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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面
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下級神官

ペプシ視点です。

「ペプシさんかぁ、姉妹にコカさんとかいないよね?隠れて何度か飲んだけど、美味しかったなぁ。」


 しばらく前、月に一度の無料診療日に[聖女]様から声をかけていただきました。名をきかれ、ペプシと答えた時の[聖女]様の反応が上記の御言葉。


 [聖女]様の知り合いに似た名前の方がいらしたのでしょうか?

それに[聖女]様は、お酒は召し上がらないから、隠れて飲むの意味も分かりません。


 もしかすると、なにかの宗教問答だったのでしょうか?今でもたまに考えてしまいます。


☆☆☆


 その当時、私は神官見習いとして、修行と雑用に追われていました。啓示を受けていない見習いは髪型も制限され、身を粉にして働く事が求められます。


 貴族の家柄の見習いでも、シンプルに髪を結わねばならないですし、平民の見習いは[おかっぱ頭]にしなくてはなりません。もちろん、私は[おかっぱ頭]でしたが、大きな神殿に住み込みで修行出来るのは恵まれた事です。


[働かざる者食うべからず]


 貧しい農村に産まれた者は嫌でも叩き込まれる教えで、それは私の身にも染みついていました。

屋根がある所で寝られ、毎日食事が取れる生活に何の不満があるでしょうか?


 ただ食事については、忙しさに食べ損なう事も度々あり、特に無料診療日は外来信者が多く、目の回る忙しさになるので、口の悪い見習い仲間には「無料診療日は強制断食日」と影口を叩く者もいたほどです。


 それでも[聖女]様がお見えになる無料診療日から数日は寄付食材が集まり、食事が豪華だったりするので、見習いは皆、聖女様には感謝していました。


 それに[聖女]様と話したり触れたりすると、大地母神より啓示を賜ると噂されていました。

見習い達は隙あらば近づこうとしていましたし、実際無料診療日を聖女様の近くで過ごした者が、翌日啓示を受けた例は多かったのです。


 ですが私には無縁なはずでした。なんだかんだで、[聖女]様の近くにはべるのは基本貴族のお嬢様達が優先されます。私は[聖女]様には近づく事さえ叶わぬはずでしたが、[聖女]様が休憩中に近くに座り話かけてこられたのです。



「ペプシさんは世界を旅したいって聞いたけど、[歩き巫女]志望?」


「は、はい、[聖女]様。け、啓示を受けて、まずは下級神官にならないといけませんが。」


 なんで[聖女]様が私の夢をご存知なのかと、思ったのですが病を見抜く眼力の[聖女]様なのだから、それぐらいは朝飯前なのでしょう。[聖女]様の凄い所は常人離れの神力よりも、相手に触れて中空に語りかけると、病が分かる事だと思っていました。


「[歩き巫女]資格は神官からだよね?下級神官から神官になるのは貴族じゃないと時間かかるからなぁ」


「は、はい。なので、あ、ある程度訓練をしたら、冒険者になろうと思っています。」


 啓示を受けた平民は下級神官に、貴族は神官に任じられます。下級神官から神官になるには実績を積むしかありません。


 冒険者になり神殿からの依頼をこなすか、地道に神殿で働くか。地道に働くのは確実ですが早くても3年、遅いと10年はかかります。


「せ、世界を旅したいのと、ゆ、行方不明の兄を探したいのです。兄は魔術師ギルドから借りた奨学金を返す為に冒険者になりました。」


「うーん、魔術師ギルドは、ただの借金を奨学金と言い換えてるだけだから、悪質だよね。金貨10枚しかも年利10%だっけ?」


 そう。そして魔術師ギルドは返済がある程度滞ると、正魔術師資格を停止し債務を売り払います。大抵は軍に買われるので、戦場魔術師と呼ばれる者になるのです。どの国でも戦場魔術師の死亡率は比較的高いといわれています。


「慣れないうちは[森の若木亭]かな?[魅惑の伯爵夫人]は食事が美味しいけど、高いから。」


その時は啓示を受けていない私に冒険者の店の心配は早いのでは?と思いましたが、その晩に啓示を受けて翌日には下級神官に任じられました。

[聖女]様と触れ合うと啓示受ける噂が本当になったのです。


☆☆☆


 啓示を受けてから半年。私は[森の若木亭]の扉を潜りました。半年間、下級神官としての実務と戦闘訓練、旅の心得などを神殿で学んだからです。


 下級神官として治療で得た銀貨で護身用の武器も買いました。幼い頃に慣れ親しんだ脱穀棒に似た両手用のフレイルと言う武器。石突きもあり杖としても使えます。神官が戦うのは勧められませんが、ゴブリン程度なら戦う事が出来そうです。


「神殿からの紹介状は見たよ。治癒使える神官なら、引く手数多だけど女性が多い新人パーティを紹介するから、待ってな」


サービスしてもらった薄いエールを飲み待っていると体格の良い竜人の女性と見た目普通の短剣を持った女性を店主が紹介してくれました。


「あーしは17って呼ばれてる。」


「信濃、双月流刀術を修めている。」


2人の挨拶に「か、下級神官のペプシです。」 私はそう挨拶をかえしました。

聖女は[魔導書と契約し旅にでる]の鈴木冷夏の事です。

よろしけば御一読を。(宣伝)


ただの借金を奨学金と言い換える。

これはこの世界だけではありません。

借金をローンと言い換えると、ソフトになってしまうのと同じ魔術ですね。

借金して車を買う=自動車ローンを組む

言葉には魔術があります(苦笑)


私の黒歴史がまた1ページ。

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