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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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12/42

夜営 後編

明けましておめでとうございます。

視点 ペプシです。

チンチロリン。


そんな音がする。

3つのダイスが茶碗と呼ばれるカップの中で踊り、その出目で周りが一喜一憂する。


茶碗カップの周りには銅貨が置かれ、一回事にやり取りされるが、たまに銀貨が賭けられ感嘆が奔る。


 これは確かにトラブルの元。朝夕の食事付きとはいえ、護衛冒険者は1日働いて銅貨10枚なのに、一回のやり取りで銅貨30枚は最低でも動くのです。


 特に親だと勝てば銀貨数枚分の金額が手に入り、負ければ出て行く。17は最初少し勝ちましたが、今は勝ったり負けたり忙しい。

見た所、若い行商人と壮年の御者が順調に勝ちを拡げている様です。


「さあ、張った、張った!周りの立ちん坊も、子だけで良いなら張り有りだ。俺は幾らでも受けるぜ!」


 壮年の御者が周りを煽り、煽られた冒険者などのギャラリーが銅貨を置いてゆきます。

17は黙って銀貨を1枚置きました。

勝ち気の親に強気に出ている様です。

逆に行商人は銅貨1枚。

熱くなっている場に流されず緩急をつけています。


「じゃあ振るぜ。ほら六の目だ。」

親としては強い目。


 決められた役の目が出ない限り子に勝ち目はありません。

子がダイスを振るたびに場に出された銅貨が回収されてゆきます。


が、


「あーしは四五六。倍付け。」


 行商人が舌打ちし、銀貨2枚を17に渡してよこしました。


「嬢ちゃんは潰れそうで潰れねぇ。冒険者で車座に座ってるのは嬢ちゃんだけだぜ」

17は、それに答えずニンマリと笑った。


「次は嬢ちゃんの親だぜ。どうする?受けるか?」


「もちろん受けるけど、あーしは立ちん坊共のは受けないよ。」

すると熱くなってる周りはブーイングを始めました。


「それは無しだぜ。この回の後の親は嬢ちゃんと行商人の若旦那だけ。場が冷えちまうよ。」

御者の男は鼻息荒く言う。


「勝てば問題ないだろ?無一文になっても裸踊ストリップりで赦してやらあ」

周りの男共が笑います。

それを見て17も笑いました。


「だ、駄目です。17」

私はこれは不味いと声をかけますが、御者に一喝されてしまいました。


「部外者は引っ込んでな!あんたも踊るってんなら別だがな」


 男共は更に下卑た笑いを見せ服を脱げと囃子たてました。私は思わずフレイルを握りしめます。


「わかった。あーしも受けるよ。あーしとペプシの裸踊りが見たいなら、有り金全部賭けなよ!」


!?

いつの間にか17が無一文になると私まで脱ぐ事になってます。


「ち、ちょっと。」


「心配ないよペプシ。これが奴らの手なんだ。行商人と御者はグルで御者が煽り、行商人が大金を積んで潰す。見てな行商人スケベヤロウが大金積んでくるから。」


 小声で17に受けた説明では若い行商人は実は、さる大商人の子息らしいのだが、若い女奉公人に片端から手を出す素行の悪さから勘当された人物との事。

嫌がる処女おぼこを無理に抱くのが好きだと言うとんでもない男だそうです。


 博打に慣れない[おのぼり]の女冒険者を狙って借金をさせ、それを帳消しにするからと関係を迫るのが常套手段らしいのです。


「あーしは、お眼鏡に叶わなかったけど、ペプシを見て仕掛けてきた。ペプシは、見るからに[おぼこ]だからね。」


 う、では17は最初から私を巻き込むつもりだったと言う事の様です。

もし、17が負けたりしたら……。

大地母神に仕える身としては、意に沿わない、そうゆう事はしたくありません。


「17!!」


「大丈夫。あーしはダイスは()()()しくじらない。まぁ、しくじったから冒険者になったんだけどさ。」


 周りの熱気と喧騒が遠く感じます。いや、気が遠くなりかけてるのかも。


「さぁ、張りに張ったり、大勝負だ嬢ちゃん。俺は銀貨20枚。行商人の旦那は何と金貨2枚も張ったぜ。」


「6枚」

17がボソリと呟きます。


「金貨2枚じゃ旦那にゃ遊び金だろ。あーしはともかく、ペプシを好きにしたいなら、その3倍は張らなきゃ」


「6枚ですか?6枚は流石に……。」


「旦那にゃ商品の仕入れ金があるっしょ。張りなよ。清らかな神官様はあーしに勝てなきゃ、抱けないぞ。」


 いつの間にか私は商品、いや賭けの賞品になり下がっていました。こんな事なら、時間かかっても神殿で実績を積むんだったとの後悔がよぎります。


「分かりましたよ。機会を逃さないのが商人です。金貨6枚。」


周りは大歓声。

何事かと近くの車座からも何事かと人が集まってきています。


「さぁ、嬢ちゃん。親のダイスを振りな。昨日の[おのぼり]ちゃんは大金にブルってションベンだったぜ。」


「大金?あーしはもう大金には怯まないんだ。」


17が茶碗にダイスを投げいれます。

チンチロリンと澄んだ音。









出目は3。

一の目が3つ。

最強の役の目です。


「5倍付けで、あーしの総取りだね。あんたは銀貨100枚。旦那は金貨30枚の払いだ。立ちん坊共は掛け金だけに負けてやる。」


17が宣言すると、大歓声が一転。

誰も一言も発しません。


「有り金全部叩いても銀貨100には足りねぇ。トビだ。」

御者が財布ごと力なく投げてよこしました。


「あーしは優しいからね。裸踊りは要らないよ。」

周りが、やっと笑います。


「金貨30枚……。仕入れ金を全部やられました。私は破産だ……。お嬢さん……名前は?」


「あーし?あーしに名はないよ。仲間には17って呼ばれてる。」


 若い行商人は荷物から小袋を取り出すと場に置きました。金貨の擦れる音がします。

そしてフラフラと1人夜営地を出て行きました。


遠くで魔狼ワーグの遠吠えが響いています。

商隊の賭場は商隊長の管轄にあり、賭けの結果を力づくで変えたり、支払いを拒んだりは雇われ者は即時解雇、同行者は夜営地からの追放などペナルティがあります。


チンチロリンのルールはネット参照して下さい。

但し、賭博は犯罪です。

また賭博を開帳する事も犯罪です。


私の黒歴史がまた1ページ。

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