第84話
ガルムは蓮と共に彼の使い魔として併せて報道されていたが、さすがにあの閲覧注意のシーンを届ける訳にもいかず専門の画家がイラストで伝える方法が取られた。そのせいで司とユエルは存在は認識していたものの実物はどんな感じか知らなかった訳だが、こうして目の当たりにすると嫌でもその圧に呑み込まれてしまいそうだ。
せめて自分と同等のサイズであればまだ良かったのだが、三~四メートルはある体長の凶暴生物は恐怖の権化でしかない。
「こいつがガルム……。やっぱり報道時のイラストで見るのと、実物を間近で見るのとでは全然違うね。空久良の仇、取らせてもらうよ」
余裕を見せる司とは対照的に蒼は今にも泣き出しそうだ。
「……っ……お、お兄ちゃん……」
これまでパノン内のストーリーにおいて、いわゆるボスキャラを何体か倒して来た蒼だが、ここまでの大物には会ってなかったのだろう。ガルムを前に恐怖で一歩退き、涙目で司を見上げる。
そんな蒼を見た司は安心させるように優しく微笑む。
「心配しなくて良いよ。絶対に蒼の事は守るから」
「私の事も忘れてもらっては困りますよ。お兄さんの右腕として最大限サポートしますから!」
「お兄ちゃん……ユエルさん……」
昔から何かあった時は絶対に司が助けてくれた。その記憶が蘇り兄が居るならきっと大丈夫と蒼は思ってしまった。しかも今は司だけでなくユエルも居る。
この二人の存在が蒼にどれだけの安心感を与えたかは計り知れない。
「ガルム……力む必要は無い。いつも通り、ただ殺すだけで良い。準備運動もしたし大丈夫だろ?」
「準備運動? もしかして上空でアップでもしてたの? 大分シュールだね」
「いや。蒼のお仲間を相手してやっただけだ。一応はこれからそこそこの実力者を相手にする訳だし、先にコバエを何とかしようと思ってな。安心しろ、殺してはない」
「……ッ!」
当然の様にサラッと伝えられた事実に蒼が息を呑む。
司とユエルは蒼の仲間がなかなか登場しない事に違和感を抱いていたが、それは当たり前の現象だった訳だ。
「どこまでも最低な人なんですね、あなたは。今の話を聞いて勝たなければいけない理由がまた一つ増えました」
「先に言っておいてやるよ、お嬢ちゃん。お前たちが俺に勝てる可能性はゼロだ。残念ながらな」
自信満々にそう言った蓮は跳躍してガルムの背に乗る。一応來冥者なだけあって、本人にも最低限の身体能力は備わっているらしい。
怪物と言って差し支えないガルムの背に乗って共に戦う姿は、ある種テンプレとも呼べる戦闘スタイルである。こういった敵は高確率で従者となる生物だけでなく主の方も何かしらの役割や攻撃手段があるものだ。
「絶対にお前らを殺す。今の内にその覚悟をしておけ」
右手を大きく振り上げた蓮は思いっきりパーの形に広げたまま、それをガルムの頭部へと叩きつける。瞬間、ガルムの全身が一度だけ黄緑色に発光した。




