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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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固めの杯

エルフのフール視点です。

「ロイターの街まで商隊に同行したいのだが、丁度良い商隊はあるだろうか?」


冒険者の店[森の若木亭]の店主に尋ねる。

冒険者は雇ったが、都市間の移動は商隊に付いて行く、もしくは護衛に雇われる方が良い。

ゴブリンは自らの仲間より数が多いと基本襲わないし、オーガやトロールも飢えていない限り大人数の商隊などはやり過ごす。


護衛付きの商隊を襲うのはゴブリンよりは賢いと自称する人間達の群れ。

山賊や傭兵崩れと呼ばれる者達だ。

人間はリスクの計算が出来ない訳では無いが、欲望の前に計算を間違える。

それでも単独行や少数パーティでの移動よりは安全に旅が出来る()()()


「魔族領に向かう南ランドルト街道を行くなら、ハーピー商会の定期商隊が明後日に出る。」

そう言って店主は依頼が書かれた帳簿らしき物をめくる。


「同行ではなく、護衛枠も空いてるがどうする?日当銅貨10枚、ロイター精算で朝夕の食事付きだが。」


「私と[鋼鉄の鍋]の4人で申し込む。」


私は即答した。

[鋼鉄の鍋]と結んだ護衛契約と矛盾や逸脱がない限り、私の意志が尊重される。

店主に追加で南ランドルト街道について聞いたが、10頭前後の魔狼ワーグの群れが彷徨うろついているのが懸念らしい。


魔狼ワーグはこちらの人数がいても、逸れる者を狙って仕掛けてくるからな。」


ワーグにとっては人間の群れも鹿の群れも同じで、逸れた弱い個体を狩るだけだ。

慣れてない[おのぼり]冒険者は格好の的になる。


護衛枠に空きがあった理由が理解出来た。


☆☆☆


「エールは手元に行ったか?これからミーティングを始める。」


店主に借りた小部屋で、改めて[鋼鉄の鍋]と顔をあわせた。

リーダーのドワーフが司会をして、依頼人として紹介される。


「改めまして、私は依頼人のフール。今回の依頼は旧エルフの森の学術調査の護衛をお願いいたします。」


そう言って私は薄いエールを飲み干した。

どうやら初代勇者からドワーフに伝わったとされる風習の様で[杯を固める]と言う儀式らしい。

[鋼鉄の鍋]の面々も、それぞれ改めて自己紹介をしてエールを飲み干し、それを見て依頼の説明を始める。



「ロイターまでは商隊護衛をしつつ北上、そこから先は間道を西へ進みます。」


ロイターまでは商隊に合わせ南ランドルト街道を北に10日。

そこから西へは天候等から見て14〜20日。

そして約1ヶ月の現地調査して帰路につく。

簡単ではないが、無理でもない旅程のはず。


目的は、かつてエルフ五部族が、協同して暮らしていた頃の森の調査。

簡単な遺跡探索も、あり得るが魔族の遺跡の様な危険はない。

太古のエルフの記録以外に遺物が出れば分割可能なら折半、無理なら貨幣に換算して折半。



最初、商隊護衛について確認の質問があったが、ドワーフが質問は後でまとめてしろと言うと、それ以後の説明では[鋼鉄の鍋]達は黙っていた。


我々エルフの学術レベルに人間達は追いついていない為、説明の中では調査意味には触れていない。

あまり興味もないだろう。


調査意味を貨幣価値に換算すれば、興味を持たせられるだろうが、人間の欲望を刺激するのは得策ではない為、あえて触れない。


「質問はあるか?」


司会のドワーフが促すと、大地母神の下級神官が最初に手を上げた。


「ロイターの西にはオークの集落があるはずですが、迂回する方向でよろしいですか?」


「迂回します。妖魔オークとは我々エルフも貴女方人間も折り合わないでしょう。」

あえてドワーフには言及しなかった。

ドワーフならば妖魔どうしで交流出来るかも知れないがリスクが高い。


「あーしらには、太古エルフの記録かどうか区別がつかないけど、判定はどうするの?」

次に手を上げたシーフは人間らしい質問をしてきた。


「基本私がします。もちろん公平に判定しますが、そこは信じてもらうしかありません。」

人間程強欲ではないので、判定は公平にするつもりだが、人間達を納得させられるかは別問題。

見つかる物次第だが、考慮しなければならないだろう。


「遺跡があったとして、守護者は精霊か?」

最後に竜人が戦闘可能性に関する事を尋ねてきた。


「想定はそうですが、こればかりは分かりません……。妖魔などが住み着いている可能性もあります。」

可能性とは言ったが、ほぼ確実に何かは住み着いているだろう。

一番あり得るのがゴブリンの巣になっている事だ。

その為に雇う護衛なのだから、奮戦には期待したい。


「エルフ戦争前の遺跡か。[妖魔神との契約の石板]でも出たら大変な事になるだろうな」

司会をしていたドワーフがボソリと呟いた。


私は表情を変えない様にしたが、やはり妖魔ドワーフは侮れない。


ランドルト街道。

魔族の王都を起点として東西南北に伸びている。

それぞれ方角+ランドルト街道と呼ばれており、例えば王都から南のハルピアまで続く街道は南ランドルト街道と呼ばれている。

一部の人間史上主義者は魔王の都が世界の中心の様な呼び方に反対して、違う呼び方を主張しているが定着には至っていない。

ある歩き巫女の手記より。



エルフの上から目線は、古い西洋の翻訳物の手記を参考にしました。

いや、今でも多様な価値観を唯一の価値観として押し付ける様な人々の物言いは……。


私の黒歴史がまた1ページ。

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