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神の傭兵 ~ Twin ✕ Oblivion ~  作者: コーポ6℃
第三章:皇帝と奴隷
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第9話:腐敗の歴史【後編】

 クラウリー・べゲット──


 エルキオン公国の魔導具技師で、ロヴァニア帝国の現皇帝。

 ぼくが目指す頂に君臨する……ぼくの敵。



「プリ姉……」

「まーたエルキオンだってさ! ほんと傍迷惑な国だよね、ドレーくん!」


「う、うん。そうだね……」



 プリ姉の出身国なんだし、悪くは言いたくないんだけどなぁ。


 ガスゴールといいクラウリー皇帝といい、エルキオン出身の人に振り回されてるなぁ……ロヴァニア帝国。



「クラウリーは天才的な頭脳と自負心に溢れた男でした。このクラウリーの手によって、帝国のゴーレム技術は飛躍的に進歩したのです」


「ってことは、そのクラウリー皇帝がM・D(マテリアルドライブ)の解析を?」



「はい。ドレイク殿が回避戦で戦った携帯型ゴーレムも、クラウリーによって造られた代物です。利便性において、あのゴーレムは完成系と言えるかもしれません。そう、ゴーレム技術は進歩したのです。ですが……」



 ガリさんの表情に、静かな影が落ちた。ゴーレムの進化を喜べない理由があるのか、それとも──。



「クラウリーの頭脳を以てしても、M・Dの全性能を引き出すことは出来なかったのです。同じエルキオン出身という肩書きが、強烈な自負心がそれを許さなかったのでしょう。嫉妬に狂ったクラウリーは、更なる研究に没頭し始めました」


「ガスゴールにだけは負けたくなかったんだろうね。でも、いつまでたっても追いつけない。だからクラウリーは路線変更して、多くの実戦データを収集するようになったんだよぉ」



 実戦データ?

 もしかしてそれが──。



「そう、解放戦です。帝国軍入隊の為の通過儀礼。皇帝へと至る唯一の道……それをデータ収集の場としたのです」



 解放戦ではゴーレムと戦うことになる。

 つまり解放戦は、ゴーレムの性能を試す場だって事なのか。



「クラウリーは、法の(ふち)で手を加え始めたのです。このクラウリーの暴挙に、反対するものはいませんでした。なぜなら、クラウリーの提案は我らに利をもたらすものだったからです」


「今の体制の出来上がり、ってワケだね!」



 つまり、クラウリー皇帝によってゴーレムは大きく進化した。


 でも、クラウリー皇帝ですらM・Dの性能を全て引き出すことはできなくて、それに嫉妬したクラウリー皇帝は『ガスゴールを超える』という野望を達成するために、帝国を実験の場にした……ってことか。



 そして、その野望は帝国上層部に受け入れられた。言うことを聞けば、すんなりと帝国軍に入隊させてもらって地位を手にれることができるから。




 

 ……一つだけ、気になることがある。


 いくらクラウリー皇帝が優れていて、考えを受け入れられたからって、いきなり皇帝になることなんてできるのだろうか?



 もしかして──




 

「あの、クラウリー皇帝はどうやって皇帝になったんでしょうか?」



 少なくとも、先代は力で皇帝になったはずなんだ。クラウリー皇帝には、それを退けるだけの力があるのかもしれない。


 そんなぼくの考えを察したのか、ガリさんは小さく頷いて口を開いた。





「クラウリーはオルドフェルムを勝ち進み、解放戦に勝利して帝国軍に入隊しました。招かれた身分でありながら、正当な方法で皇帝への道へと進んだのです」



「それじゃあ誰も文句は言えないよね〜。じゃあそのまま皇帝を倒して玉座に就いたってこと?」



「はい。しかし、その戦いは記録に残ってはいません。クラウリーがゴーレムを用いたのか、はたまた別の力を使ったのか……それを知る者はいないのです」



 クラウリー皇帝の力は未知数ってことか。


 でも、先代皇帝は玉璽保持者(レガリアホルダー)だったはずだ。


 玉璽保持者を打ち破れるほどのゴーレムを所有しているのか、それとも──





「いずれにせよ、クラウリーは正当な方法でロヴァニア帝国の皇帝になりました。それを咎める事は誰にも出来ません。ですが、クラウリーにあるのはガスゴールに対する執着のみ。彼は、この国を滅びの道に追いやろうとしているのです」


「滅びの道?」



「クラウリーは、帝国の全てを使ってゴーレムを量産しています。目的はただ一つ、ガスゴールのいるライザールに攻め入るためです」


「えッ!?」



 そんなことしたら、また大国同士の戦争に発展してしまう。一体どれだけの人が犠牲になるのか、想像もできない。



「プリメッタ嬢。帝国がライザールへ攻め入ったとして、貴女の見立てで勝率はいかほどになりますか?」


「ゼロだよぉ。さっきも言ったけど、ライザールにルジーちゃんがいる限り勝ち目は無いね」



 迷うことなく言い切ったプリ姉は、そのままニヤリとした笑いを浮かべてぼくの方へ顔を向けた。



「まぁ、ドレーくんが戦うなら話は別だけどね」

「ぼ、ぼく!?」



「ほっほっほ。いやはや、ここまで意見が一致すると実に気持ちがいいものですな。わたくしも全く同じ見解です」



 ガリさんは立ち上がり、紳士的な所作で襟を正してからぼくへと向き直った。



「ライザールと戦っても勝ち目はありません。ですが、クラウリーにとって必要なのはデータのみ。勝敗に意味はなく、その如何に関わらず戦争を引き起こすでしょう」


「くっふっふ。いいねいいね、盛り上がってきたね!」



 プリ姉は目を輝かせながらぼくを見つめている。

 一体何を期待してるの!?

 





「ライザールへの対抗、あるいはクラウリーの狂気を未然に食い止める。いずれにせよ、それができるのはドレイク殿──貴方ただ一人なのですよ」

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