表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/108

第7話

 恐る恐る少年の様子を見たユエルだったが、その行動を後悔する事になる。


「あ、あはは……可愛いらしい先輩ですね……」


 誰がどう見ても困った時の気を遣った笑い方をしていた。


「 (あああああ……絶対に引かれた……もう終わりだぁ……) 」


 ユエルが一人絶望している中、一応進行役に任命されている琴葉が先に進む為に場を仕切り直した。パンと一回手を叩いてから二人を改めて向かい合わせる。


「ま。取り敢えず二人とも自己紹介しなよ。じゃあまずは(つかさ)くんから」


「分かりました」


 司と呼ばれた少年は先程までの引きつった感じでは無い自然な笑みを浮かべて自己紹介を始めた。


「初めまして。(あま)()()司って言います。つい先日ラスボス役になったばかりの駆け出しで、実際に異世界をまわした経験も当然無いので、色々僕に教えて頂けると助かります。よろしくお願いしますね」


 礼儀正しく笑顔が似合う少年。それが彼に対する印象だった。


 整った綺麗な黒髪に幼さが少し残る可愛らしい顔立ち、女性顔負けの綺麗な肌は一人の女性として嫉妬してしまうレベルだ。


 藍色のタキシードに身を包み、黒のネクタイには一切の緩みが無い。

 

 見た目は確かに華奢な少年でどこか儚げである。

 

 身長は160センチ後半程で、男性の平均身長よりも少しだけ低いといったところだ。

 

 虫も殺せぬような雰囲気がありユエルとは違った意味でラスボスらしさが無い。もっとも力を解放していない状態でのそんな評価は無意味に等しいが、本当にラスボスとしての威厳を発揮できるのだろうかと疑問に思わずにはいられない。


「………………」


 それにしても先程までの出来事が無かったかのような切り替えの早さだ。ユエルに意識させないように敢えてそうしているのか、それとも本当に気にしていないのか。一体どちらなのかユエルには判断できないが、彼のこの対応は今のユエルには有り難かった。


 変に意識しなくても良い空気になった事と、少し時間が経った事で幾分か冷静さを取り戻したユエルは、まだ緊張した様子を見せながらもハッとして自己紹介を始めた。


「あ、よ、よろしくお願いします。私は皇真ユエルって言います。ラスボス歴は短いんですけど、1年です。わ、私もまだ未熟なのでどこまでお役に立てるか分かりませんが、精一杯頑張りますね。つ……え、えーと……」


 ここでユエルは口ごもってしまい、次の言葉が出て来ない。これは何を話せば良いか思い付かずに悩んでいる訳では無く、別の理由で悩んでいるが故の事だった。


「 (ど、どうしよう……私と一応年齢が近いし、琴葉ちゃんもそう呼んでいたから思わず『司くん』って言いそうになったけど、さすがに馴れ馴れしいかな) 」


 今日会った初対面の人をいきなり下の名前で呼ぶ事に抵抗が生まれたのだ。ユエルは司の事をどう呼んだら良いのか決めかねていた。


「 (それに歳が近いって言ってもさすがに彼の方が歳上だし、下の名前を『くん付け』はいくら協会では私が先輩と言ってもさすがに失礼かも。でも『名字プラスさん付け』は少し距離を感じるし、うーん……でも……) 」


 目をあちらこちらへと泳がしながら必死に決断しようとしている中、ユエルと付き合いの長い琴葉は彼女が何で悩んでいるのか一目瞭然だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ