第53話
蒼殺害の事件解決と彼女に再会できる目的の為だけに転生協会にやって来た事を知ったユエルは、今回の異世界運用が終わった後も司が協会に残りたい気持ちがある事を喜んでいた。
彼女にとっての居場所とも言えるこの場所を気に入ってくれたと思ったからだ。
「……。でも一応嘘は言ってないですよ。実際に協会に来て、楽しそうな所だとは思いましたしね」
「ああ。お前のその言葉に嘘はねぇだろうよ。けど『真の目的』は別にある訳だし、それを知らずに心の底から喜んで、お前の為に全力で協力したいってやる気にもなって……」
「……」
司はカムリィの発言に何も言い返せなかった。全て事実だし感じていた事だったからだ。
ここまでチクチクと言ってきたカムリィだったが、どうやら司をいじめたい訳では無いようでバツが悪そうな顔になった直後に話題を変えてきた。
「……っと。わりぃな。今する話じゃなかった。別にお前を精神的に追いつめたい訳じゃねぇって。ただ何つーか、俺らってどこ行っても嘘つきな人間になっちまうんだなって」
「……」
カムリィの言った事は痛い程に実感してきた。この感覚に慣れないとプロとして失格なのだろうと自分に言い聞かせてきた司だが、ユエルのように純粋な気持ちを自分に向けてくれる人を目の前にすると、その度に気持ちが揺らぐ。
全部話したらどれ程楽かと考えた数は数え切れない。
「あーやめやめ。こんな話しても暗くなるだけだしな。そう言えば二週間後だったか? お前の異世界創生会議は。ネタバレしとくと、お前の初異世界運用の総責任者は俺だ。気負う必要はねぇから、せっかくの初ラスボスを楽しめよ」
そう言ったカムリィは司の肩に手をポンと置いてからその場を去って行った。
「はい。……よろしくお願いします」
司の声には覇気が無かった。心ここにあらずと言った感じだ。
「 (終わったら彼女には全て話そうかと思ったけど、やっぱりマズいよな……) 」
モヤモヤ感を拭いされないまま、司もまた帰路に就く。結局司はユエルに対してどうすべきかの結論を出せないまま、異世界創生会議までの二週間を過ごす事になるのだった。
異世界創生会議は一つの異世界運用につき何回かに分けて行う決まりとなっている。一回目~三回目は一営業日毎に行われるが、以降は二営業日毎に行われる。
一回目では世界観 (その世界の設定) や主人公役に体験させるメインストーリーの大まかな内容を決定。
二回目ではストーリー内において登場させる敵や仲間、その登場タイミングを決定。
三回目ではその世界内の建造物や景観を決定。
四日目では一回目~三回目の会議内容を踏まえて創生された人工異世界へ、実際に関係者が視察に赴き協会に帰還後に意見交換を行う。
以降は四回目の内容を繰り返しだ。四回目で出た改善案を異世界に反映し、問題が無ければ最終調整と確認をして本番といった具合である。ここで改善案が再度発生したら六回目、七回目と続いていく。




