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神の傭兵 ~ Twin ✕ Oblivion ~  作者: コーポ6℃
第二章:目覚め
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第2話:騒がしいシスター

 突如できた親友──プリ姉さんと握手を終えると、プリ姉さんは何故か不服そうな表情を浮かべていた。


 

()()はいらないよぉ。敬語もね。悲しくなっちゃうじゃんかぁ〜」


「え!? ご、ごめんなさい……慣れなくて……」



「はい! じゃあもう一回!!」



 そう言って、プリ姉さんが再び手を差し出してくる。

 これは……言う通りにしないと永遠に繰り返されそうだ。



「よろしく……プリ姉」


「はーい! よろしくね、ドレーくん!!」



 満面の笑みで手をブンブンと振ってくる。どうやら納得してもらえたみたいだ。


 それにしても……()()()()()かぁ。奴隷くんみたいなんだよね。

 まぁ元奴隷なんですけど。



 テンション高く腕を動かすものだから、揺れで女神像が祭壇から落ちてしまった。

 でも、プリ姉には気にする素振りすらない。


 それって御神体なんですよね?



「でさぁ、なにか他に憶えてることはないのぉ?」


「え……そうだなぁ」



 親密になったせいか、騙してることに罪悪感が湧いてくる。

 いっそ全部話してしまおうか?


 この人なら大丈夫。会ったばかりなのに、何故かそう思えるんだ。

 でもまずは──



「人を探したいんだ」


「名前は〜?」



「……ミレイア」


「あ〜、ミレーちゃん?」



「ッ……知ってるの!?」


「知ってるもなにも、アタイと二人でここにお勤めしてるんだもん。でもさぁ、昨日から姿が見えないんだよぉ。ここによく来るモーガンってチャラ男のところに行ってるのかなぁ」



 ミレイアは、ここの修道院で暮らしてたのか。

 


 ぼくが奴隷になることで、ミレイアが娼館に売られることはなくなった。

 そして、この異国の女神を崇める教団──セルミア教団に保護されることになったんだ。



 タイロス神はミレイアが死んだと言った。信じたくはなかった。

 でも……あの言葉はきっと、嘘じゃないんだと思う。



「そういえばきみ、ミレーちゃんに似てるね。髪の色もだし、瞳の色とかそっくり」


「ミレイアは、妹なんだ」



「ありゃりゃ、お兄ちゃんだったの!? そういえば、お兄ちゃんの名前がドレイクって言ってたわ〜。あれ……でも、ミレーちゃんのお兄ちゃんって、確か奴隷戦士やってるんじゃなかったっけ?」



 一緒に暮らしてたんだもの。ぼくのことを知っていてもおかしくはない。

 やっぱり、プリ姉には全部話しておこう。



「プリ姉、実は────」



 ☆



 ──ぼくは、タイロス神との間に起きたことを全てプリ姉に話した。

 ぼくの話を聞き終えたプリ姉は、言葉を発することなく俯いている。


 ミレイアが死んだことも、ぼくは隠すことなく伝えた。

 プリ姉もきっと、ショックを受けてるんだと思う……。




「……ふふ」

「……ん?」



「くふふふふ」



 あれ、気のせいかな。なんか笑ってるように見えるんだけど。



「くふふふふ……はぁーはっはっはぁ!! 特ダネきたぁ!!」


「特ダネ!?」



 高らかに笑いながら祭壇の上で立ち上がり、胸元から手帳とペンを取り出したプリ姉は、勢いよくジャンプし華麗に女神像の上へと着地した。



「あぁ! 女神像が!!」


「気にするなぁ! この儚くも美しい修道女は、世を忍ぶ仮の姿……その正体は、世界を股にかける正義の編纂者──」



 目元を隠す髪をかきあげ、砕けた女神像の上でポーズを取る自称・正義の人。

 その迫力に、ぼくは開いた口が塞がらなかった。



「それがこのアタイ! エルキオン公国のジャーナリスト! プリメッタ・チャフ様だぁ!!」



 エルキオン公国という国は、ぼくも知っている。

 このロヴァニア帝国と同じく、十二柱の神が守護する大国の一つだ。


 変人・奇人の天才が多い国だと聞いている。あと、人との距離感がおかしいとも。


 

 鼻を高くするプリ姉を見て……ぼくは妙に納得してしまった。





「いやぁ、苦労してロヴァニアに来た甲斐があったよぉ。この国って、他国の人間を中々受け入れないからさぁ。唯一セルミア教団の信者だけは出入りできるから、信者のフリして入国したってわけ」


「な、なんでそんな危険なことを……?」



「アタイはジャーナリストだよぉ? 危険だろうと、特ダネの匂いがすれば取材に行くんだよ! それがまさか、特ダネの方から飛び込んでくるなんてね……これも、女神様のお導きってやつかな」


 

 プリ姉が運命的な出会いに感謝して、女神様に祈りを捧げている。

 その女神様は、今あなたが足蹴にしているのですが……。



「アタイの直感は正しかった! とにかく! アタイは君の行く末を記録する。24時間365日密着取材するから……よろしくね!!」



 ぼくの直感も正しかった。

 

 プリ姉が、ぼくの戦いの行く末を見届けてくれる──そう感じた直感は。


 そう、正しかったんだ。

 ただし、こんな形になるなんて予想もしてなかったけど。

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