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第8話

「 (間違いない……絶対に司くんの事をどう呼べば良いかで悩んでるな。助け舟を出しても良いが、悩みまくってるユエル見るの面白いから傍観しとこ) 」


 まさか自分の友達がそんな考えに至っているとは露知らず、ユエルは未だに頭をフル回転させて彼の呼び方を決めようとしていた。


 そんなユエルの様子を見ていた司は何かを察したようだ。


「 (『つ』? ……。……! あ、もしかして。) あの、僕の呼び方で困ってますか? あまり天賀谷で呼ばれる事無いので下の名前で構いませんよ。あとは呼び捨てでも『くん付け』でも『さん付け』でもご自由に。呼ばれ方とかそう言うの気にしないですし、この業界ではあなたの方が先輩なんですから。そんな気を遣わないでください」


「ふえ⁉ あ、え、えと、その……」


 自分の心が見透かされているかのような発言にユエルはドキッとして慌てふためく。その様子が面白くもあり可愛くもありで、琴葉は思わず吹き出してしまった。


 やがてユエルは、ここは変に遠慮したり気を遣ったら逆に申し訳無いと思ったのか、少し照れながらもようやく自己紹介の締めの言葉を述べた。


「そ、それじゃあ……こ、これからよろしくお願いします……つ、司……くん……」


「こちらこそ! ユエル先輩」


 こうして決してスムーズに進行する事は無かったが、取り敢えず自己紹介は無事終える事ができた。


 そう思った琴葉はこれからユエルに何をして欲しいのか、そして司は今後どういった風に活動していけば良いのかの簡単な説明を行った。


「……と言った具合だ。それじゃあユエル、後は頼んだからよろしく」


「え」


 研修室から一足先に退室しそうな雰囲気を出す琴葉に、ユエルは不安の表情を見せる。何だかんだありつつもやはり彼女が側に居てくれるのは絶大な安心感があり、それを失う事になるのは心配しか残らない。


「何だい、その顔は。もしかして最後まで私が同伴すると思ったのかい? そんな訳無いだろう。司くんの教育係は君なんだから、ここから先は君の仕事だ」


「そ、それは分かってますけど、そんな急に……!」


「それじゃあしっかりな、ユエル先輩」


 そう言うと琴葉は研修室のドアを開けて帰り際にユエルたちにバイバイと手を振ってから静かに閉めた。


 反論の言葉を考えている間の出来事であり、ユエルは心の準備も無くいきなり司と二人きりになってしまった。


「え、えーと……」


 ぎこちない笑みを浮かべながらユエルはドアから司の方へと体を向け、愛想笑いのまま固まる。


 やるべき事は先程琴葉から聞かされたので頭では理解しているはずだが、分かっているからと言ってすぐに行動として実行できるかと言われればノーである。


 彼女に言われた事の一つ目は転生協会内の案内で、司にこの建物の事をより知ってもらう事を目的としたものだ。


 だが具体的にどこをどんな順番で案内して、どう説明すればいいか等は全てユエルに任されている訳でそこにマニュアルは存在していない。


 事前にこの連絡を受けていればまだ準備ができたかも知れないが、どうやら司の採用は急な事だったらしく、何もかもが満足な準備無く進んでいって今に至るらしい。

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