第60話
「犯人が誰なのかだが、まだ判明はしていない。だがそれも時間の問題だと私は考えているがな」
妙に自信のある琴葉に司がピクリと反応し琴葉に質問を投げ掛ける。
「どうしてそう思うんですか?」
「空久良さんが殺害されたのは今から二週間前との事だ。立てこもり事件の犯人を追ってから一週間後……ちょうど君たちがマキナと会った日にその犯人を確保し、仲間に引き渡した後、空久良さんが帰って来ない事に疑問を持った牢政の人が探しに行った所発見という経緯らしい」
改めて時系列を頭の中で整理した司とユエルは今の発言に問題が無い事を確認した。
「ここに来たばかりの司くんは知っているかどうか分からないが、ユエルならばピンと来るんじゃないか? この二週間という期間に」
「え……? えっと……」
突然振られてユエルは困惑しながらも考える。その結果モデルNと二週間の期間を結びつける事に成功し、声を上げた。
「あ。モデルNで起こった出来事が記録される期間……!」
「正解だ」
「そんなのあったっけ?」
キョトンとしているマキナに琴葉は呆れたように声を漏らす。
「君の脳は本っ当に興味のある事しか受け付けないようになっているんだな。司くんの為に説明しようと思ったが、マキナにも改めて説明しておくよ」
そう言うと琴葉は転生協会に備え付けられている機能について解説し始めた。
転生協会のビジネスの要となる人工異世界はモデルNをサンプルとして全て作られている。その為かモデルN内の様子は常に記録し続けたい方針のもと、どの場所でどんな事が起こったのか過去二週間分が詳細に記録される仕組みを彼らは作り上げた。
この構造が今回事件解決の役に立つかも知れない。今を起点として二週間以前の情報は消去されていく訳だが、空久良が殺害されたのはちょうど二週間前だ。殺害された時の状況がまだ記録として残っていると思われる。
その記録を事細かに調べれば誰が犯人か、そしてどんな來冥者なのかが分かる可能性は非常に高い。言わば防犯カメラに犯人が映り込んでいる可能性が高いから調べようという事だ。
だが日を跨いでしまったら重要な情報が消えてしまう。まさに一刻を争う事態だろう。
「ちなみに今その調査は……?」
「ああ、探偵署が全力で行っている。その方向での調査は転生協会の方に分があるから、そちらにお願いしたいと牢政から言われたらしくてさ」
「……。あの、僕にも手伝わさせてもらっても良いですか?」
口調は冷静だが明らかに内心は犯人に対して怒りで満ち溢れている事が窺えた。ここでダメと言われても調査に加わりそうな勢いだ。今の司からは誰にも止められそうにない気概を感じる。
「司くん……わ、私も手伝います!」
「ああ。君たちならそう言うと思ったよ。私も協力するから、それじゃあ早速マキナも含めた探偵署の人たちと一緒に……」
琴葉が振り返って会議室から出て行こうとした時だった。
「お前らは良いが司とユエルはダメだ」
「……!」
いつの間にか入口の所に立っていたカムリィに司とユエルの意志は反対された。どうやらあまりにも衝撃的な事実を聞いたあまり、ドアが開いた事にすら気付かなかったみたいだ。
「カムリィさん……」
司はタイミング悪い所で登場してくれたなといった様子で彼の名を口にした。




