにギルドの野営地で深酒はしないようで、トールさんと同じく大人しく飲んでる。

この前に市場で見つけた濁り酒は、美味かったなあ。 あれ、もう売ってなかったんだけど、また手に入るかなあ。

トールさん、食生活にはあまり頓着しないんだけどさ、お酒は好きなんだよな。

あ、もちろん量より質重視な。

大人の嗜み、ってやつなのだよ。







明けて翌朝。

【西の渓谷】の住民、リザードマンは朝にめっぽう弱い。変温動物なんかな? まあ、動物じゃなくて魔物だけど。


そんな訳でトールさんとウーバイのふたり。

まだ身体が温まってないリザードマン狙いで、渓谷から一段上がった段丘を上流に向かっていた。


昇ってきた陽の柔らかい光が浅く差し込んでくる。

長く伸びる影と朝もやのせいで、視界はいまいち。


このあたりは基本、背の低いブッシュとまばらに生えてる灌木くらいしかないので見通しはいいんだけど、リザードマンは伏せてるとこの程度の障害物でも身を隠せる。


しばらく進んだところで、本日一匹めのリザードマンに遭遇。

日当たりのよい岩棚でじっとしている。

てか、この前に来た時に狩ったのより、随分、、いやかなり、、、大きいな。


「ハイリザードマン、ですな」



☆ハイリザードマン

☆脅威度 D++(非認知状態)

☆LV 11

☆リザードマンの上位個体 下位個体を統率する



単体の魔物相手に初めて【ステータス確認】使ったな。

なんせトール記憶にも実物と出会った機会がなかった相手だからな。かなりなレアエネミーだ。

慎重大切。 てか、魔物にもLVがあるのか。

これ、高いのかどうなのか。。


「 初見だな。 ウーバイは?」


「拙僧も初めてですな。 ですが、あのたてがみと巨体は、間違いなくハイリザードマンかと  王都近くのリザードマンエリアでは何度か確認されていますな。 」


「 うん、【ステータス確認】でもそう出てるねえ。。 」


「なんと! この距離でも? うーむ」


あ、そっち?

まあ確かにかなり離れた場所ではあるけどね。

しっかりと視認さえできれば見えちゃうのよ。

ゴブの群れを見たときより近いし。


「 で、下位個体を統率する  らしい。」


このハイリザードマン。

リオレ冒険者ギルドの記録には討伐記録がない。

故に、情報がない。

ウーバイくんが言ったように他の地域のエリアでは何度か確認されているエリアボスのような存在だな。  ただ、エリアごとに何パターンか特徴があるようだけど。

脅威度も暫定でBとなっていたはず。


脅威度BってのはB級パーティーで討伐可能っていう意味だ。俺らふたり? 無理無理。

この距離だと【気化】は届かんし、ヤツのスピードが未知数だ。

これ、トンズラこいて情報持ち帰ったほうがよくないかい?


「 こちらの分が悪いですな 」


ウーバイも同意見みたいだな。

よかった、戦闘狂でなくて。。


そろり、とその場を撤収しようと動いたその時。

耳の端にやたら甲高い人間の声では発声できない音波みたいなのが引っ掛かった。

同時にウーバイの背後で茂みが大きな音を立てて割れ、大きく開かれた乱杭歯が飛び掛かってくる。


ほとんど反射で【気化】を飛ばす!


咄嗟に振り返ったウーバイの目の前で、今にも咬み付こうとするそのままの形で薄茶色の靄に変わるリザードマン。

次の瞬間には薙ぎ払われたウーバイの鉄棍に両断されて肉の塊になって吹き飛ぶ。


やべえ、! 全く接近に気が付かなんだ!

さっきの音波みたいなのはコイツかっ!?


チラリと振り返って見た岩棚には、仁王立ちするふた周りほど巨大なリザードマン。

角質みたいなたてがみを逆立てて、こっち見てる!


「見つかったっ! 来るぞっ!!」


【無限収納】からロングソードを引き抜いて肩に構える。

その間にもヤツの岩棚の足元でいくつも茂みが揺れてブッシュが波打つ。

向こうが高台だ。 リザードマンの突進力で下りだから一瞬で詰められる!

手下は何匹いるんだ!?



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