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ジャーナリスト心中録【中編】

 はーい! アタイはプリメッタ!

 絶賛寝起きでテンション低めなアンニュイ系美少女だよぉ!



 あの後、結局ミレーちゃんは帰って来なかった。あの男の子も心配だったしギリギリまで起きてたんだけど、空腹が限界で寝ちゃったみたい。


 昔から怪我をしたり空腹になると、やたらと眠くなるんだよねぇ。まったく、厄介な身体だよぉ!



 そんでもって、アタイを起こしたのはあの男の子だった。名前はドレイクだってさ。

 うん、これで親友だね! よろしくドレーくん!


 しかもしかも!なんとこの子、ミレーちゃんのお兄ちゃんだった!

 うんうん。髪と瞳の色、優しそうな雰囲気なんかもミレーちゃんそっくりだね! さすがは兄妹!

 


 でも、奴隷戦士やってるはずなのに何でこんなとこにいるわけ?

 それに……こんなに大人しそうな子が、よく闘技場で生き残ってこれたなぁ。





 ……って、ちょっと待って。


 この子、めちゃくちゃ強くない?



 アタイは人が持つ【魔力】を肌に感じることが出来る。この力でいくつもの危機を回避してきたし、強者を見抜いて取材してきたこともある。


 世界中で見てきた強者たちと比べても、ドレーくんの魔力は桁が違う。ここまでの魔力は、親友のルジーちゃん以外に感じたことがないよぉ。



 ふぅむ、能ある鷹は爪を隠すってやつかな?

 このおどおどした態度も、強さを隠すカモフラージュなのかもしれない。


 うーん、でもこの子……嘘をついてる感じはしないんだけどなぁ。


 いや、嘘じゃないけど何かは隠してるね。まぁ言いにくいこともあるだろうし、これから聞いていけばいいかな?





 ……って思ってたら、全部話してくれた。


 自分が死んだこと。十二柱の神タイロスと契約して生き返ったこと……ミレーちゃんが死んじゃったこと。


 そして、ミレーちゃんを生き返らすために皇帝を目指すということ。



 アタイのジャナ勘は正しかった。

 

 このロヴァニア帝国で、世界情勢を変えるような出来事が起きようとしている。

 その歴史の転換点に、アタイは誰よりも早く接触することができたんだ。


 でも……でも、それよりも──





 嬉しかった。


 こんなに重大なことを、アタイに包み隠さず話してくれて。

 人は、少なからず一つは隠し事をするものだ。でもドレーくんは、アタイに一つも隠し事をしていない。


 今まで、アタイに全てを打ち明けてくれた人がいただろうか? いや、いない(反語)。


 手に入れた少ない情報から推測し、真実に向けて更なる調査をするのがジャーナリストの醍醐味。いきなり全部を教えてくれるなんて、拍子抜けもいいとこだよぉ。



 でも、それでもアタイは……このドレーくんの告白が、たまらなく嬉しかった。





 うおぉ! テンション上がってきた!!

 これは今までにない特ダネになるよぉ!


 ドレーくんが全てを明かしてくれたなら、アタイも全てを明かさないと不公平だよね!


 プリメッタ・チャフ、17歳! エルキオン公国出身のジャーナリスト! 身長145㎝、体重41㎏、スリーサイズは上から80・51・78! 好きな食べ物はハチミツで、嫌いな食べ物はマズいもの! 座右の銘はetc、etc……。



 ☆


 

 うむうむ。とりあえず独占取材の誓約書は書かせたし、これで心置き無く同行できるね!


 とりあえず、昨日行けなかったモーガンがいる屋敷に行ってみようか。ドレーくんも会いたがってるみたいだしね!



 ──道中、アタイは世界中の他愛ない話をドレーくんに話してあげた。


 こんなのはただの雑談。でもドレーくんは、目を輝かせてアタイの話に耳を傾けてくれた。





 嬉しかった。


 まるで絵本を読んでもらう子供のように、ドレーくんはアタイの言葉を待っている。


 ……そうだ。アタイがジャーナリストになったのは、世界中の面白おかしい話をみんなに届けて、こんな風に笑ってもらいたいからだった。



 いつしか誰も手にできないネタを求めて世界中を飛び回るようになったけど、本当はこんな他愛ない話をみんなにしてあげたかったんだ。





 それにしても、本当に楽しそうに聞いてくれるなぁ。奴隷生活が長かったから、こういった類の話を聞いてこなかったせいかな?


 まぁこれから24時間密着取材だし、世界中の面白い話を聞かせてあげるよぉ!



 ☆




 せっかく楽しく話してたのに、周りが慌ただしくなってきた。


 イチャモンをつけてきた衛兵さんが言うには、ドレーくんが生きてると自分たちの責任になっちゃうんだってさ。



 そんなの知ったこっちゃないんだよぉ!

 

 こいつらに捕まったら、罪をでっちあげられて酷い目に遭うのは目に見えてる。ここは逃げるが勝ちだね!


 街の地形は完全に憶えてる。くっふっふ、捕まえられるもんなら捕まえてみなよぉ!



 ……と、意気揚々と逃げ出したんだけど、アタイらの目の前にはあるはずのない石壁が立ち塞がっている。


 あぁ、これが封鎖機構ってやつか。瞬時に石壁を生成するなんて、ロヴァニアのゴーレム技術も侮れないね。


 まぁこんな壁、アタイらの障害にはならないけどね。




 とう!



 くっふっふ、我ながら完璧な着地! ジャーナリストの身体能力を舐めてもらっちゃ困るんだよぉ。


 さぁドレーくん、君もカモン!



 ……ってアレ? なんかあたふたしてる。


 魔力による身体強化。魔力とは魂から生み出されるエネルギーで、肉体と掛け合わせる事で通常の筋力よりも大きな力を生むことができる。

 アタイが飛べるんだから、ドレーくんなら余裕のはずだし……え、無理? じゃあ三角飛びでカモン!


 あ、顔ぶつけた。



 え、本当に無理なの!?

 アタイの勘違い? いや、そんなことはないと思う。ドレーくんからはスゴい魔力を感じる。


 もしかして、使い方が分からないとか?



 あ、衛兵が来た!

 ぐぬぬ、アタイも降りるべきかッ。


 でも、戦いになったらアタイは邪魔になっちゃう。ドレーくんならあんな衛兵、ちょちょいのちょいだよね。



 というワケで……頑張ってドレーくん!

 後で合流しようね!!

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