第64話
「 (もしかしてこの化け物……ユエルちゃんが戦った時に召喚してた、あのマネキン生物みたいなのと同系統? もしそうだとしたら……) 確証は無いけど犯人が來冥者だとしたらその人の使役生物なんじゃないかな」
「ああ。その可能性は高い。世界は広いからな。人の形はしていないが來冥者に匹敵……下手したらそれ以上の実力を有している化け物だって居る。そういう系の奴だと思う」
「ねぇそれよりもこの犯人、誰なの? マキナちゃん、もうちょっと映像進められる?」
やはり気になるのはそこなのか探偵署の女性は琴葉の発言には特に返さず、待ちきれない様子でマキナに言う。
マキナは無言で頷いてから少しだけ映像を進めた。やがて犯人は空久良に天狗の面を外されてその素顔を見せた。
「「「――ッ!」」」
その顔を見た瞬間、琴葉以外の全員が息を呑んだ。その人物は探偵署の人たちが知っている顔だったのだ。
「こ、この人……確か三週間くらい前、探偵署に『天賀谷司を調査してくれ』って依頼しに来た……」
「うん! 私の元依頼人だよ! もう調査報告は終わってるから、それ以来連絡は取ってないけど。確か名前は空久良……! もしかして被害者の弟かも!」
衝撃の事実がマキナの口から語られ記録室内が騒然とした。
以前司から空久良には弟が居ると聞いていたが、まさかここで役立つとは夢にも思っていなかった。
「私、牢政に連絡して来るわ! 犯人が分かったって!」
「ああ、頼む!」
探偵署の人たち同士で連携を取り、それぞれが事件解決に向かって動き出す。マキナは殺害される瞬間を確認するまではまだ確定とは言えないと思い、更に映像を進めた。
結果的に絶対的な証拠になる事が判明したのでその行動に間違いは無かったのだが、そんな事とは無関係な方向で後悔する事になった。
「「……!」」
空久良の頭部に狼の化け物が噛み付くシーンを琴葉とマキナは見てしまった。反射的に思わず顔を逸らしたので食い千切られるトラウマ必至の瞬間は何とか回避したが、それでもショッキングな場面である事に変わりは無い。
「……さすがに見れないな」
「私も思わず逸らしちゃった……ユエルちゃんが見たら気絶しそうだね」
何はともあれマキナのおかげで犯人の正体、戦闘スタイルが判明し、犯行の瞬間を収めた証拠も入手できたのだ。これは値千金の情報となり空久良陸殺害事件解決に向けて大きく前進しただろう。
得た情報の全てを探偵署の人間が牢政に伝えた事で、空久良の弟である空久良蓮が指名手配犯としてその日の内にアルカナ・ヘヴン中に報道される事になるのだった。




