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第49話

 死んだ人間が人工異世界で第二の人生を歩むかどうかは生前の本人による意思表示が必要になる。この意思表示による本人の決定は絶対的な効力を持ち、何よりも尊重される。


 協会が創生した異世界へ転生される主人公は、生前の意思表示で『死後は異世界で生活をする』という決定をしている人に限られるのだ。


 死後すぐに異世界転生できる場合もあるが手続きや準備、順番待ちの関係で数年待つ必要がある場合も発生する。


 こればかりは異世界転生を望む死者がその時に何人居て、それに対応する異世界が何個あり、ラスボスとして動ける人が何人居るか等、その時の状況次第で変わるのだ。


 転生時期が遅かろうと早かろうと、ある程度順番が近付いて来た時に家族に転生協会から連絡がいく流れとなっている。


 司の妹は少なくとも二年前には亡くなっている為、もしも彼女が異世界転生をする意思表示をしていて、かつ順番待ちもしていた場合、時期的にはそろそろと言えるだろう。


 ここまで情報が揃えば答えは出ているようなものだ。


「……! 司くん、もしかして……」


 司はユエルが察した事に気付き、こくりと頷く。


「この間、僕に連絡が来ました。蒼の異世界転生時期がある程度決まったって。ただ、今動けるラスボス役の数が不足していて、もしかしたらもう少し待つ必要があるかも知れないとも言われましたね。それを聞いて思いました。僕が蒼の異世界転生先のラスボスになれば良いって。蒼にも会えますし僕にとってデメリットは何一つありません。何より蒼にもう一度会いたいんです。それが叶うなら、牢政の肩書きを捨てるくらい安いもんですよ」


「司くん……」


 司の志望動機は私情を挟んだものであるが、ユエルは否定する気にはなれなかった。彼の蒼に会いたい気持ちに対して、今の自分があれこれ意見する資格など無いのだから。


「有り難い事に事情と気持ちを知ってくれた転生協会の人が便宜を図ってくれて、僕の初めての異世界運用の主人公は蒼にしてくれるそうです。本当に感謝しかありません」


「なるほど。でもそれって確か禁止のはずじゃ……」


 異世界へ転生する死者たちは記憶が消去されるといったご都合主義は起こらない。つまり生前の記憶を所持したまま向こうに行く事になるのだ。


 それに加え、ラスボス役以外の敵や味方、その他登場する主要キャラクターやモブは全員協会によって創造されたAIのような存在となる。そしてそれは当然世間も周知の事実として認識している。


 だからこそ異世界転生をする上で意思決定が必要になるのだ。


 最初から『全てが造り物の世界だと分かってなお、その世界を満喫したいと思うか』という事だ。


 異世界転生を望む者は、それを承知の上で異世界ライフを送る。自分が主人公の超絶リアルなRPGを遊んでいる感覚に近いのだろう。例え台本上の物語だとしても協会が用意した物語の元で異世界ライフを送りたいと思う人が居てもおかしくはない。


 それに加えて主人公は『この世界において、誰が現実世界の人間でラスボス役を担っているのか』を把握していないのだ。あまりにもリアルな世界という事も相まってそこを気にする者は少ない。


 だが今回は例外だ。もしも司と対面したら蒼は『誰が本物の人間か=誰がラスボス役なのか』に関する実質ネタバレを食らう事になってしまう。そんな展開を避ける為に転生協会は知人がラスボス役になる事を禁止としている訳だ。


「先輩のその疑問を解消する為には、まず蒼が何で死んだのかを話す必要があります」


「蒼ちゃんが亡くなった理由ですか?」


「僕が牢政に入る一年前……つまり今から三年前です。蒼は、殺されました」


「……ッ!」


 ショッキング過ぎる原因を聞き、ユエルは驚きで声を漏らす。事故や病気だと思っていたせいか、その衝撃は相当なものだった。


「今でも覚えています。実は、蒼は僕に内緒で転生協会を受けていたそうです。僕を驚かせる為に。結果は嬉しい事にラスボス役として合格したみたいで、試験の時に同性の友達もできたってはしゃいでいました。ですが少し日が経ってから蒼は……」


「そんな……蒼ちゃんを殺した犯人は、捕まったんですか?」

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