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神の傭兵 ~ Twin ✕ Oblivion ~  作者: コーポ6℃
第二章:目覚め
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第5話:逃亡

「こっちこっちぃ!!」

「……ゼェ……ッ……ゼェ……!!」



 生きた奴隷が外にいることが罪。

 それを理解していなかったぼくのせいで、プリ姉を巻き込んだ逃亡劇が始まった。


 街の構造を把握しているのか、プリ姉は迷うことなく道を選んで駆け抜けていく。

 ぼくはそれを必死に追いかけているのだけれど、それにしても──



「はーい! 次はこっちぃ!!」

「……ひゅ……ひゅッ……!!」



 速い! 速すぎるぅ!!


 あの小柄な身体で、どうやったらこんな速度がッ!?

 これじゃまるでゴキ──



「誰がゴキブリじゃい!!」

「ひゅ!? ごッ……ごめ……!」



 地下牢にいたぼくにとって、例えられるものがゴキブリかネズミしかなかったんだ!

 決して悪気があったわけでは……。



「ならせめてネズミでしょーよ! こんなに可愛いレディをゴキブリに例えるなんて、失礼しちゃうよぉ!!」


(な、なんで考えてることが筒抜けなんだ!?)



 ジャーナリストの読心術恐るべし。

 更に速度を上げるプリ姉に、すれ違う人たちも目を白黒させている。



「はーい! ゴキ()()通りまーす!!」



 結局自分で言っちゃうんだ!?

 こんな状況でも底抜けに明るいプリ姉に、つい笑いが込み上げてしまう。……今は少しでも酸素が惜しいっていうのに。



「およ!?」



 角を猛スピードで曲がったプリ姉が、素っ頓狂な声を上げながら急ブレーキをかけた。勢いが止まらず数メートルほど滑った先には、進行を阻む石の壁が聳え立っていた。



「あれぇ? こんなところに壁なんてなかったはずだよぉ」


「も……もしか……して……」



 モーガンから聞いたことがある。

 この都市には、防衛や奴隷逃亡を阻止するための封鎖機構があるって。

 魔導具ゴーレムの技術を応用して、瞬時に鉱物を生成する技術……この石壁は、その封鎖機構の一部なのかもしれない。



「プリ姉……あちこちに……同じ石壁が、出来てるかもッ……」


「あ〜、封鎖機構ってやつね。とりあえず戻ろうか」



 諦めて道を戻ろうとしたその時、すぐ近くにまで来ている二つの殺意を感じ取った。



「ぷ、プリ姉ッ……すぐそこにッ……!」


「あれだけ速く走ったのに、なんで居場所がバレたんだろう?」



 ……言いたくはないけど、目立ちすぎたんじゃないだろうか?

 道行く人々が、みんな振り返ってたし。



「まぁしょうがないか〜。それじゃあ──」



 プリ姉が石壁に向き直り、屈伸体操を始めている。

 

 いったい、何をしようというのです?



 両腕を掲げ、背筋を伸ばしきる。そして、プリ姉がその小さな身体を深く屈めた……その時だった。



「とうッ!!」



 まるで反発するバネのように、プリ姉の身体が宙へと飛び上がる。その勢いは衰えることなく伸びていき、最終的にプリ姉は石壁の上へと着地した。





「……は?」



 見間違いだろうか……。

 この石壁は、二階建ての家を超える高さを誇っている。ゆうに10mはあるだろう。


 それを一足飛びで超えるなんて、いくらなんでもできるはずが──



「なにしてんの、ドレーくーん! 早く〜!!」



 石壁の頂上から、プリ姉が手招きしている。


 見間違いじゃ……ない……!?



「むッ、無理だよプリ姉!! そこまで何メートルあると思ってるの!?」


「じゃあ三角跳び! 三角跳びでカモン!!」



 プリ姉が家壁を交互に指差し、三角跳びで登ってくるように促してくる。


 言われるがままに壁を蹴って挑戦してみるけど、対面の壁には届かず、無様に頭を打ちつけてしまった。



「ありゃりゃ。おっかしーなー。君ならこれくらいの壁越えられそうなのに」



 それはあまりにもぼくを買い被りすぎてるよ!

 ジャーナリストの身体能力ってどうなってるんだ!?



「あ、やばい!!」

「えッ?」



 プリ姉の慌てた声に振り返ると、そこには殺気立った二人の衛兵が槍を構えていた。



「ぷ……プリ姉……」

「……」



 万事休す。

 ぼくは、縋る思いでプリ姉へと視線を向けた。


 プリ姉は顎に手を添えて、ぼくを救出する方法を考えている。

 そして──





「──頑張って!!」



 爽やかな笑顔で敬礼をしたプリ姉は、石壁の向こう側へと消えてしまった。

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