第91話
忘れるはずも無い。ガルムが口から発射した巨大なエネルギー弾を相殺にもっていった、ユエルの『爆発』による灼熱弾だ。
それらは三つとも意思を持つように自由に動き回り、そしてガルムの腹部と両翼それぞれに命中した。爆発と共にその硬い皮膚が焼き尽くされ、突如として広がる燃えるような痛みに苦痛で悲鳴を上げる。ガルムは咬み付いていた跋の右手を思わず解放して自身はバランスを崩してしまう事になってしまった。
自慢の翼はボロボロとまではいかないまでも攻撃性能は失われ、本来の飛行性能でのみ使用せざるを得ない状況になっている。
蓮はと言えば爆発の瞬間にガルムの翼が彼を包み込むようにしていたおかげで防御壁の役割が果たされ、軽い火傷程度で済んでいた。この程度に抑えられたのだからガルムの身体の硬さも異常である。
「 (何だ? 今何が起こったんだ?) 」
実際に攻撃を受けたガルムは当然として蓮も何故急に『爆発』による攻撃が発生したのか分からず、脳の処理が追い付かない。
だが空久良に顔バレした時も冷静に、そして冷酷に対処した蓮は動揺する時間もほんの僅かなものとなっており、既に状況の分析に移っていた。
ユエルが『爆発』を使用したのは良いとして、気になるのは数である。
彼女は『爆発』を三つ放ったのだ。どうやら火力上昇だけでなく先程のように複数個の爆発源を生み出す事も可能らしいが、三個放ってきたという事は使用した藍色の球も三個という事になる。
だがこれは奇妙な話であった。
「 (おかしい……。もしこの予想が正しいのであれば、跋のステータスを下げ、治癒力も変えずに今の攻撃を行った事になる。でもそうなった場合、跋の回復は絶対に間に合わないはずだ。一体どうやって……) 」
「一体どうやって跋の回復を保ちつつ、『爆発』を三つも撃ったか。君の考えてる事はこんなところでしょ?」
「……! 司……!」
一体この男に何ができるのかと高を括っていたが、蓮の疑問を解決するキーパーソンは司なのだと気付いた。
「君は跋がダメージを受けたと同時に回復している光景を見て、彼女が『召喚』による跋の維持と、『治癒』による回復に全力を使っていると考えたんだろうね。でも、その前提が間違ってるよ」
司の発言を聞いた蓮は自分の予想は間違っていないと確信した。
「僕が来た後の先輩が行った力の配分は『治癒』に一個、『召喚』に一個、そして『爆発』に三個。君が見た光景が、そのまま答えだよ」
「だがそれだとガルムの攻撃をどうやって凌いだ? その配分ではどう考えても回復が追い付かないはずだ。それは証明済みのはず……」
「君の目には僕がただの置物に見えるの? 跋の強化は僕が引き受けたんだよ。レベル一状態の『治癒』でも間に合うように、僕は跋の耐久性能を上げた。つまり、ガルムから受けるダメージ自体が軽減されていたって訳だ」
回復量を上げずとも回復が間に合うようにする為には、そもそもの被ダメージを減らせば良い。冷静に考えれば気付きそうだが、固定概念に縛られていた蓮はそこまで考えが至らなかった。




