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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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29/42

[星明かり]の日誌

視点17です。

[星明かり]で「遺跡探索1.5」かいたら、バットエンドシリーズになりそうです。

「ねぇ。その日誌そんなに面白い?」


 あーしは保存食を噛りながら、食事も取らず熱心に日誌を読むペプシに声をかけた。


 斜め読みした感じでは、冒険者[星明かり]が[賢者の石]を求め遺跡に入り全滅した記述がされているぐらい。

有用な情報としてはフールの目的が[神降ろし]の術式ではなく、恐らく[賢者の石]である事が分かった事ぐらいだ。


 確かに七つ目の大魔法書となれば、契約条件次第では世界のバランスが変えられるかも知れない。

あーしならば第二魔王に即位するとか、ペプシなら聖女になるとか、可能性だけはある。


「時間がない中での休憩だ。飯を食え、ペプシ」


 あーしに目を向けた後、リーダーのディッツが改めて叱責した。ペプシはは慌てて保存食を噛り出す。


「無理に噛じるな。歯が折れる」


 信濃がフールからもらった水を差し出した。

あーしはペプシから日誌を()()()()()受け取り、改めて斜め読みをする。


☆☆☆


 私達[星明かり]にベヌル・バウムを名乗る魔族から依頼があったのはわずか一ヶ月前でした。

ロイターの街で次のハルピア行の商隊を待っていた時です。



 私達[星明かり]はリーダーで戦士のハインツ、同じく戦士の私の兄ビルド・ロイ、魔術師のキュリオ、盗賊のミルそして私至高神司祭リセル・ロイの五人パーティになります。メンバーバランスの良さから重宝されている自覚があり、冒険者としては中堅になるでしょう。



 ベヌルが持ってきたのは、古エルフの遺跡探索。

魔王戦争時代に上層部は魔族が占領したそうですが、その深部に七冊目の大魔法書、二つ目の[賢者の石]が眠っているそうなのです。

話の信憑性は半々ながらも、ベヌルが旧魔王軍の下士官だったのは見せてもらった旧魔王軍の認識票から確かな事でした。



 世界に六冊しかない大魔法書は書と名付けられていますが、本の形をしているのは三冊だけです。

魔術師ギルドに伝わる書[賢者の石]は珠の形ですし、魔族に伝わる書は[魔王の冠]と呼ばれる様に冠、英雄リューリューが持つ[勇者の書]は杖の形状をしています。



 ベヌルの持つ身分証は遺跡の中に入るには問題ありませんでしたが、警備を()()()()()には不充分な物でした。

ただ警備から目を逸らす魔法陣があれば致命的な状況にならない限り、遺跡の奥には進める事でしょう。



 神の依代、高位ハイエルフの眠る棺の横に降臨せし神の造りし大魔法書[賢者の石]は確かにありました。

それを護りし守護者と、悪辣な罠と共に……。



 ベヌルは死の罠に囚われ、キュリオは石像と化しました。

重傷を負ったミルは最早もはや動けず、一階ホールのキャンプに物資を取りに行った兄とハインツはいまだ帰りません。

神力を回復し、ミルを癒す為には眠らないと。

兄達が戻り、ミルを連れてならキュリオも助けられるでしょう。



 神力を回復する為眠っていた私が目を覚ますと、ミルは既に冷たくなっていました。

不死者にならぬ様に祈祷しましたが、涙が止まりません。

巡回しているスケルトンウォリアーは魔法陣により私を無視してゆきますが、その剣には赤黒い血がコビリついています。

まさかとは思いますが、不安です。

兄さん、ハインツ、早く戻って来て。



 ミルが去ってから三日が過ぎました。たまに巡回のスケルトンウォリアーと清掃用スライムが通り過ぎるだけで、あたりは静かです。

食料は既に尽き、水も残りわずか。

こんな事になるのなら、ロイ家の再興など目指すのでは無かった。



 水も尽きました。いえ正確には薬を飲む為の分しか残していません。ハインツが言っていた様に眠くなるだけで苦痛がない事を願っています。



 もし、これを読む方がいたら、厚かましいお願いかも知れませんが、聖王国の至高神神殿にロイ兄妹は死んだと伝えて下さい。



至高神神殿の方へ

この日誌の原本を持ち訪れる者がいたら何者であっても、最後に記入した日付から七年が過ぎていない限り、ロイ家名義の預金をお渡し下さい。

我ら兄妹には不要になりましたので。


☆☆☆


「聖王国かぁ、預金額にもよるけど、割に合わなそう」


 あーしがフールを刺激しない様に言葉を選び話す。

ディッツの目配せは()()()()意味だろう。

依頼人とはいえ、[賢者の石]を「はい、どうぞ」と渡すのは惜しい。

フールの目的に気付いた事を気付かれない様にしたいのはあーしも一緒だ。


「ち、違います。私が気にしたのは魔術師キュリオの記述です。そ、ソルダ村のキュリオなら、探している私の兄です」


「へぇ〜魔術師。ペプシってソーダ村の村長さんの娘か何か?」


 ペプシに腹芸は望むべくもないから、魔術師の話を膨らませる。


「そ、ソルダ村です。村長の分家筋でしたが、本家とは折り合いが悪く、財産を全て処分し、兄と二人、村を出ました。」


「そ、そして、兄は借金をして魔術師ギルドに入学し、私は大地母神殿に奉仕……」


「ごめん、ごめん。ゆっくり食べてよ。それに冒険者は素性は問わないって!」


 ペプシは再び、堅いパン及び干し肉と格闘を始めた。

石像がペプシの兄キュリオならば助ける。そうではなくて別人の石像が残っていたら、どうしようか。もちろん砕けたりしてなく無事ならばだけど。


それにフールが[賢者の石]の所有を主張した場合も考えとかないと。

ペプシと信濃は素直に渡すとか言うだろうし。


「17、気が散らぬ様に持っておけ」


「わかった」


 ディッツの含みある指示にあーしは返事をした。

信濃とフールが内容の説明を求める視線を寄越している。


「[星明かり]って、パーティがお宝目当てに来てたらしいけど、失敗した末路が踊り場の死体。ただ墓地を守る守護者がいて、キュリオっていう魔術師が石化されたみたい。ペプシの兄かもってさ」


「なるほど、石化なら解けば助かるやもしれんな」


「そのパーティは、最深部には到達したのでしょうか?」


 信濃とフール、それぞれが呟いた。フールの疑問には嘘なく、しかし()()()()()()に答えなきゃいけない。

フールにはディッツが話せっての。


「最深部で守護者にあって尻尾巻いて逃げたみたい。逆にフール〜守護者とやらに心辺りない?」


「古文書に、明確な記述はありません。ただいるならば、恐らく死霊レイスたぐいかと。不意打ちでなければ、私達なら遅れはとらないはずです」


「フール殿、遅れは取らんだろうが、死霊レイスだとすると厄介だ」


 ディッツが上手く不機嫌な声を出した。

信濃が無言で頷いている。


 よくやるよ。そう思いつつ、あーしは無意識に髪をいじっていた。

至高神聖王国派の銀行機能は魔術師ギルドの銀行機能程便利ではありません。

七年以内なのは手続きしないと、聖王国派銀行は七年で時効になるからです。


私の黒歴史がまた1ページ。

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