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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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神の寝所

ディッツ視点です。

 17が操る青白い光の玉が先行して暗闇に降りて行く。

もし、梯子を降りている途中で攻撃を受けたり、罠が発動したりすれば、成すすべがない。


「あーしの感触では大丈夫」


 光の玉に続き17が手早く梯子を降りた。少しの間そのままであったが、やがて下からの光が不規則に明滅を繰り返し始める。


「どうやら問題ない様です」


 しばらく明滅を眺めていた依頼主のエルフがそう告げると梯子を降り始めた。


「何故わかる?」


 儂の問いにエルフは出来の悪い弟子を見る様な視線を返す。奴らはいつも儂らドワーフや他の種族を導く必要がある遅れた存在の様に扱う。

エルフは自分達の文化、価値観こそが素晴らしく、普遍的であるかの様に信じている。


「明滅が魔族の使う信号になってます。[明朗なる危険なし]と。」


 エルフに引き続き、儂らが梯子を降りると小さな部屋になっていた。光の玉が辺りを照らしている。


「やっぱりフールはあーしの送った信号が判るんだね〜」


「べ、便利ですね。離れた場所でも情報が伝えられるのは」


 17の軽口にエルフは沈黙を保ったが、ペプシが反応する。信濃も頷き素直に教えを乞う。


「冒険者だと、まずは傭兵式ハンドサインの方が便利じゃない?ディッツも知ってるでしょ?」


 儂が肯定の意を手振りで示すと、17以外は怪訝な顔をした。



 儂らが降り立った小部屋には小さな扉があった。扉の横には窪みがあり、蝋燭ロウソクが立てられる様に燭台が置いてある。そして燭台には燃えさしの赤い蝋燭が長い年月に耐え立っていた。


「見た所ミスリル製だけど、あーしの見立てでは罠っぽい」


「罠ですね。[サラマンダーの蝋燭]です。[月明かり]が戦って火を消したのでしょう」


「じゃあ燭台は大丈夫?」


「はい、蝋燭は私が回収します」


 エルフと17が短く言葉を交わし、手早く遺物を回収する。灯すとサラマンダーがでてくる蝋燭など、魔術師でも無ければ価値はないが、ミスリルの燭台なら金貨20枚にはなるだろう。


「燭台はペプシに預けておけ、お前より安全だ」


「やっぱり?でも、あーしもそう思うよ」


 儂が17に指示すると、17は笑いながら燭台をペプシに手渡す。

街に戻りパーティが存続するのなら、パーティ資金制に移行して、管理はペプシに任せるのが良いと思う。

パーティが存続するかは、いやお荷物になっている儂がパーティに残れるかは分からない。


 客観的に見れば儂の代わりに戦士を二名、そして叶うなら魔術師を一名入れるのが、このメンバーならば最適だろう。依頼の大半を占める護衛や討伐、軍の下請けなどには人数も必要だ。


 どちらにしろ、儂以外のメンバーは17のチンチロにより、資金に余裕が出来ている。

今度は反対者は出ないはずだ。


「結界は解かれ、扉は普通に開いています。魔術の気配はありません。」


「あ、アンデットの気配もしません」


 奥への扉を調べていたエルフとペプシが返事をよこす。


「じゃあ、あーしが開けるよ」


 17がそっと、扉を開け滑り込む。そして直ぐに顔を出し告げる。


「柩はあるけど、あーしの見た所[賢者の石]は持ち去られてる」


「そんな馬鹿な!」


 珍しく声を荒げたエルフが扉を大きく開ける。不用心な行いだが、幸い罠が発動する様な事はなく、儂らは無事小部屋の中に入った。



 奥には透明な柩があり、神の依代だろう女の高位ハイエルフが眠っていた。ゆっくりとだが、その薄い胸が上下している。

そしてその前にある台座には小さな革袋が置かれていた。口が開いており、見た所白い粉がこぼれていて[賢者の石]らしき物はない。


「粉の袋置くのは、あーしも知ってる重さの変化で罠が発動しない様にすり替える手法だし〜。小麦粉かな?これは……見た感じ罠はないけど」


「し、しかし『エルガの血を引く者]でない限り、生命ある者、この書を持ち出すことあたわず』と台座にあります」


 茫然自失のエルフにかわり、17とペプシが議論している。

[賢者の石]を持ち去った者がいるならば、[星明かり]の侵入後、他にエルガ族のエルフが入り込んだと考えるのが妥当だ。もしくは台座の魔力が既に解かれていた可能性もある。


「台座の魔力は正常です。それにエルフとはいえ真のエルガの血族は極少数。他の可能性としては大魔導書との[契約者]が大魔法を行使するぐらいしか……」


「それなら、ここは魔族の管理。魔王が現れ持ち去った事になる」


 台座を改めて調べたエルフと可能性を示唆する信濃。

だが議論に意味はない。冒険者は事実に対応するのが仕事だ。


「他に調べる事はあるか?無ければ引き上げる算段をせねばならん」

儂が告げると17がエルフに訊いた。


「フール?柩はどうする?」

他に金目になりそうな物はこの部屋にはない。


「開けてはなりません。神宿りし者には神力が宿ります。このまま30万年もすれば正常に戻りますが、そうで無ければ致命的です」


 ペプシが突然鼻血を出した。聞けば神力が一時的に増えているらしい。ペプシ曰く、儂らにも影響は出ているそうだが、元々少ない神力なので今のところ実感はない。


「不味いじゃん。フール、神宿りの儀式の時はどうしたのさ」


「記録では本来魔術的装いをした上で隣の拝殿で儀式を行い本殿には入りません。神とは扉越しにやり取りした様です」


「熱っ!」


 17が柩の魔術式を読み取ろうとして失敗した。火傷を負った様に見えたが直に回復する。

儂も長年の酷使で痛んでいた部位が熱い。最近は少し重かった戦斧を軽く感じている。


「ざ、ざきに部屋を出て良いですか?」


 両鼻に布を詰め赤い顔をしたペプシが申し出る。

エルフがもう一度周りを見渡し[賢者の石]らしき物がないか確認したが、何もない。


「何者かに先を越された様です」


エルフは大きく溜息をつき、儂らは[神の寝所]を出た。

神力は普通では一般人は3、神官平均は6、最大値は10です。

薬物等で13を越えると心身に障害が出ます。

15を越えると極一部の例外を除き不可逆的に狂戦士化します。

狂戦士の恐ろしい所は神力が切れるまで自己回復して敵味方関係なく戦い続ける所です。

闇市などでは干した「狂戦士化茸」が自害用に売られてたりします。


私の黒歴史がまた1ページ

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