表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/42

処遇

カエデ視点です。

 私が号泣を終えると、奥の部屋からエルフと大地母神の下級神官が出てきた。

ドワーフが私が投降した旨を告げると、エルフが言い放つ。


「自害する気があるなら、苦しまないで済む薬をお渡ししますよ」


「じ、自害を勧めずに、と、投降を認めるべきでは?」


「え〜、あーしは契約魔術の[奴隷契約]をかけて、こき使いたいんだけど……」


 下級神官と女博徒がエルフの言に反対を唱え、ドワーフは鼻を鳴らす。下女しなのは沈黙を保ったままだ。

投降の難しさは認められずに殺されたり、奴隷として売り払われたりする可能性が低くないところだろう。


 投降した兵などを奴隷として売り払う市場は大きな街なら必ずある。この近くなら間違いなくハルピア。娼館、鉱山、戦闘。竜人で女なら売り先には困らない。

だが交渉次第では自由になる方法もある。自身の身代金を払う事が出来れば、大抵は赦されるのだ。


「魔刀[烈風]をロイターの冒険者の店に持ち帰れば、[正剣聖流]から報奨金が出ます。それに雇った冒険者への後払い金が冒険者の店に委託してあるのを私なら引き出せます。」


 名のある魔刀、魔剣は闇市で売るより冒険者の店を通じて返却した方が後腐れない。所有権を主張する[正剣聖流]と揉めるリスクを考えれば冒険者の店ギルドを盾にした方が確実に現金化出来る。


 それにロイターの冒険者の店には後金銀貨二十枚✕三十二人。計九百六十枚の銀貨が委託してある。

雇った冒険者は全滅し、依頼人側の生き残りは私だけ。本来は[正剣聖流]に返すべきかねだが、退職金代わりに貰っても咎める者は誰もいない。


「刀の報奨金を手付けにして、銀500枚を後金で手を打とう。信じてるのは、やはり竜か?」


「いえ、至高神の声を聞いています。条件が、よろしければ神に誠実を誓いますが……。」


ドワーフとの交渉の結果、身代金の支払いで降伏契約を結ぶ事が出来た。


☆☆☆


「忍び、二階には脅威は無く、窓から外が見えるんだな?」


 問いに私が肯定すると、ドワーフは女博徒に今が何時ぐらいか見て来る様に告げた。日のない地下に数日潜った後では、時間がわからなくなる事がある。前世の日本に時計が満ち溢れていた事を思うと、転生を実感する。


 17と呼ばれた女博徒は警戒心を解かぬまま二階に向かう。単独行動は勧められないが、私の様な忍者や盗賊が静かに情報を集める時は例外だ。

17は多少の魔法も使う様だし、博徒は表の顔なのだろう。


「ふ、フールさん。さ、サラマンダーはまだ使えますか?」


「ロウソクの長さから後、一度ぐらいです」


 紀伊様と二瓶、焼かれた冒険者達への祈祷を終えた下級神官がエルフに尋ねる。確かに事前情報はウンディーネだったはずが、先程はサラマンダーが出てきた。


「ペプシ。何と戦うつもりだ?」


 ドワーフが下級神官に問う。そうだった下級神官の名はペプシだった。前世の炭酸飲料と同じ名前。

時計の事で日本を思い出していた私は思わず尋ねてしまった。


「ペプシ様、姉妹にコカ様といらっしゃいませんか?」


「え?ど、どうして聖女様と同じ問いを?り、[竜の島]にはその様な文献か伝承が?」


 急にペプシに詰め寄られた。思わぬ反応に少し驚く。そして私は悟ってしまった。ハルピア近郊で評判の大地母神の聖女は転生者に違いない。

噂話では無料診療時に日に二十回を越える力を行使したそうだ。

それも複数回。


 対してどうだろう。私は前世記憶はあるが、しがない竜人忍び。

しかも生き延びる為、手の内を隠していたら、里から「見映えもしないし、実技も使えない」と、見切り品で売られた。

見た目が良いと下忍は男女問わず[床技]を仕込まれるので見映えの方は平凡で助かったが……。


「あんにゃろう!何が『チートなど、ありませんよ』だ!しっかりチートしてるじゃないか!ちくしょう!」


 自らの境遇の理不尽さに突然叫んだ私の首元に、いつ抜いたのか全くわからなかったが、信濃の刀の刃が突き付けられている。


「ち、違うんです。わ、私が問い詰めたので……」

 

 私には少なくとも、ペプシが良い人である事が分かった。


☆☆☆


 17が二階から戻って来た。


「夕方だったよ、ディッツ。二階はエルフの役所か何かだったみたいだけど、金目の物は無し」


「それにあーしの見立てでは、まだハーピーが見張っているみたい」


 予想通りとはいえ、ハーピーは厄介だ。上空から魔術を打ち下ろされたら、手も足も出ない。それに機動性が高い為、弓などで射るのも困難だ。


「ふ、フールさん。サラマンダー……」


「いや、ペプシ。必要ない」


 私の質問により中断してしまった問いを訊こうとしたペプシをディッツが遮る。ちなみにペプシにはシェアと言う宝を争うコーラ姉妹と言う伝承が故郷にあり、聖女様もその伝承を御存知だったのだろうと伝えた。


「日暮れまで、飯でも食って待とう。ハーピーは妖鳥も魔獣も夜目が効かない。わざわざ戦う必要はない」


「それは本当ですか?」


 フールがディッツに改めて確認している。ディッツは南方諸島を旅していた時に老船乗りから学んだ事だと言い、なんなら私を実験台に歩かせて見たらどうだと提案した。


 結果としてはペプシの取り成しで私は実験台にはならずに済み、夜の間にベースキャンプの物資を無事回収した私達一行はエルフの古都を後にする。


 ロイターの街に帰り着く頃には小雪が舞う様になっていた。



「しゅ、手記の参考にさせて下さい。だ、男女問わず[床技]って、どういう意味ですか?」

「K18、腐った女人、などの技です。ペプシ様」

「?。腐った……。そういえば腐乱死体の横でディッツさん普通に食事の準備始めて驚きました。フールさんの提案で二階に移りましたけど」

「冒険者や傭兵なら仕事次第では普通にあり得ますからね。私も今回で慣れました。」

「……わ、私はまだまだです。」

〘転生者の信徒から、苦情がきましたよ。[聖女]はチートだと〙

〘[聖女]の件は魔導書に任せています。が、あの者がチートですか?〙

〘確かに…竜人にした分、苦情が来た信徒の方が注ぎ込んだリソース大きいのですが……〙

〘竜人ではなく、適当な貴族の令嬢にした方が納得したのでは?〙

〘そうだったかも知れませんねぇ……〙


私の黒歴史がまた1ページ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ