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第47話

 ユエルは司に背を見せて歩き始めた。司も彼女の後ろを付いて歩き、歩調を合わせる。


「自分の思い描いた世界を創って、そこでラスボスとして主人公たちと触れ合うなんて最高にワクワクすると思ったからです。異世界での主役は主人公になっちゃいますけど、ラスボスだって負けないくらい重要なポジションだと思うんです。あの世界は……私みたいな人間が輝ける唯一の居場所なんです。周りの人がどう思っても」


 転生協会で働く來冥者たちは非來冥者たちから嫉妬の目で見られる事も多い。そしてそんな人たちにとって來冥者とは『現実世界では意味の無い力で粋がっている可哀想な人間』として映っている。


 ユエルは彼らが思う典型的なタイプの人間として映っているのだろう。


 有名であればある程、称賛の声だけでなく否定的な声も目立つようになるのはどの世界でも共通であり、転生協会所属の來冥者をそういう風に思っている人が居る事は周知の事実だ。


 だがユエルはそんな人たちの声を全く気にしていないように見える。彼女は自分の事を気弱な人間だと思っているかも知れないが、そんな声を気にせず自分の芯を貫き通せる強い女の子なのかも知れない。


「……素敵ですね」


「ありがとうございます! ……あ、それにしても不公平じゃないですか? 司くんは話してくれないのに私だけが話すなんて」


 司から聞きたい話の中には彼が転生協会を志望した動機も含まれている。いくら巨大な機関と言えど世間的には五大機関よりは下だ。わざわざ牢政を捨ててまでこの業界にやって来たからには相応の理由があるに決まっている。


「……」


 ユエルに痛い所を突かれたのか司は黙ってしまった。そんな司の気持ちを雰囲気で感じ取ったユエルはくるりと後ろを向いて微笑む。


「冗談ですよ。そんな本気で受け止めないでくだ……」


「諸事情で全部は話せませんけど……僕は妹に会う為に転生協会に来ました」


「え……?」


 まるで時間が停止したかのような感覚を覚えた。


 この時自分が何に対して驚きの声を漏らしたのか、ユエル自身も分かっていなかった。司が話してくれた事自体なのか、それとも話してくれた内容なのか。


 無意識に司の言葉に対して反応してしまったのだ。


 二人は立ち止まり、数秒程沈黙状態で見つめ合った。やがて司は止まった時間が動き出したかのように歩き出し、ユエルもつられて二人は横に並んで歩みを進める。


「僕には妹が居たんです。名前は蒼。ショートカットで身長は僕より少し低いかな? 明るい性格で同性異性問わず人気者でした」


 居るでは無く居たと司は口にした。過去形の表現を使用した事に気付いたユエルは訊いて良い事か悩んだ末に申し訳無さそうに質問する。


「妹が『居た』って事は、もしかして蒼ちゃんは……その……」


「はい。もうこの世には居ません」


「……あ……」


 予想通りであった。


 やはりストレートに訊くのはまずかったかと後悔しそうだったが、その時間がユエルに与えられる前に司は更に妹について語る。


「蒼も來冥者ではあったんですけど僕の方が來冥力は上で、そのせいか凄い凄いって昔から口癖のように言われました。でも、それのせいで來冥者を嫌う人とのトラブルに巻き込まれた事もあったんです」


「……。どんな……トラブルですか?」


 ユエルの質問に司は一拍置いてから当時の事を思い出しながら口にした。その内容こそが先程司がフラッシュバックした記憶であった。

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