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第75話

 蒼の時も暦が逮捕されない為に口封じ目的で彼女を殺害した。空久良の時は素顔を見られたから殺したという個人的なものであったが、基本的に彼は暦の為に動く。


「大丈夫。絶対無事に帰って来るから。暦は異世界転移部屋? って所に戻ってくれ」


「……。分かった……絶対に帰って来てね」


「……ああ」


 暦の言葉に蓮は儚げに微笑む。


「全部終わったら異世界で起きた出来事の記録は私が全部消す。そうすれば蓮がパノンで殺したって記録は残らないから。それと経過速度差を二〇倍から五〇倍に設定するよ。これでこっちでの一日は向こうだと五〇日……つまり物語は中盤に差し掛かっているって事になる。カムリィさんが戻ってくるまでに決着を着けなきゃいけない以上、これが今私ができる事の全てだよ」


「ありがとな。じゃあ行こう。転移部屋に案内してくれ」


 意を決した暦はカムリィに壊されたヘッドセットを拾ってから歩き出した。蓮もそんな彼女に付いて行く。事情を知る全ての人間を殺しに向かう為に。




 一方その頃、モデルNに飛ばされたカムリィは。


「あーあ。クソみてぇな殺人動機聞かされた上に勝手にこんな所に飛ばされるとか……俺なんかしたかよ」


 カムリィの周囲には様々な巨大猛獣が大量に居た。今からこれらを一人で相手にするのかと思うと何とも面倒である。


「まぁ良いや。こっから一番近い転移室に向かいながらお前らを相手にすんのは怠いが、でも憂さ晴らししたいのも事実だしな」


 急にスイッチが入ったのかカムリィはニヤリと笑って鋭い眼光を周りの怪物共に向ける。カムリィにとっては最早敵と言うよりは獲物と呼べる存在だ。


 明らかに雰囲気が変わったと同時にカムリィの姿が変化する。


 魔法使いが着ているような、黒を基調としたローブを身に纏い、黒のブーツも相まって全身がカラスのように黒一色といった具合になる。水色の細い線が模様としてローブに装飾されてはいるが、色面積から見ても黒が大半を占めているせいであまり目立ちはしていない。


 周囲には水色で透明な短剣のような刃が八本浮かんでいた。


「覚悟しろよ、お前ら」


 カムリィがその言葉を放った刹那、彼の姿は消え水色の閃光が複数の猛獣たちの間を駆け巡る。他の追随を許さないスピードと爆発力で次々と攻撃を受けた猛獣たちは一体の例外も無く全員が一撃で沈んだ。


 ユエルやマキナのような普通の來冥者とは桁違いの強さを持っている。その事実が周囲の猛獣たちに共通認識として芽生えた瞬間だった。

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