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第54話

 転生協会内では毎日何かしらの異世界創生会議と人工異世界の創生が行われており、今日司たちが行うのもその内の一つに過ぎない。


 この膨大なタスク量を何とかこなせていけているのは、異世界の創生自体はそんなに時間を掛けずに終わる事が大きな要因となっている。


 短時間で創れるメリットを利用して転生協会では異世界のストックを数え切れない程作成しており、用意できる異世界が足りなくなる事態を回避している。


 転生者の為の異世界が既にできている時、先に述べた会議内容の三回目以降をカットできるのだ。その場合は各関係者に今回使用する異世界情報を先に伝え、その世界に見合う世界観やストーリーを決定していく事になる。その後ちょっとした事前体験程度の簡単な視察を行って本番だ。


 基本的にいつもはストック用の異世界を用いて運用は行われるのだが、司のような新人のデビュー戦時には一連の流れを把握してもらう目的で最初から最後までを丁寧に行う決まりがある。


 異世界ストックが切れる事=転生協会の死であり、異世界創生に関する業務だけは年中無休で稼働している。


 当然各人には定休日が存在しており、その休みの日が人によって異なるだけだ。


「……」


 現在司は異世界創生会議室の椅子に座っていた。既に今回の会議に参加する各関係者は勢揃いしており、後は総責任者――つまりカムリィの登場を待つだけとなっている。


 この中で司とカムリィが以前からの仲間であると知っている人は、恐らく一人も居ないだろう。


 会議室内では各々が雑談をしたり資料の整理をしており、司は先程からこの世界で情報端末機の役割を果たす『ノア』を眺めていた。


 横長長方形状の透明な光の板となっており、クリアファイルのような感じだ。宙に浮いているそれは操作一つで展開でき、使用者に自動的に追従もする。


「司くん? さっきから真剣な顔でノアを眺めてどうかしたんですか? あ、もしかして考えてた異世界の世界観とかの最終チェックをしていたり……?」


 司の隣に座っていたユエルが司の横顔を見ながら質問した。さすがに司のノアを勝手に覗き見るような真似はしなかった。


「いえ、自分で考えた世界観ですし、内容はもう全部頭の中に入っていますよ。転生協会用ノアにも今回のデータは全部送りましたし準備は完璧です。今僕が考えていたのは空久良についてですね」


「ああ、空久良さん。そう言えば空久良さんから何か返信ありましたか?」


「それが返信無いんですよね。今もこうして再確認してたんですけど、やっぱり無くて」


 小さく溜め息をついた司は右手を軽く横に払ってノアを目の前から消した。


「忙しいんでしょうか。何の音沙汰も無いのは確かに不安ですね」


「二週間休みなく働いてるとか……? まぁでも珍しくも無いのかな」


「協会の異世界創生グループでもちゃんと休暇は取ってるのに……牢政って結構ブラックなんですね」


 実際は殺人というもっと恐ろしい事になっているのだがそんな事を知らない二人は、呑気に話を続ける。


 そんな中、二人に近付く少女の姿があった。その人物は暗くボソッとした声でユエルに話し掛ける。

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