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第94話

「 (ん? あれは……蒼か? 確か司がここから離れた場所に避難させたはずだが、まさか戻って来たのか。丁度いい。まずはアイツから殺してやる。蒼が死ねばこの二人も怒りと動揺で動きが単調になり俺の勝率が一気に上がるだろうし良い事尽くめだ) 」


 狙いを蒼へと変えた蓮は攻撃するフリをして跋の真横を突っ切り、猛スピードで蒼との距離を詰めていく。


 司とユエルは蓮の行く先に何があるのかを目で追い掛け、彼の目的に気付いた。ホラーゲームの脅かしポイントがまだ優しく思える程に二人は心臓を掴まれたかのような錯覚に陥る。


「……ッ! 蒼! 何でここに来たんだ! 今すぐ逃げろ!」


「え?」


 蒼は今蓮たちに背中を見せている状態だ。自分に迫って来る悪魔に気付く訳も無く、司の叫びを聞いて呑気に後ろを振り返る。


 その瞬間にはすっかり見た目が別人となった蓮が目と鼻の先まで近付いており、剣を振り下ろしていた。


 逃げるどころか情報処理をする時間すら与えられず、蒼は目の前の出来事を判断する前に肩から脇腹にかけて斬撃をもらってしまった。


「「……!」」


 ゆっくりと後ろに倒れていく蒼を見た二人はそれが現実のものとは思えず、呆然と眺める事しかできなかった。しかし徐々に今取るべき行動が何なのかを理解し始め、それが彼らの体を動かした。


「蒼!」


 司は急いで跋から飛び降りて彼女の元へと一目散に駆け寄る。


 異世界運用という面でも間違いなくトップレベルの緊急事態に、ユエルも跋を一旦消してから蒼の所へと向かった。


「蒼! 蒼!」


 我を忘れて司は血まみれの蒼を揺さぶる。


「お……兄……ちゃ……」


 司の必死の呼びかけに蒼は苦しそうに目と口を開けて答えようとした。息はまだある事に少しばかりの安心感を得るが生死の境目である事に変わりは無い。数ミクロンの油断も許されない状況だ。


「動かしちゃダメです、司くん! 今治療しますから!」


「先輩……」


 ユエルは跪座の姿勢を取った後に蒼が負った患部へと両手を近付けて『治癒』を行う。当然使用する藍色の球は五つであり文字通りユエルができる全力の回復だ。


 優しい白色の光が深い傷を優しく包み込み、ゆっくりではあるが確実に治していく。それはユエルの來冥力が蒼の怪我に対して通用している証拠であった。


「蒼……。頼む……死なないでくれ……」


 ここは異世界で蒼は既に死んだ身ではあるが、こうして『生きた蒼』と再会した以上はもう二度と彼女には死の苦しみを味わって欲しくないし、このまま生きて欲しいという気持ちが必然と湧く。


 他者を回復する能力の無い司はただ祈る事しかできず、生きた心地がしない状態で治療を見守る。そんな中、後ろから冷酷な声が聞こえ耳に不快感を与えてきた。


「チッ……! 勝利を確信して気が緩んでしまったか。こんな雑魚女一人、一撃で殺せないとはな」


 三人を凍り付くような目で見下しながら蓮は話す。


「……」


 そんな蓮の言葉に対して司は何も返さない。ユエルは蒼の治療で忙しい為、そもそも蓮の相手をする余裕など無く結果蓮の独り言のようになってしまった。

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