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神の傭兵 ~ Twin ✕ Oblivion ~  作者: コーポ6℃
第四章:死闘オルドフェルム
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第2話:プリマテラピー

「さ、お姉さんに話してごらん!」



 全ての不安を払拭してくれるような笑顔に、強がる気も、誤魔化す気もなくなっていく。

 胸の奥に貼りついていた重たい影が、少しずつ溶けていくような感覚だった。



「昨日……たくさん遊んだよね」

「うん」

 


「すごく楽しかった。でも……」

「うん」



「怖いんだ……ぼくは戦わなくちゃいけないのに……戦う気力が削がれていくようで……」

「……うん」



「戦わなくちゃいけないのにッ……ぼくは、もっと遊びたいなんて考えてる……そんなこと許されるはずないのにッ」



 ミレイアの為に戦うと息巻いておきながら、ぼくは平穏に逃げようとしている。


 今のぼくを見て、プリ姉は何を思うだろうか。



 軽蔑するだろうか。

 幻滅するだろうか。


 嫌われて……しまうだろうか。

 




「──嫌いになったりしないよ。絶対に」

「え……」



 ぼくは思わず顔を上げた。真っ直ぐに見つめ返してくるラベンダー色の瞳に、胸の奥がきゅっと熱くなる。



「昨日の思い出とミレーちゃんを、引き換えにしてもいいとドレーくんは思ってる。それで悩んでるんだよね?」

「……うん」



 そうだ。だからこそ、ミレイアを蔑ろにする自分が情けなくて、プリ姉に薄情なやつと思われる事が怖くて……。



「くふふ。アタイは嬉しいんだよ、ドレーくん」

「うれしい……?」


「そうだよぉ。アタイと遊んだことで、それだけ幸せを感じてくれたのが嬉しいの! ……ミレーちゃんには少し悪いけどねッ」



 プリ姉はほっぺたをほんのり紅くして、少しバツが悪そうに笑っている。


 

「ドレーくんは、幸せに慣れてないんだね。だから罪悪感なんて抱いちゃう。でもねドレーくん、幸せになる権利は誰にでもある。それはちっとも悪いことじゃないんだよぉ」

「でも……ぼくだけが……」


「ねぇ、ドレーくん。ミレーちゃんは、いつも笑顔だったよぉ。決して楽な暮らしじゃなかった。それなのに、ミレーちゃんは笑ってた。なんでだと思う?」



 ミレイアが笑ってた理由──


 ミレイアがぼくに会いに来る時は必ず笑顔だった。

 兄妹の面会なのだからあまり気にした事はなかったけど、街での出来事を嬉しそうに語ってくれた。


 街を綺麗にするのはやりがいがあるとか、街の人がお菓子をくれたとか……そして、最近お姉ちゃんのような親友ができたとも。



 そうか。それがプリ姉だったんだ。

 ぼくはミレイアが無事に過ごせてる事に安心して、話の内容は疎かにしていた。今になって気付くなんて、つくづく自分は馬鹿だと思う。


 でも……決して作り笑顔じゃないミレイアの顔を見ることで、ぼくは安心して戦いに集中することができたんだ。

 

 

「ミレーちゃんは、ドレーくんからもらった生活を心の底から楽しんでた。そしてそれが、ドレーくんの為になるって分かってたんだよぉ」



 ……プリ姉の言う通りだ。

 ミレイアの笑顔を見るだけでぼくは、戦う事ができたんだ。



「自分は苦労してるのに、笑ってるミレーちゃんを見て疎ましく思った?」

「そ、そんなことはッ──」



 思うはずがない。

 ぼくの望みは、ミレイアが笑って暮らせる生活……それだけだった。そのためにぼくは戦い続けてきたんだ。



「ミレーちゃんも一緒だよ。ドレーくんが楽しい時も笑えなかったら、ミレーちゃんが安心できないでしょ?」



 返す言葉もない。

 いや、返す必要もなかった。


 まるでお母さんのように諭してくれるプリ姉の言葉に、ぼくはただゆっくりと頷いた。



「楽しい時は笑う! 幸せが明日への原動力になるッ、戦う力になるんだよぉ!」



 握りしめた拳を掲げ、覇気のある声と共に足を踏み出す。鼻息を荒くして天井を仰いでいる。



「だからさ──」



 掲げた拳をゆっくりと下ろしながら発せられた声は、どこまでも優しくて──



「二人でいっぱい笑って、笑顔でミレーちゃんを迎えに行こうね」





 ──ぼくに幸せと、戦う決意を与えてくれた。

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