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第67話

「よし、全員揃ってるな? ……オーケー、全員やる気満々って顔だな。結構結構」


 満足気にカムリィはうんうんと頷いた。


 最初こそ全員が今回の異世界運用は前代未聞なものになると思っていたようだが、会議を重ねる毎に段々分かってきた事があった。


 普段と何も変わらないと。


 ラスボス役と主人公に『設定ではない本物の関係性』があるだけで、それ以外はいつもと同じなのだ。無駄に気負う必要は無いと、口にはせずとも誰もが気付いていた。その結果平常運転で今日この日まで順調に進められ、後は本番を成功させるだけという状況にまでなったのだ。


「司は……お。やる事はやったって感じだな。頼むぜ、ラスボスさんよ」


「はい!」


 自信に満ちた、鋭さすらあるはっきりとした返事を司はカムリィに返した。


「それじゃあ改めて最終確認だ。天賀谷蒼の転生先異世界『パノン』の運用を、今日から始める。運用期間は現実世界で五日間、パノンの世界では一〇〇日。つまり経過速度差は二〇倍に設定される」


 カムリィが口にした経過速度差とは、現実世界と人工異世界での時間が経過する速度の差だ。


 一倍~五〇倍の範囲で一刻みずつ設定でき、二倍で設定すれば現実世界の二倍の速度で異世界内での時間が進行する。ただし異世界に居る人たちの体感速度は現実世界と変わらない。


 今回は二〇倍で設定されている為、こちらの世界で五日間の運用期間であればパノンでは一〇〇日に相当する。つまり司たちがパノンで一〇〇日過ごしても、アルカナ・ヘヴンでは僅か五日しか経過していない事になる。


「実際にこの中から異世界に行くのはお前ら二人だけにはなるが、まぁこれもいつも通りだな」


 カムリィの確認に司とユエルは頷く。


 異世界運用時にその世界に行くのは基本ラスボスだけだ。ラスボス役以外はAIを使用している理由にも繋がるのだが、このような方法を取るのには理由がある。ラスボスが撃破された後も主人公には異世界ライフが待っており、当然その世界の民との交流は続くが、その度に異世界に赴くのを避ける為だ。まさか一つの人工異世界に永住する訳にもいかない。


 その理論でいくならば最初から全員AIで良いのでは、という考えに至るかも知れないが、緊急時の対応は本物の人間には遠く及ばない。何か問題が発生した時に備え、ストーリー進行中は本物の來冥者が人工異世界内に居た方が何かと安全なのだ。


 そう判断した協会は最後の最後まで主人公たちと戦いを繰り広げる事になる『ラスボス』だけは、協会内の來冥者にしようという決定を下したのだ。


「運用開始後は天賀谷蒼の初仲間が登場し、そこから物語が進行していく。最終的に司は『暴走した兄貴』という、まぁ別に大して珍しくもねぇ展開でラスボス戦って流れだ」


「 (珍しくも無いって言われると遠回しに凡庸なアイディアって言われてるみたいで何か引っ掛かるな。いや実際そうではあるんだけどさ) 」


 カムリィにその気は無いのだがついついそんな事を思ってしまう司なのであった。


「以上だ。パノンが上手くいったら協会の可能性が広がる。絶対に成功させるぞ!」


 テンション高めにカムリィは全員に対して檄を飛ばす。


 この場に居る全員の気持ちがカムリィの言葉で一つになった瞬間だった。真の目的は違えど異世界運用を成功させたい気持ちは共通しているのだ。

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