スキルチェックは定期的に
はい。トールさんです。
肉弾棒術坊主と強制模擬戦させられて、挙句の果てに支部長室に呼び出しくらってます。
教会コンビ?
とっくに帰ったよっ。
何で、こーなるの?
「 呆れたな。 お前2年もスキルのチェックしてないんだな。。。」
支部長、いかにも仕事できなさそうなしょぼくれサラリーマンみたいな顔しといてさ。
意外とちゃんと支部長してんのね。。
チラチラこっちを睨んでくるのとか、前職の上司と同質の圧を感じるわあ。
スキルチェックに関してはトール氏がコミュ障というか、独り大好きというか。。
まあ、ちょっと捻くれてたんだよな。
とにかくトールさんは、悪くないっ
「 ウチの資料だと、、【両手剣】LV9か、。。 あの動きができて、んな訳ないよな? 20手前ってとこが妥当だな」
あはははは、
トール氏どんだけなんよ? 本来スキルのLVがどれくらいで上がるのか知らんけど、倍近く上げとるやないの、。
笑って誤魔化しとこ。
この世界には体力値などのステータスという概念がないので、所持スキルの熟練度である程度を推し測るところがある。
そういう意味ではC級ならLV10〜13あたりが平均値といえる。
あ、ちなみに冒険者のAとかCとか。
ランク〜が正式名称で、〜級は通称な。
荒っぽくてガサツな性格が多い冒険者達は、ランクとか気取ってんじゃねえよ、みたいな感じで〜級って自称するのさ。
てか、喉乾いたなあ。
もちろんお茶は出ないのね。
本部で飲ませてもらったの、美味かったなあ。
その間もタリスマン氏は支部長室の大きな机の席について、ペラペラと何枚もの資料をめくって忙しなく目を送る。
あれトールさんの資料かな?
4、5、、、6枚くらいあるぞ?
「 むぅ、実績を考えると確かにゼクスさんの言う通り、か。。」
トールさんほっといてなんか納得しとるけど、おれ座ってええんかな?
さっきの瞬歩連発で、太ももパンパンなんだけど。
てか、ゼクスの親父め。 方々に根回ししてやがんな。逃げ場なしか。
そうこうしていると、部屋の扉に小さなノック。
「 失礼します。 鑑定板お持ちしました。」
ライア嬢が手押しのワゴンに小さめの電子レンジを載せて入ってきた。
冒険者ギルドのは教会のより小さいな。
「あー、ライアすまんな。 トール、ちょっと見せてみろ」
机から身を乗り出して軽く目でライア嬢に指示を出した。
「確かに言われてみればトールさん、全然チェックしませんもんね」
鑑定板の横面をパカッと開きながらライア嬢が手を差し出して立ち位置に誘導する。
開いたフタに紙を差し込んでるから、こっちはプリント機能付きなんか?
「みんな、そんなもんだろ?」
「 それぞれ、ですかねー。 チャコちゃんなんて依頼から戻る度に見てますよ?」
「そりゃ、見すぎだろ 、」
などと軽口をたたく間にコチラは音も無く差し込まれた紙が出てくる。
え、? もうできたの?
はやいな。
ライア嬢は紙を見ないまま、支部長のデスクに裏返して置いた。
「 ふむ、そーだよな ん?加護?? まあいいか。。」
ひっくり返してチラッと見た支部長は、納得したのかそのまま紙に日付と署名をしてこちらに寄越す。
☆トール・エアリス
☆種族 ヒューマン(男)20才
☆職業 冒険者(ランクC)
☆加護 運命神の加護
☆所持スキル 【両手剣】
☆【両手剣】
☆等級 B
☆LV 19«new»
☆両手で剣を扱う時に常時発動
・・・と、ある。
なにげに2つほどあがっとるがな。
やっぱり体捌き補正とか瞬歩とかの詳しい情報は出てこないんだな。
ちなみに【ステータス確認】だとコレ。
☆【両手剣】
☆等級 B
☆LV 19«new»
☆両手で剣を扱う時に常時発動
重量軽減(小)・体力補正(大)・体捌き補正(大)・威圧効果(中)«new»・瞬脚«new»
あれ?、威圧効果と瞬歩が変わっとるな。
カッコ無しが(中)になって、瞬歩が瞬脚になってんね。
トール氏が2年で10上げて、トールさんは数日で2上がるのか。
成長率も高いのかそれとも、よくわからん【異世界知識】が仕事してるのか。。
瞬脚って何が変わったんかな?
「 リオレのクラスB冒険者のスキル平均LVが17とか18だ。しかも前衛職バリバリの【両手剣】。 お前、もうクラスBでも中堅レベルだぞ?」
瞬脚を【ステータス確認】しようとしたら、支部長がまたこっちを睨む。 こえー。
「まあ、諦めろ。 来月からはクラスBでコキ使ってやる。」
ええぇ。。。
これさ、ブラック企業のパワハラ上司や。
この世界、労組とか労基とか、、ないよね(泣)
煤で濁ったホヤから漏れる、少し薄暗いランプの灯りと、男たちのガヤガヤとうるさい声。
饐えた体臭と装備類の匂い。
独特なアルコールの香りと、油っこそうな料理の湯気。
西門街の酒場【愚者の掃き溜め】は今夜も多くの荒くれ者達で賑わっていた。
「 そんな他人行儀は抜きにして、ぜひ今後はウーバイと呼んでいただきたいっ 」
二人掛けの小さなテーブルの対面で、ニコニコと人の良さそうな笑みで大柄な修道士が杯をあおっている。 ぶはーーッ、とか聞こえてきそう。
修道士は飲酒OKなのかって?
まあ、厳密にいえばOUTだな。
とはいえ祭祀教はそこまで戒律が厳しくはない。
ただ厳しく自らを律せよ、くらいだ。
だから修道士の格好で酒場で飲んでても、暴れたり騒いだりしてなければ、まあ許されるレベルだ。
けどな。
「 拙僧、明日からの冒険者生活が楽しみです!
わはははっ」
こいつ、席についてまだそんなに経ってないのに、いま手にしてる杯で4杯め。。。
まあ、多少酔ってはいそうだが、ドワルブ族なみのハイペースだ。
いや、体格的に少し血が入ってんじゃないかな?
そんなに酩酊してる風には、見えん。
「 ッスっ! ウーバイさんお酒強いんスねっ」
そしてこの狭い二人掛けのテーブルに割り込むように入ってきているもう一人。
「 うはははっ、チャコット殿も小さなお体なのに大層な健啖家でいらっしゃるっ!」
テーブルの上に並んでた2人分のツマミを一瞬で平らげて、さらに追加の注文までしやがって。。
こいつ、確か酒は飲まんはずだよな? 酔ってもいないくせにコミュ力高めだなおい。
「 やーー、そんなチャコットとかもやめてくださいっスよーー! あたしもチャコって呼んでくださいっス!」
なんなん、コイツら。
パワハラ上司にちょっと絞られて、宿に戻ったら坊主が待ち伏せしてて、しようがないから一緒に行きつけの飲み屋で飲んでたら、ウザい後輩にたかられて、←イマココ。
てか、チャコさんや。
お前さん、パーティーの三人で飲みに来てたんじゃなかったのか?
そーいや痴女とオールブラックスの姿が見えんなったな。。
「 や、二人はお先に失礼したっス!」
ああ、そう。。 キミは帰らないでいいの?
「なーーんスかー、トールさんノリ悪っ!」
酔ってもないのに、何でこんなノリノリなのかトールさん不思議でかなわんよ。
この天性の陽キャめ。。
「いや、トール殿はお歳の割に落ち着いていらっしゃる。 拙僧と然程変わらないか、むしろ歳上のようにも感じますな」
やるな、坊主。
トールさんとトール氏のふたり合わせれば59歳だからな。 なかなか鋭いよキミ。
あと、ペース早いよ? それ6杯めな。
「あ、それっス! トールさん王都から戻ってから、ちょいオッサンになったっスッ!」
言い方ぇ。。
トールさん、キミとふたつしか違わない、見た目は若者なんだけど。。 オッサンは酷いな。
まあ中の人は紛れもなくオッサンだけどさ。
てか、キミも鋭いな。 陽キャの勘てやつか?
「なんてゆーか、、 前はもっとガツガツ、とゆーか、トゲトゲとぃ"ーかぇ、 くゎせばぃゆいま“ゃい」
あー、、料理が来たからって、喋ってるときに食べ物口に入れるのは、やめような? 後半さっぱりわからんよ。
「 おお、それはもしや神々の加護によるやも知れませんな!」
なんだ坊主。酒臭いから前のめりになんなよ。
まあでも確かにそのタイミングだけどさ。
「聞くところに依ると運命神様のご加護を賜ったとか! これは即ちトール殿の運命前途にかの神が係るということの証左であると、拙僧はそう考えますぞ?」
ウィオラさーーん。個人情報筒抜けなんですけど。
「いーなー、加護とかあたしも欲しいっス! ウーバイさん、くださいっス!」
「 わはははっ! チャコ殿、加護とは拙僧の考えでは、、、」
あかん、完全にカオスになってきた。
おれこのままフェードアウトできたりせんかな。
無理だろうなー、。 コイツら無駄に勘がいいからなあ。
てかこれからホントにこの坊さんとパーティー組むのかな、おれ。。
まあ、まだ具体的にどこそこに行くとかは決めてないからな。
明日は二日酔いで潰れた事にしといて、のんびりしちゃいたいなぁ。。
あ。ロングソードの改修も考えないとな。
ここ何回かの実戦で思ってたこともあるからな。
【鎚の響き】のデシニアさんに相談したい事があるんだよ。
トールさん、結構忙しいんだよなあ、。
これ絶対に前世より忙しく働いてる気がする。
はあ、。
ビール飲んでポテチ食ってダラダラと休日を過ごしたいなあ。




