第58話
司にとっては初めての異世界創生会議である為に少し勝手が分からない所もあったが、そこはユエルのフォローもあって何とかついていく。
そして途中で昼休憩を挟みつつも何とか第一回の会議は無事に終わった。
「取り敢えずパノンの世界観と、天賀谷蒼が体験するストーリーは決まったな。んじゃあ今日はここまでだ。今回が特殊とは言え、結局蓋を開けてみればいつもと違うのは主人公とラスボス役の関係性だけで、他は何一つ変わらねぇ。次回以降も引き続き頼むぜ。はい解散! 無駄に残らずにとっとと帰れよー」
それだけを言ってカムリィは出て行った。
午前の内から始まった会議だが気付けばもう夕方だ。確かに帰宅するような時間帯だろう。
異世界創生会議は毎回と言って良い程、初回は一日一杯かかる。
ある程度の世界観は司が提出した資料内にあるとは言え、それは小説や漫画の裏表紙に記載されているあらすじレベルの簡潔なものだ。第一回目の会議ではこれを膨らませ、肉付けに肉付けを重ねて主人公に提供できるレベルにまで昇華させる。当然時間はかかり議論も白熱するのだ。
だが最も時間が掛かるのはこの第一回目のみで二回目以降からは一回目に比べると時間はかからず、疲労は軽減される。つまりある意味で最大の山場は乗り越えた訳だ。
今回の異世界運用に携わるメンバーはそれぞれ自分の好きなタイミングで席を立って会議室から出て行くが、そんな中司は少しだけこのまま休憩してから出て行こうと思った。
この部屋の鍵は司が預かった事でどのみち最後に出て行く事にはなる為、丁度良いだろう。
「は~」
さすがに疲れた司は目を瞑りながら息を吸いこんでから吐く。そんな司の元にユエルと暦は立ち上がって近付く。
「司くん、お疲れ様です。はい、これ。頑張ったご褒美です!」
そう言ってユエルは一口サイズのチョコレート菓子を三つ程司の前に置いた。
「あ……すみません、ありがとうございます。いただきますね」
司はチョコを口の中に入れた。甘さが広がり気持ち程度ではあるが疲労が抜けていくような気がした。
「さすがに疲れちゃった感じかな? 私たちは慣れてるけど、初めてだとやっぱりきついよねー」
「うん、まぁね。今日は早く寝るとするよ」
「それが一番です。ラスボス役に大切なのは体力ですからね!」
まだまだスタートラインに立ったばかりだと実感していた司は、なるべく体力回復に努めたいと思っていた。だがそんな彼に休息を与える気は無いと言わんばかりに二人の足音が近付いて来た。
足音の大きさや発生間隔から余程急いでいる事が窺える。やがてそれは会議室の前で止まり、ドアが開かれた事で誰のものかが判明した。
「司くん! やっぱりまだここに居たか!」
「お。司くんだけじゃなくてユエルちゃんも一緒だ~」
そこに居たのは慌てた様子の琴葉とマキナだった。マキナに関しては単純に琴葉の付き添いのように見え、司たちに用があったのは琴葉の方みたいだ。




