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第48話

「二人で公園で遊んでいた時の事でした。その時、近くに來冥者じゃない奴らが居たんです。多分八つか九つくらい歳上の人だったと思います。運が悪い事にそいつら……來冥者の事を嫌っている人たちだったようで、笑いながら來冥者の悪口を言ってました」


 そこまで聞いたユエルは何となく想像がついた。より優れた來冥力を持って生まれた兄が大好きな妹と、來冥者が嫌いな勢力が対面したらどうなるか。精神が未熟な人であった場合、彼らは相手が子供であっても遠慮なく暴言を吐く事だろう。


「そいつら結構ガラが悪くて、しかも周囲に聞こえるレベルの声量で來冥者の事をめちゃくちゃ叩いて……蒼が思いっ切り反応したんですよね。『お兄ちゃんの事悪く言うな!』って……」


「気持ちは分かります。大好きなお兄ちゃんの事悪く言われたら腹も立ちますよ」


 同調では無くユエルは本気でその人たちに怒りを感じたようだ。自分の大切な人を傷付けられたと知れば自然と怒りも湧いてくるだろう。


 だがそんなのは序の口だったようで、司は更に気分が悪くなる展開を話した。


「それで口論になっちゃって、僕が制止に入ったら急にニヤニヤし始めて……そいつら、僕に蹴りを入れてきたんです。どうやら過激派だったようで、僕が弱い子どもだったのをいい事に、結構殴られて……蒼は泣いちゃうし地獄でしたよ」


 さすがに度が過ぎている蛮行だ。子ども相手に『來冥者だから』という理由だけで暴力を振るうのはどうかしているとしか思えない。


「酷い……それ、どうやって解決したんですか?」


 気持ちが沈み込んだのかユエルの声は怒気よりも悲しみの感情が勝っていた。


「牢政に入る事を夢見ている少年が僕たちを救ってくれたんですよ。通報をチラつかせたら舌打ちして去って行きました」


 ホッと胸を撫で下ろしたユエルは、司たちを助けた少年について気になってしまった。


「安心しました……。ちなみにその少年っていうのは……?」


「それが空久良ですよ」


「わぁ……!」


 運命的な出会いだと思ったユエルは少しだけ気持ちが晴れたようだ。


 まだ牢政を目指していた頃の空久良と子どもの時に出会っていた司は、牢政に入って再会したのだろう。そう考えるとドラマチックである。


「牢政で彼と再会した時は驚きましたよ。歳は離れてましたけど一応過去に知り合った事もあって、すぐに意気投合して仲良くなりました。プライベートでは俺に敬語とか使わなくて良いとも言われましたね」


「いい話ですね。蒼ちゃんも喜んだんじゃないですか?」


 何気なくした質問だったが、司は伏せ目になりすぐに答えを返す事は無かった。ユエルは不自然に思いながらも司の返答を待つ。


 やがて司はその重い口を開いた。


「僕が牢政に入ったのは今から二年前だったんですけど、その時に蒼はもう……」


「あ……! ご、ごめんなさい」


「気にしなくても良いですよ。どのみち僕が転生協会に来た理由に繋げる為には、話さなければいけない事ですし」


 司にそう言われてユエルは思い出す。牢政を捨てて転生協会を選択した理由は妹に会う為と彼は話した。ここまで彼の話を聞いたユエルはこの時、もしかして、と一つの考えに至る。

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