ブレインマン
瀬能「あの、・・・・あなたが、ブレインマンですか?」
ブレインマン「ああ。お初にお目にかかる。僕がブレインマンだ。・・・本名は奥井。ブレインマンでも奥井でも、好きなように呼んでくれて構わない。」
瀬能「初対面の人に対して、不躾な事を聞いてしまい、申し訳ありませんでした。」
ブレインマン「いや、別に気にしていないから結構ですよ。・・・・あなたを驚かせる為に会いに来たようなもんだし。」
瀬能「ああ、改めまして。私、瀬能です。瀬能杏子。本物の瀬能杏子です。」
ブレインマン「僕はブレインマン。今日はあなたに会えて、嬉しいよ。・・・僕は、あまり外に出ない生活をしているもんだから。」
瀬能「あの、・・・・・どこか、って言っても、呼吸器だとは思いますが、お悪いんですか?」
ブレインマン「ひゃははははははははははは はははぁ ほんと、あなたは可笑しい人だ。僕の格好を見て、一番に聞くのがそこだなんて。 いや、ごめん。ごめん。ご機嫌を損ねたようなら、謝るよ。申し訳ない。」
瀬能「・・・・・それは、病気に対する自虐と受け取ってよろしいんですか?」
ブレインマン「ああ、すまない。申し訳ない。なかなか外界と接する事が少なくなると、自虐でしか、挨拶する方法がなくてね。・・・・瀬能さんの様に、はっきり言ってくれる人が少なくて。あなたは稀有な人だ。そう。僕は、難病の障がい者だ。・・・・治る見込みのない病気。不治の病さ。」
瀬能「指定難病以外にも、根治不能な原因不明の疾患は世界で溢れていますから、そんなに驚く話でもありませんよ。世界でたった一人しか発症していない、病気の人も、いらっしゃいますし。」
ブレインマン「そう。難病は、運が悪かったとしか言いようがない。さっき瀬能さんが言ったように、世界で事例が一人や二人の病気があったとしても、研究対象にもならないから、対処療法で、体をだましだまし生きるしか方法がないんだ。僕もその一人だけどね。・・・・・僕に言わせれば、指定難病になっていたとしても、治療法が確立していなかったら、そっちの方が悲惨だと思うね。事実、治らないのに指定がつく。それに何の意味があるんだろう?ってね。」
瀬能「・・・・指定になっていれば、保険の適応になったり優遇される事も大きいですけど、何より、研究機関でもっぱら研究が盛んな事が大きいでしょうね。今は寛解が難しくても、今後、治療方法が確立されることもあるでしょうから。」
ブレインマン「・・・・僕は、『脳を100%使ってしまう』特異的な体質を持った人間なんだ。その点で言えば、本来は病気ではない。」
瀬能「脳を100%使う、体質ですか。・・・・・ヘビィな体質ですね。」
ブレインマン「ひゃひゃははははは ひゃははははは はぁ 流石、瀬能さん。それだけの説明で理解してくれるなんて、瀬能さん。あなたが初めてだよ。僕のこの体質の事を、他人に説明しても、その非常識さを理解できない人間が多い。それって本当に病気なの?って、甘えじゃない?なんて言われる事もある。
・・・・・・・多くの人間は知らないんだ。脳が100%動いてしまう、この、体質の恐ろしさを。」
瀬能「人間の脳は、10%程度しか使われていない、いやいや、100%使われているから人間は機能しているんだ、とか、多々説はありますけど、お互い意見が合致しているのが、同時に動くのはせいぜい3%程度だと言う事です。100%使用説の人は、脳の全体の事をいい、そりゃ、脳で遊んでいる部分はありませんから100%使用していると思います。10%使用説の人は、同時に脳が活動する量の事を言います。だから、3%程度の神経活動を、随時、脳のどこかで行っている、という事です。全部が、全部、いっぺんに100%使用されるっていう事は、まぁあり得ない、っていう話ですね。」
ブレインマン「その、全部が全部、いっぺんに100%稼働しているのが、僕の脳さ。僕の神経は常にフル稼働。・・・・・常識では考えられないだろう?」
瀬能「もし。ブレインマン。あなたの言う通りなら、あなたは、死んでいると思います。
脳の、100%の脳神経を、100%稼働しているならば、糖と酸素の消費が著しく、・・・・・・あ、ああ。なるほど。それで。」
ブレインマン「気づいた?それに気づく、あたなは、僕が見込んだ人だけの事はある。そう。僕は、脳にエネルギー消費をほぼほぼ持っていかれてしまう。だから日常生活がままならない。このカニューレは、酸欠を防ぐ為であり、この点滴はグルコース。外部からグルコースを常時、供給しなければ、低血糖で、体が動かなくなってしまう。だからこうやって、グルコースの点滴を持っているのさ。
酸素消費も、ほとんどを脳に取られてしまうから、運動する事も出来ない。例えば、歩く事もその一つ。だから、筋力は衰える一方さ。・・・・・・そういう事だから、この厄介な体質のおかげで、身体障がい者扱いさ。うん、違うな。身体障がい者なのさ。」
瀬能「脳が100%はたらくって、どんな感覚なのでしょう? 一般の人間では、決して、想像できない感覚なのでしょうね。」
ブレインマン「僕にしてみたら、その異常な状態が、日常茶飯事だからね。・・・・僕の頭の中は、常に、ごちゃごちゃしていてね。ずっと霧の中にいるような感覚さ。・・・・僕の脳は、この頭の中の霧を晴らそうと、ずっとずっと動ている。晴れない霧を晴らしているんだから、ご苦労な脳だよ。」
瀬能「霧ですか。」
ブレインマン「霧っていうのは、ミクロの視点で見れば、水蒸気の集まり。水の細かい粒子の集まり。その粒子一つ一つが、僕の身の回りで起こる事象そのもの。無数の事象を自動的に、いわゆる反射だよ。自動で勝手に観測してしまうんだ。僕の意思に関係なくね。・・・・だから、脳が休まる暇がないのは、当然だろう?」
瀬能「・・・・私達では、拾う必要のない、脳が意図的に無視している事象を、あなたは、無駄に拾ってしまうという訳ですね。バレーボール選手だったら、天才レシーバーですね。」
ブレインマン「瀬能さん。あなたは冗談が本当に上手だ。僕が、憤るギリギリのラインの皮肉を言う。・・・・・素晴らしいと思うよ。そして、僕の身体的特徴を的確に捉えている。」
瀬能「冗談を評論する時点で、ブレインマン。あなたは、笑いのレベルが低いですよ。」
ブレインマン「そういうものなのか。いや、勉強になるよ。」
皇「町中の蝋燭が消えた? んなアホな」
火野「いや、だから、冗談じゃないんだって。 だから取材しているの。」
瀬能「・・・・この町から、蝋燭が消えた。っていうのすら、気づかないんですから、蝋燭業界も大分、斜陽なんですね。」
皇「普段、生活していて、蝋燭、使うこと、滅多にないからなぁ。無くなったのだって、気づかないっちゃぁ、気づかないわな。」
火野「まぁ。事の始まりは、おばちゃんが墓参りに行く所から始まるんだけどね。」
瀬能「おばちゃんは、見かけによらず行動範囲が広いですからね。・・・・お墓参りに行くんですね。おばちゃんは行かないもんだとばっかり思っていました。」
皇「それは偏見だろう。」
瀬能「おばちゃんは、煎餅、齧りながら、昼間からメロドラマ見ているもんだとばかり。」
火野「そういうおばちゃんもいるかも知れないけど、私等んとこに、メールくれたおばちゃんは、」
瀬能「メールでやり取りしているんですか?」
火野「・・・・おばちゃんは、基本、電話とFAX。おまけにメール。」
皇「FAXの方が敷居、高いな。」
火野「そのおばちゃんのメールの内容によると、お墓参りに行こうと、生花と線香を買ったんだそうよ。まぁ、それでお線香に直接、ライターじゃ火が付かないから、蝋燭を買おうとしたんだって。」
皇「ターボライターがあるだろ? それで済むじゃん?」
火野「ターボ? なにそれ?」
皇「ああ、お前。外でバーベキューとかしないタイプだもんな? 行ったって、男にやらせて、お前、食ってるだけだろ?いい女気取って。」
火野「・・・・・いい女を気取るとかは意味わかんないけど、・・・・・だって、男子が全部、準備してくれるじゃない? 男子って馬鹿みたいに火起こし好きじゃない?あれ、反対に、取っちゃダメなのよ?あれが男子の見せ場なんだから。」
瀬能「火力が強くて、風に負けないライターがあるんですよ。・・・・あと、ほら、お寿司屋さんで、炙りサーモンとか言って、炙ってあるお寿司。あれ、その類です。」
火野「へぇ。」
皇「お前、興味がない事には、まるで関心示さないな。」
火野「だって、別に、私、自分でサーモン、炙る事ないもん。バーベキューもキャンプも男子がやってくれるから、それで、構わないし。」
瀬能「おばちゃんもターボライターは知らないんですよ。ホームセンターとか業務用の工具を置いてあるお店に行かないと、基本、ありませんからね。」
皇「女は、もの知らねぇからなぁ」
火野「あんただって、女でしょ?」
皇「お前みたいな、いい女気取ってる世間知らずバカ女は、顔がいいだけの男にやり逃げされて、金、貢がされて、他の若い顔のいい女に横取りされて、ボロボロになって捨てられて死ねえぇぇぇええええ!」
火野「・・・・あんたは女に恨みでもあんの?」瀬能「・・・・瑠思亜は女に恨みでもあるんですか?」
火野「ターボなんとかはいいんだけど、」
瀬能「御影は顔がいいだけの男にやり逃げされるのは、確かだと思いますけど」
火野「あんたもいちいちうるさいのよ。・・・・それで、おばちゃんが蝋燭が売ってないから、別のスーパーに行ったんですって。そうしたらそこも売ってなくて。ほら、レジの横にだいたい、お線香と香典袋は売ってるじゃない?」
皇「おまけにライターも売ってるよ、そこに」
火野「蝋燭だけ売ってなかったって。」
瀬能「買う気がないから、目に入らないんでしょうね。・・・・下手したらおばちゃん、ライター、使えないかも知れないし。」
皇「ライター使えない奴、いるのか?」
瀬能「いますよ。・・・・・・きっと目の前に。」
皇「・・・・」
火野「ん?」
皇「お前、ライター、使った事あるか?」
火野「ないわよ。・・・・使う必要ないじゃない。」
皇「お前の男、タバコ、吸わないのか?」
瀬能「今、電子タバコ、主流ですしね。」
火野「別に、私の彼氏とかそういうのどうでもいいけど、私はタバコ、気にしないし、ホステスじゃないんだからこっちから火をつけてあげる事なんてないでしょ?勝手に吸うし。私の部屋じゃ絶対、吸わせないけど。・・・・・・ちょっと、ちょっと、なんで、なんで、ここで急にタバコ、吸いだすのよ?」
瀬能「急にニコチンが切れて・・・・・・・」
皇「売れない役者とかバンドの奴等なんて、どうせスパスパ吸ってんだろ?空気より煙の方が多いタコ部屋で、売れねぇ詩とか、書いてるんだろ?どうせ」
火野「昭和?昭和のイメージ? 今、そんな人、いないわよ。もう!臭いがつくから、消しなさいよ!」
皇・瀬能「・・・はいはい。ほら、本音が出た」
火野「うっさいなぁ。だぁかぁらぁ、おばちゃんは、蝋燭が売ってなかったって言うのよ。それも、二軒三軒じゃないのよ。・・・・気になって、次の日、また次の日ってスーパーをハシゴして蝋燭が売ってないのを確認したんだから。おばちゃんが。」
瀬能「おばちゃんの行動力。あなどれません。」
皇「おばちゃん、墓参り、どうしたしよ?蝋燭がないんじゃ、火ぃつけられないじゃん。」
火野「なんか、広告を燃やして火ぃつけたって。おばちゃんの興味は、墓参りじゃなくて、もう、すっかり蝋燭が無い事の方に移っちゃったわけ。」
瀬能「単純に、もう、スーパーで蝋燭が売れないから、取り扱うのをやめたんじゃないんですか?」
皇「でも、蝋燭なんて腐るもんじゃねぇから、売れなくても、置いとくだろ? ほら、イデオンの敵とか、ダグラムの敵とか、模型屋でいつまでもホコリ被ってるのと同じだろ?」
瀬能「ミニパイプもホコリ被ってますね。」
火野「いくら売れないからといっても、取り扱いはやめないでしょ? ま、それはこれから取材するけど。」
瀬能「ああいうものは、一定数の売り上げが必ずありますからね。まったく無くなったら困る人もいますし。」
皇「お前さぁ、取材取材いいながら、人んちで、油うってんじぇねぇよ。」
ブレインマン「そんな面白い話があるんだ?」
瀬能「ええ。町中の蝋燭が消えた、ですって。」
ブレインマン「蝋燭は明かりを灯す用途で使われる事は少なくなったけど、一時期、防災の為に、売れた時期があったね。それに近年は、キャンプが流行して蝋燭も注目を浴びた。どうしても仏具のイメージが強いから、それほど売れていないと思いがちだけど、バリエーションが豊富で、短時間で消えるものから、半日以上、火が消えない大きなものもある。それこそ、蝋燭も用途に合わせて販売されている。・・・・普段の生活をしていて、我々が恩恵を受ける事は少なくなって言うのは確かだけど、まったく無いと困るものだと思うよ。」
瀬能「・・・・よくそんなネットで流布しているような話、知ってますね。」
ブレインマン「ネットは飽きないよ。永遠に、本当か嘘か、判断できない話が湧きだしてくるからね。それをジャッジしているだけでも、僕の脳は、好奇心を満たせるのさ。」
瀬能「それって報酬系が賦活されているだけでは?」
ブレインマン「・・・・もし、僕の脳からドーパミンが溢れ出して止まらなくなったら、あまりの快感に死んでしまうかも知れないね。ひゃひゃははははは ひゃはははははは」
瀬能「・・・・・ブレインマン。あなた、試しましたね。その方法では死ねなかった。」
ブレインマン「・・・・・・君は面白い。本当に面白い。そうさ。僕は、わざと報酬系を賦活してみた。いわゆる中毒症状ってやつさ。でも、死ねなかった。」
瀬能「ホルモンが欲しい細胞量に対して、出るホルモンの量が足りなかった。だからまるで快感を得られなかった。・・・・・そんな所でしょう?」
ブレインマン「まったくその通り。あれは残念だった。せめて、他の動物のように、快楽に身を投じられ、依存というものを体験したかったけど、まるで駄目だったよ。僕が快楽を得られるのは、脳を全部使って、脳が焼ききれる、そんな時ぐらいだろうね。だから、瀬能さん。あなたが今、話してくれた蝋燭が消えた、っていう話は注目度が高い。」
瀬能「・・・・・謎を解いてみたら、どうですか? 暇なんでしょう?」
ブレインマン「暇だよ。暇すぎて死んでしまうくらいに。死ねたら楽になるのに。・・・・・まったく、これだけチューブを巻かれていたら死にたくても、死ぬことも出来やしない。」
瀬能「死ぬのにも体力がいりますからね。冗談じゃなくて、本当の話で。」
ブレインマン「救急病棟でよく聞く話だよ。」
皇「ほんとにどこの店、回っても、蝋燭、ないな。」
瀬能「ええ。和蝋燭だけかと思ったら、ランタン用の蝋燭までないとは。・・・・・敵も然るものですね。」
火野「これはもう、蠟燭屋の陰謀じゃない?」
瀬能「・・・・陰謀?」
火野「だって、蝋燭がなくなれば、欲しいって人がいるから蝋燭が売れる。供給量を減らして儲ける手法よ。」
皇「お前、前々から馬鹿だとは思ってたけど、本当に馬鹿だな。」
火野「アップルだって、ニンテンドーだって、売れる商品をあえて小出しにして、儲けてるじゃない。転売ヤー対策とかしちゃってさぁ。」
瀬能「欲しくて欲しくて堪らない物が手に入らなくて、高額で、転売されるているなら、分かりますけど、・・・・・・元々、無くなったことすら気づかない商品でそれをされても、痛くも痒くもないんですけど。」
皇「だいたい、代替品があるだろ? ラ」
瀬能・火野「だいたい、だいたいひん・・・・・だって」
皇「おいお前等、歯ぁ喰いしばれぇ!」
バコ~ン!
瀬能「痛い! はぁ? ビンタと思わせておいてタイキック! 痛いです、痛い!」
火野「・・・・・・・・ほんと、やめてぇ。痛い。痛い。お尻、痛ぁい。」
皇「今度、私の前で舐めた口きいたら、お前達の乳、絞り取ってやるからなぁ!」
瀬能「やめてんかぁ~! ウチのお乳はややこのもんやぁ~ ややこだけは、ややこだけは堪忍やぁ~!」
火野「痛いなぁ。・・・・・・なにがややこよ。あんたねぇ、吸わせる、男だっていないじゃない。」
皇「お前もだろ?」
瀬能「蝋燭の代わりになるものなんて幾らでもありますし。明かりが欲しければ懐中電灯もあるし、着火したいならライターもあるし。別段、蝋燭に拘る必要性を感じないんですよね。」
火野「私は、吸ってくれる彼氏の一人や二人、おりますぅ。・・・ムエタイ女と一緒にしないでもらえませんかぁ?」
瀬能「あ、瑠思亜のはシューティングですから。」
皇「だれが佐山聡だ。」
火野「だからぁそういう分からない事、言わないでくれる?」
皇「お前のケツにもう一発、ぶち込んでやる!」
火野「だから、やめてってばぁ!」
ブレインマン「へぇ。・・・じゃあ実際、お店を歩いて、本当に蝋燭が売っていないか、見て回ったんだね。」
瀬能「ええ。・・・まぁおばちゃんが嘘を言っているって事はないと思いますけど、本当にそうなのか、自分の目で見てみないと分からないじゃないですか。・・・・行ってあったら前提条件が崩れてしまいますから。」
ブレインマン「確かにそうだね。」
瀬能「面白い事に、町中のスーパー、ホームセンター、雑貨屋さん。思いつくところは回りましたが、全滅でした。そんな事ってあるんですねぇ。」
ブレインマン「ひゃはははははは まぁ。あるだろうねぇ。・・・・・確実に、意図的じゃないか。誰かが故意に買い占めない限り、そんな事にはならない。誰かが絡んでいるのは明白だよ。」
瀬能「それで、お店の人にどんな人が買ったのか、教えてくれって。」
ブレインマン「覚えていない、って返答しただろう?」
瀬能「そうです。特にスーパーだって量販店ですから、そんな蝋燭を買った人間を覚えているはずもありません。最近は知ってます?セルフレジ。」
ブレインマン「外に出ない僕でもそれは知っているよ。見た事も触った事もないけどね。・・・・おじいちゃんおばあちゃんが四苦八苦しているとか。」
瀬能「その情報も古いですけど、そういうもんです。だから、店員の目を通さず、買い物が出来てしまうんですよ。だったら、」
ブレインマン「防犯カメラ?」
瀬能「そうです。私達は警察でも何でもないから、カメラの記録映像を見る事は出来ません。」
ブレインマン「そうだろうね。言ってみただけだよ。・・・・瀬能さん、知ってる?いくら警察だって、防犯カメラの映像は任意の提出なんだ。拒まれたらそこでお終いなんだよ。重大な事件、事故じゃない限り、安易に警察に協力する人も、多くないんだよ。警察を嫌っている人間も多いからね。」
瀬能「テレビドラマで安易に渡していますけど、コピーしたりなんだりするのも、面倒ですからね。それに、何時間かしたら自動的に上書きされちゃうのが普通ですから、残っていない方が多いみたいですよ。」
ブレインマン「ああ、飽きない。飽きない。瀬能さんと話をしていると、飽きる事がない。・・・・あなたは、僕にとって、女神だ。」
瀬能「あははははははははは。 ブレインマン? 悪魔かも知れませんよ? 私はそんなに甘くない。」
ブレインマン「そうだね。天使の方が、実は、悪魔より冷酷だったりするからね。天使は人間を殺す事に、何の感情もなく、機械のように殺すと言うけど、悪魔は、それなりに人に寄り添うからね。どっちかと言えば、悪魔は人間に近い感情を持っているから、親和性が高いんだ。」
瀬能「じゃ悪魔かも知れませんね。・・・・私と落ちる所まで落ちてみますか?」
ブレインマン「瀬能さん。僕はもう、ずっとずっと地の底にいるよ。見上げても空は、一点の穴にしか見えない。・・・・底の底も、ある意味、楽園だよ。光の届かないこの世界はね。」
瀬能「ブレインマン。じゃあ私をどん底まで引きずり降ろして下さいよ。あなたにしか見えない闇の世界を是非、私に見せて下さい、あはははははははははははははは あははははははははははははは」
ブレインマン「あなたの事だから、もちろん、他の調べもしたんだろう?」
瀬能「え? あ、ああ。そうです。そうです。 ついぞ悦に入ってしまいました。」
ブレインマン「例えば、発注先。問屋とか。」
瀬能「もちろんです。・・・・今、スーパーは量販店ですから、昔と違って、個々が問屋から買い付ける方式ではないんですよ。本社の一括買い上げが基本です。そうでなければ安い値段で商品を提供できません。」
ブレインマン「聞いた話だと、スーパーはどこで買っても、同じものが置いてあるって。極端な話、同じスーパーなら北海道でも九州でも、並んでいるものが同じだとか。ある種、差別化は無くなったと考えていい。」
瀬能「それが経済性と利便性という事です。大量に一括で仕入れるから、安くなるし、どこでも同じ物が買える。当然ですよね。」
ブレインマン「蝋燭も、その対象だったと?」
瀬能「ええ。もちろんです。蝋燭なんて、・・・なんてって言ったら失礼ですが、製造している会社は限られていますからね。それに、元から数が出る商品でもないから、一度売れてしまうと、スーパーの物流倉庫から消えてしまうそうです。」
ブレインマン「へぇ。そうなんだ。」
瀬能「いくら、スーパーで在庫切れになったとしても、ある程度、数が集まらないと発注できないから、在庫切れと実際に商品が届くまでの時間差が生まれてしまうんだそうです。」
ブレインマン「・・・・それは面白い話だ。まるで松本清張じゃないか。空白の四分だね。」
瀬能「どうしても欲しいなら、他店を回るか、他店に融通してもらう、っていう事らしいんですけどね。・・・ただ、他店も同様に蝋燭が無いから、それも出来ない。蝋燭空白地帯です。」
ブレインマン「犯人は。・・・・・犯人と言っていいのか分からないけど、それを狙った可能性もある。・・・・益々、興味深い犯人だ。」
火野「ところでさ、蝋燭がないと困る人なんて、いるのかね?」
皇「・・・・・たじまようぞう?」
瀬能「・・・・・八つ墓村の?」
火野「田治見要蔵でしょ、それは。」
瀬能「でもあの人、蝋燭じゃなくて、懐中電灯を頭に巻いているんですよ。」
火野「あれ、映画だから懐中電灯でしょ?映像化したから。」
瀬能「原作だと違うんですか?」
火野「知らないわよ。読んだ事ないもの。」
皇「・・・・これだからサブカルクソ女は。」
火野「あんたこそ、読んだ事あるの?」
皇「ねぇよ!」
瀬能「・・・・蝋燭がない今の状況で、利益を被る人が、この状況を作り出した訳ですよね? 誰が得するんです?」
火野「さっきからその話が、堂々巡りじゃない。」
皇「いずれスーパーだって、蝋燭が戻って来るぞ。またそいつ、買い占めるのか?」
瀬能「確かに。それは言えますね。・・・・一生、このまま、蝋燭を買い続けて、買い占めるのか。それとも、この今、この瞬間、蝋燭がない事が大事なのか。・・・・謎は深まるばかりです。」
火野「とりあえあず、蝋燭がなくても、生活には困らないのは確かね。」
皇「変な話、お寺も、今は蝋燭じゃなくて、電球だしな。あの提灯みたいな、灯りのやつ。」
瀬能「LEDですよ。電球じゃ発電量が高いから。」
皇「なんでもかんでもLEDなんだな。」
火野「LEDメーカーが蝋燭を駆逐するために、やったのかな?」
瀬能「まぁ。・・・・LED化の波は消せませんけど、明かりに関してはそういう可能性もありますが、火を付ける。着火っていう意味では、電球メーカーは意味ないですよ。」
火野「電球メーカーとライターメーカーが結託した、とか?」
皇「どんだけ蝋燭業界を潰したいんだよ、お前は。」
火野「産業界の陰謀の可能性だって、捨てきれないじゃない。」
瀬能「謎は深まるばかりです。」
ブレインマン「この事件とも言えない、現象と言うのか、騒動は、江戸川コナンも万能鑑定士Qも、掟上今日子も、他にも、天久鷹央も、船越英一郎も、杉下右京も誰もこの謎を解けないだろうね。」
瀬能「まぁ。極めて陳腐ですからね。かの人達はギャラが高いですから。」
ブレインマン「・・・・・それじゃあ僕が、僕のギャラが安いみたいじゃないか。」
瀬能「あなたは、自分の暇つぶしが出来れば、それで良いのでしょう。暇が潰れる。私の暇も潰れる。お互い、ウィンウィンじゃないですか。」
ブレインマン「潰しているのは暇だけじゃないか。」
瀬能「はい。はい。はい。・・・・誰だか存じ上げませんが、あなたが、この騒動の首謀者だったんですね。」
???「・・・・誰だ? 誰なんだ、お前達は!」
瀬能「・・・・誰と言われても。」
皇「火野御影だ!」
火野「やめてよ! 人の名前、言うの!」
瀬能「あ、私も火野御影です!」
火野「やめてって、言ってるでしょ!どうして私の名前、言うの!」
皇「いや、だって、逆上されて、何かあったら、名前、憶えている奴が、なにか、されるだろ?」
火野「私、火野御影じゃないですからぁ。絶対、違いますから。」
???「な、なんなんだ、お前等は! なんで、なんで、こんな所にいるんだ!」
瀬能「どうしてって? 不法侵入に決まっているでしょう?あなた、頭、悪いんですか?」
???「不法侵入だとぉぉぉぉぉ! 警備はどうした、警備は?」
皇「病院に入るのに、怪しまれる方がおかしいだろ? 堂々と正面玄関から入ってきたに決まっているだろ? お前、馬鹿か?」
瀬能「明らかに不審者じゃない限り、セキュリティに止められる事もありませんけどね。そういうあなたこそ、どうして、ここに? そちら、患者さんですか?」
???「そんな事、どうだっていい! お前等、関係ないなら今すぐここから出ていけ! さもなくば、警備を呼ぶぞ!」
瀬能「どうぞ、お好きに。呼ばれて困るのは、あなたの方じゃないんですか?」
皇「まぁ私達は、警察呼ばれても、大して痛くも痒くもないしな。前科が一つ増えるだけで。」
火野「私、嫌よ! 犯罪者の仲間入りするなんてぇぇぇぇ!」
皇「・・・・火野御影、諦めろよ。」
火野「名前、フルネームで言うの、やめてよぉぉぉぉぉ」
瀬能「そうですよ、火野御影。」
火野「言っておきますけどねぇ、私、私、関係ありませんから! こいつらに、連れて来られただけですから! 変な誤解しないで下さいよぉぉ!」
???「だったら、今すぐ、ここから出て行けぇぇぇぇぇぇえええ!」
皇「うわぁ怖ぁい。・・・おじさん、怒ってる。」
瀬能「その人、こんなに騒がしくしてるのに、一向に起きる気配がありませんねぇ。おかしいですねぇ。・・・・麻酔か何か、よく知りませんが、眠らされているのでしょうか?」
皇「起こしてやるか。うぉぉぉおおおおおおおおおい!」
???「やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!」
火野「おじさんの方が、声、大きいじゃない!」
瀬能「・・・・起きませんねぇ。やっぱり、何か、体に良くない物を盛られているんでしょうねぇ。」
???「何を言っているんだ、お前達は」
皇「それよりさ、なんで、ここ、停電しているんだ? 病院って普通、バックアップあるはずだよな?」
瀬能「そりゃそうですよ。何があっても、最低限、手術が続行できるよう、外部電源の他に、バックアップで自家発電できるように、とりわけ大きい病院は、そのように作りますから。」
???「・・・・余計な事をベラベラと」
火野「じゃ、どうして、ここ。ここ、停電してんの?」
皇「誰かが故意に電源を落としたからに決まってるだろ?」
火野「誰って・・・・・・あなたですか? 誰だか知りませんけど」
???「うるさい、うるさい、うるさい! いいから部外者は出て行け! ここは私の病院だぞぉぉぉおおお!」
瀬能「私の病院っていうことは、あなた、病院関係者ですか。へぇ。どうも、ご紹介ありがとうございます。」
ブレインマン「今回の騒動を簡単に整理しよう。というより、極めて単純に考えた方がいい。これは単純な話なんだよ。」
瀬能「・・・・単純な話?」
ブレインマン「余計な事を取り除けば、町から蝋燭が無くなった。それだけの事さ。・・・・蝋燭が無くなって、得をする人間がいる。それが騒動の黒幕さ。」
瀬能「まぁ。最初から、それを追っている訳ですが。」
ブレインマン「逆に考えてみよう。蝋燭を使う時とは、どんな時だろう。明かりが必要な時?火をつける時?」
瀬能「でも、それって必ずしも蝋燭じゃなくても、成立するんですよ。」
ブレインマン「騒動の黒幕は、蝋燭に拘っている。そう、蝋燭じゃなきゃ困るんだよ。一般的に、明かりをつけるのに使うものは、電気だ。電球だ。まぁガス灯なんてものもあるが、それはまぁ必要な時に考えよう。そして、火をつける。マッチだったりライターだったり。この事から言える事は、蝋燭を使う場面は、限定されると言う事だ。そして、その場面は、アナログな環境。自然に近い環境だと言える。」
瀬能「そうですね。電気が使える所なら、そのまま電球が使えますし。でも、懐中電灯が使えない所って、どこですか?懐中電灯は、エベレストだってチョモランマだって、果ては深海だって使えますよ。まして、そんな高性能なライトが、蝋燭に勝てないなんて、・・・・・・・そんな環境、あるんですか?」
ブレインマン「ああ。そう、極めて単純だよ。電気が使えないんだ。もっと言えば、電池とかバッテリーの類の電源も使えない。電気製品とか金属の類が、駄目な所。」
瀬能「そんな所は無いって言ってるでしょ、むしろ蝋燭が駄目な所の方が多いじゃないですか。」
ブレインマン「・・・・・だから、その駄目な所の逆。・・・・瀬能さん、蝋燭ってどこで使うものだい?」
瀬能「キャンプとか停電時、電気設備が整っていない、主に屋外の環境。・・・・当然ですよね。」
ブレインマン「その反対。」
瀬能「電気設備が整っている所。電気設備が整っている所?・・・・・電気設備が整っているなら電気を使えばいいじゃないですか? 禅問答です。これは禅問答ですよ。」
ブレインマン「電気設備が整っているのに、電気が使えない。故に、蝋燭を使う。はて、そこは、どこなのか?」
瀬能「ううぅぅうううん。・・・・・・落雷で停電したゴルフ場ぐらいしか、思い当たりません。」
瀬能「暗いから、明かりをつけて差し上げましょう。」
皇「小鬼がおる、パズーによく似た小鬼じゃの奴だ。」
火野「ランタン?」
瀬能「炭鉱夫用のランタンです。・・・・・別に、蝋燭だけが超磁力に影響しないって事じゃないんですよ。これは真鍮製のホンモノです。」
???「・・・チッ」
瀬能「どうしたんですか? 停電しているのに、その人を、MRIで検査するつもりですか?」
皇「検査するにはおかしいな? 検査技師とか、看護師とか、そういう人、いないもんな?」
瀬能「なんだったら手伝ってあげましょうか? 医療従事者じゃありませんけど。あ、こっちのいかにも頭が悪そうな女は、医療従事者ですけどね。」
皇「・・・・頭、悪そう、言うな。」
???「・・・・・クソォ!」
ガン!
瀬能「往生際が悪いですね。・・・・・あ、御影、あなたは、そこのストレッチャーの人を保護しておいて下さい。いいですね?」
火野「えぇ? 私が? ええぇぇぇぇっぇえ?」
皇「おい、逃げたぞ! 追うぞ!」
瀬能「いやぁ面白くなってきましたね!」
皇「お前なぁ、ここ、病院だぞ? あっちのテリトリーだ。逃げられたら厄介だぞ?」
瀬能「こっちは地の利がないですもんね。」
皇「私はこっちから回る! お前はそっち・・・・・・おい、杏子!」
瀬能「はい、なんでしょう。」
皇「追うったって、顔が分からないんじゃ追いかけようがないじゃないか!」
瀬能「あはははははははははははは それは盲点でしたね。どうしましょう?」
皇「どうするんだよ」
瀬能「・・・・・これ。御影の化粧ポーチから拝借してきました。勝手に。・・・・・冬用のファンデーションです。これ、太陽を反射して顔を明るくみせてくれる奴なんですけど、」
皇「あいつ、若いのに、年寄りじみたファンデ使ってるな。」
瀬能「日の光を反射するのに、鉱物由来の成分が入っているんですね。それを、私、・・・・さっきのMRI検査室、暗いから、落としちゃって。・・・・床に落としちゃって。」
皇「悪い奴だな、お前は。」
瀬能「御影にはホント、悪い事、してしまいました。高いファンデーションなのに。あははははははははははははははは」
皇「じゃ、お前、紫外線のライト、持ってるならよこせ。」
瀬能「察しの良いことで。」
皇「・・・・・・・たまたま、さっきの奴が落としたファンデを踏んで行ったってわけだな。」
瀬能「たまたまですけどね。たまたま。」
ブレインマン「雷っていうのは良い線いってたよ。そう、超電圧、超磁力が発生する所。そんな所は限られているからね。しかも、この町に限定すれば尚の事さ。」
瀬能「それがMRI検査。磁石の王様ですね。」
ブレインマン「MRIを正規の手順で検査するなら、別に、蝋燭は必要ない。・・・・病院で、MRIやPETで検査する度に、蝋燭を使うなんて話、聞いた事がないからね。」
瀬能「正規の手順でないとするならば、・・・・・よからぬ事に使うって事ですか。」
ブレインマン「そもそも瀬能さん。大前提として、その首謀者は、町中の蝋燭を買い占め、他の人間が、アナログな火を起こさせないようにしているんだ。そりゃぁいかがわしい事をするのは当然じゃないかな。」
瀬能「検査室で、何かを行う、って事ですね。」
ブレインマン「そうだろうね。・・・・しかもだ。明かりを必要とするのに、蝋燭を使おうとする徹底ぶり。金属を完全に排除している。差し当たって、思いつくのは、金属が悪い影響を及ぼすって事さ。」
瀬能「よからぬ事。そして、金属が悪い影響。超磁力、超電圧の部屋。」
ブレインマン「・・・・ペースメーカーか、金属の誤飲で、内臓側から貫通させて殺すか、どっちかだろうねぇ。たぶん、ペースメーカーだとは思うけど。」
瀬能「なんですか、金属の誤飲って。」
ブレインマン「ああ。瀬能さん、ほら、ネオジム磁石とかあるだろう」
瀬能「ええ。知ってます。」
ブレインマン「あれ、赤ちゃんが誤飲してしまった事例が過去あるんだ。臓器の上皮組織が頑丈でない赤ちゃんが、磁石の力で、誤飲した磁石が内臓を突き破ってしまい、大怪我をしたっていう事例がある。それと一緒だよ。わざと、金属を誤飲させて。例えば、何かしらの薬とか偽って、飲ませる事が可能ならば、理論上、不可能じゃない。」
瀬能「胃腸に金属が入っている状態で、MRIを起動させれば、内臓を突き破って、殺す事も、不可能じゃない。って事ですか。」
ブレインマン「他にも、検査室に、刃物。あの時は、手術用のハサミやメスだったらしいけど、それを置き忘れていて、MRIにセットされて身動きが取れない患者に向かって、弾丸のようにメスやハサミが飛んで行ったなんて事もあったらしい。・・・・十分注意しないとね、検査を行う時には。」
皇「おい御影ぇ、コタツ記事、アップしたのか?」
火野「・・・ニュース記事よ、ニュース記事。」
皇「オラが村で起きた爆笑珍事件簿、カッコ笑いじゃないのか?」
火野「カッコ笑いってなによ、殺人事件だったんだからね。未遂だったけど。」
皇「・・・・・おばちゃん、テレビの取材に答えてたな。おばちゃん、有名人じゃん。殺人事件を未然に防いだ、お手柄主婦!って。」
火野「有線放送だけどね。」
瀬能「お手柄主婦っていうのが、田舎の有線テレビっぽくて良いですねぇ。」
皇「ところであの、病院で捕まえた男、あれ、誰だったんだ?」
火野「ああ。・・・・あそこの病院の先生だったらしいわよ。部長とか、役職の上の先生みたい。」
瀬能「なんでそんな偉い先生が、そんな事を。」
皇「悪い事と偉い事は関係ないからな。そういう奴は元から悪い奴なんだ。」
火野「・・・・多額の借金があったみたい。殺そうとしていた人。その人から、お金を借りてたみたい。」
瀬能「お金ですか。お金が人生を狂わすんですね。」
火野「億のお金を借りてたって。・・・・警察の人が教えてくれたわ。」
瀬能「でもまぁよく、状況証拠だけで逮捕できましたね。日本の警察もまんざらじゃないですね。」
皇「ああ、かなりあくどい取り調べしてるみたいだからな。自白強要ってやつ?」
火野「そっちはそっちでまずいじゃないない?」
皇「MRI検査室にいた事だけだからな。証拠として立証できたのは。・・・・被害者を検査室に連れてきた事も、病院の主電源を落としたのも、間接的な証拠でしかないから、言い逃れをする気になれば、出来んだ。」
火野「被害者から借金していたのも大きいし、何より、胃袋から、金属片が出てきたのも、証拠としては大きかったみたいね。まさか、内臓を破裂させて殺そうなんて、誰も思わないもの。荒唐無稽よ。」
皇「裁判になったら、警察も、それなりに批判を受けるとは思うけど、ま、それと同時に、電源の件、検査室に連れて行った件、もろもろ調べられるだろうし、調べられたら具合が悪いのは、犯人の方だろうし。・・・・・蝋燭を買い占めた、っていうのも調べられるだろうけどな。」
瀬能「とにもかくにもお手柄なのは、おばちゃんですよ。おばちゃんが、蝋燭が売っていない事に気づかなければ一連の件、気づかないまま終わっていたんですから。」
火野「でも、それ、おかしくない? 調べたの私でしょ? なんでおばちゃんばっかり注目されているの?おかしくない?」
瀬能「・・・・・犯人の先生が言っていませんでした? 犯行現場に火野御影がいたって。どうしてあんな所に、火野御影がいたんでしょうね?」
皇「あれだけ火野御影を連呼して宣伝してやったんだ、感謝しろよ?」
瀬能「事件をあらかじめ知っていた。売れるコタツ記事の為、犯人と共謀し、事件をでっち上げたイカサマライター。」
火野「・・・・・・・はいはい。確かに、警察でそう取り調べを受けましたよ? あんた達が、私を連れ回したんだから、少しは責任、取りなさいよねぇ!」
瀬能「そのおかげで、随分とヒット数が多い記事になっているみたいじゃないですか。私に感謝して欲しいですよ。」
ブレインマン「あなたには感謝しているよ。瀬能さん。・・・・良い暇つぶしが出来た。」
瀬能「それは何よりです。」
ブレインマン「退屈が僕を殺す。お願いだ、瀬能さん。僕を飽きさせないでくれ。」
瀬能「・・・・・ブレインマン。あなたの欲望は、決して叶えられる事はないでしょう。あなたの脳は、知らず知らずのうちに、ドーパミンで満たされ、薬物依存状態です。欲すれば与えよ。・・・・今のあなたは、求めてばかり。それでは人間として出来損ないです。
今回、あなたは、私達に、多くの物を与えてくれました。それならば、私達は、あなたの望みを叶えてあげましょう。」
ブレインマン「本当か? 本当にか!」
瀬能「ええ。この町は不可解で、馬鹿らしい事件で溢れています。 しゃべる犬事件、空飛ぶ七面鳥事件、チョコレートケーキ失踪事件。」
ブレインマン「ひゃははっはは ひゃひゃはっははははははっは ひゃひゃははははははははは」
瀬能「・・・私はあなたの天使ですから。」
※全編会話です。