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遺跡探索2 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面
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老ドワーフ

ディッツ視点です。

儂は魔都ハルピアの[森の若木亭]の隅で朝から薄いエールを飲んでいた。

昨晩、冒険者の店を変えたばかりだ。

半年程前に冒険者パーティ[鋼鉄の鍋]として、この店から移籍したが出戻った形になる。


「ディッツの旦那、また一人パーティに逆戻りかい?」

気心の知れた店の主人が尋ねてきた。


「あぁ、二人の仲間は妖魔族お抱えになり引退して、最後の一人は死んだからな。」


そう答えると、銅貨を放りエールをもう一杯頼む。

主人は肩を竦め、宿泊者にはサービスで付く朝食のスープとエールを出してきた。

食欲は全く無かったが、スープを口に運ぶ。


不味い。

半年程で舌が肥えてしまったらしい。

あの恐ろしい魔族の店の飯は美味かった。



昨日、最後の仲間だったシーフは全身が裏返しになった死体になって発見された。

仲間の死を知らせてくれた治安傭兵によれば、忌まわしい魔術で縦に切られた背中から生きながらにひっくり返されたらしい。


検死した治安傭兵の魔術師が言うには、古魔族の使った処刑魔術にその様な魔術が記載されているのは知っていたが、実際使われた死体は始めて見たそうだ。


儂は恐ろしさに震えた。

仲間のシーフは会員制の高級酒場、ブルーブラッドを探ると言って出かけたまま、行方不明になっていたのだ。


ブルーブラッドは、この魔都に巣食う魔族の情報交換の場になっていると噂され、遠く聖王国の密偵だったシーフにして見れば調査の本命。

だが、それただけに慎重に進めていたはずが……。


「お悔やみ申し上げます。」


カウンターで飲んでいた顔見知りの魔族が声をかけてきて、金貨を1枚そっと儂の居たテーブルに置いた。

儂は自分の愚かさを悟り、店の女主人の魔族にパーティ登録の解約を申し出ると、金貨を掴み店を出た。


この店で金貨を両替したが手数料を引いて渡されたのは銀貨30枚だった。



「旦那は冒険者続けるんだろ?[鋼鉄の鍋]に新しい仲間を紹介するよ」

頼んでいないエールのお替りをテーブルに持ってきた主人が声をかけてきた。


「[おのぼり]か?」


「まぁな、だが老練な冒険者が新人を教育していくのは必要だ。いきなり即戦力を求めるのは無理筋ってもんだ。」


この店の主人は良心的で、新人冒険者を育てる気持ちがある。

だが育てた冒険者は大抵移籍してしまう為、一見さんパーティ以外はいつも中途半端な冒険者達が、たむろしている。

もう少し流行っている店には看板冒険者が居るのが普通だ。


「紹介してくれ。生きるには、食わにゃならん」


儂はそう告げた。

用語解説

[おのぼり]

地方で食い詰めて、冒険者になろうと都市に出てくる若者の事。

地元でのゴブリン退治ぐらいの経験しかなく、安価な片手剣と皮鎧装備で軽戦士を名乗る事が多い。



名もなきシーフは何故死んだのか?

前作と銀貨30枚。

わかる人はニヤリとして下さい。


私の黒歴史がまた1ページ。

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