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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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36/42

信頼、信用

信濃視点です。

 私達が階段を登り、地下八階に戻るとスチールゴーレムが待っていた。

すぐ後では私達が壊した壁を塞ぐ為、オレンジ色のスライムが扉に張り付き硬化を始めている。


「入場期限が切れています。入館証を返却し、速やかに退去願います。もし警告に従わない場合、警備対象者に認定します」


 口もないのにスチールゴーレムが喋った。問答無用に排除される心配はない様だ。ここから地上まで警備を切り拓くのは骨が折れると思っていたので助かる。


「出口まで案内してくれるんだろうな」


「入館証を返却して下さい。出口にご案内します」


 ディッツが答え護符の様な物を渡すとスチールゴーレムは通路を進み始める。


「出口まで、ご案内します」


「一階のミノタウロスはどうなっている?」


「チカカ02は存在しません」


「チカカか……どうやらミノタウロスの所までは案内してくれるらしい」


 ディッツは手慣れた様子で話をしている。そんな様子を何故か依頼主フールは嫌悪感を隠しきれずに見ているが、何故かは分からない。


「[賢者の石]はどうしたのですか?」


「素材の引き渡しを行いますか?」


「……いや、止めておこう」


 フール殿がスチールゴーレムに話かけるが的外れな返答がきた。

ディッツがそれに答えるが、一瞬間が空きフール殿の殺気が高まった。


 なるほど、ディッツは魔族とエルフ等の取り引きをした実績があるのだろう。

捕らえられたエルフは好事家に高値で取り引きされる。

人間なら奴隷市場にゆけば安価で買えるがエルフはそうはいかない。

伝説の魔獣、[金きんの卵を産む鶏]よりもかねを産む種族だからだ。


 ある夜営時にディッツが自虐的に話していた[冒険者仲間は信頼しても信用するな]は真実なのだと悟る。

遺跡に入るまで、17が魔族とは知らなかったし、追手の事を黙って仲間に入った私も周りから見れば信用ならないだろう。


「あーしらが戻るまで、硬化スライムで固めずに待ってくれてありがと〜」


17がスチールゴーレムに話かけるが、返答はなかった。


☆☆☆


「入口の広間に冒険者達が居ます。チカカ02は排除されてます。退去猶予は12刻です。」


 スチールゴーレムが伝えてきた。つまり一日やるから、冒険者を排除し建物から去れと言うことだ。

外のハーピーは遺跡には関係ないのだろう。


「中の様子は判るか?」


 扉から少し離れた所でディッツが声を潜め17に尋ねる。

スチールゴーレムは遺跡の奥に去り、この場には[鋼鉄の鍋]とフール殿しか居ない。

17は足音を消し、扉に近づき聞き耳を立てる。


「推定五人、戦士三、他二、警戒度中」


 17のハンドサインをディッツが解説してくれた。そして少し考えた後、一旦戻る様に指示サインを送る。


「様子はどうだ?」


「下女が戻るのを待つか?二階の窓から建物を出るか?を話し合いしてた」


 戻った17が会話を伝えてくれた。どうやら私宛の客の様だが、扉を開けれる魔術師がいないらしい。

食料や水を節約して待ち伏せしているが、状況は悪い様だ。時間制限さえ無ければ、こちらは水も食料もまだ余裕がある。


「時間制限がある。儂と信濃で斬り込む」


蝋燭ロウソクのサラマンダーも投入できます。契約していないので、私自身は使役に集中ですが」


「じゃあ、あーしはフールとペプシの直掩ね」


 簡単に作戦会議が行なわれ、準備が進められる。私は[上弦][下弦]を抜刀し身構えた。


「わ、私は待機で大丈夫でしょうか?」


「ペプシ、お前が無事なら多少の無理が許容出来る」


 ディッツが短く答えた。17は扉を開けるタイミングを確認している。蝋燭ロウソクに火が灯され、サラマンダーが、ゆらりと姿を現した。

その姿は炎を纏ったリザードマンに似ているが実体はない。


「[炎の精霊。仮初めの契約に従いて、我が意を示せ]」(使1残7)


 フール殿のエルフ語の詠唱を受け、リザードマンが扉に向かい歩み始めた。

ウンディーネと同じく移動は緩慢。

だが、少し離れていても熱量がすごい。


 17が扉に触れるとボンヤリと光った。(使1残8)そして、その姿も掻き消える(使1残7)


「行くぞ!信濃」


 扉が音もなく開いた。サラマンダーを先頭に私とディッツは得物を構え広間に入る。


☆☆☆


 最初に感じたのは腐臭。広間の片隅には首を刎ねられたミノタウロスの死体が置いてあった。

その隣には仲間だったであろう遺体も、こちらは冒険者用の布が被せられて二体安置されている。


「サラマンダー!?待って!入口が開かないの」


 座っていた盗賊風の女が立ち上がり訴える。その隣にいた体格の良い戦士も同じく立ち上がっている。

この二人に殺気はなく隙だらけだ。


 だがその近くにいた三人は違う。

忍びであろう女は鎌を構え、男二人は抜刀した。男の一人は二刀の構え。

こちらも殺気はないが隙もない。

手練と見た。


「下女を、信濃を引き渡せば争うつもりはない」


 双月流[十文字]

二刀を構えた中年の男が話すが、私は問答無用に斬りかかる。

師の仇の一派と交渉などあり得ない。

 正剣聖流[切り返し]

男は[十文字]を受け流し切り返してきた。


「争う気はないの!私達は騙されただけなの!」

女の悲鳴が上がった。




「博士、コカトリスの回復に成功。回収済みです。アンデットの除去が出来ましたので、本格的に九階入口の封鎖に入ります」


「冒険者の誘導は?」


「そちらも問題なく」


「ミスリルの燭台一つでアンデットと下士官の排除出来たのだから上々か。姉上も相変わらず人使いが荒い」


「あら〜可愛い妹に差し入れと思ったのですが〜」


「姉上!」

「閣下!」


私の黒歴史がまた1ページ。

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