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第44話

 空気が緊張したものへと変わるが、そんな張り詰めた状況は耐え切れなくなったかのように吹き出した司によって打ち砕かれた。


「……ふふ、冗談ですよ。どうです、今の。なかなかに『え?』って思わせるだけの演技力あったでしょう? これでもラスボス役で協会に入りましたからね」


「な……! 君って奴は……」


 琴葉はドッキリを受けた人間がするように笑い、嘘を見抜けなかった事に若干の悔しさを覚えた。


「 (本当に冗談なのかな? まぁでもリバーシの人だったらそもそも疑われないように経歴を誤魔化すだろうし……それに司くん……意外と人をからかうの好きだしなぁ。シンプルに琴葉ちゃんの反応楽しみたかっただけかも) 」


「まったく……。本題をどこまで話したか忘れたよ」


 司に騙された琴葉はどこか恥ずかしくて、無理やりにでも話題を元に戻そうとした。


「確か僕の知り合いを名乗る奴が僕の調査を探偵署に依頼しに来たって所までですね。ちなみにその依頼主、名前は何て言うんですか?」


「ああ、確かに。少し気になるな」


 司は何気ない質問をしたつもりだった。だがマキナの口から出た名前はあまりにも予想外なものだった。


「えっとね~……空久良さん? って言ってたかな、確か。下の名前は言わなかったよ」


 その名前を聞いた瞬間に司とユエルの間に衝撃が走った。


「え……か、空久良さんって確か牢政の……。司くんのお友達でしたよね?」


「はい。間違いないです」


 空久良の事を知っている二人は驚きを隠せない。彼ならばその時間、例の立てこもり事件の現場に居ただろう。同時刻に探偵署に姿を見せる事は不可能だ。


 それだけでなく空久良であれば司の事をよく知っている。わざわざ探偵署に調査依頼を出すのはおかしな話だ。


「ん? 何だ。その反応からするとどうやら空久良さんとかいう人が司くんの知り合いっていうのは本当なのか。何をそんなに驚いているのかは分からないけど」


「彼はあの日、牢政の仕事で例の立てこもり事件にあたっていたんです。探偵署に行けるとは思えないんですよね」


「なるほど。それが確かなら偽名で利用されたとかか?」


「それも有り得ますけど、多分弟だと思いますよ」


 意外にもあっさりと謎は解決しそうでどこか拍子抜けしたような空気になった。


「え、空久良さんって弟が居たんですか?」


「はい。確か名前は……あー、一回会っただけだからもう覚えてないですね」


「まぁその人のフルネームはともかく、探偵署に来たのはその空久良さんの弟で間違いなさそうだね~。ん~それにしてもどうしよっかな、調査報告」


 マキナはパスタをフォークでずっとくるくるさせながら頭を悩ます。


 空久良の弟であるならば司が元牢政である事は知っていそうではあるし、仮に知っていなくとも伝えられる情報はそれだけだ。しかもその情報すらも司から言うなと言われればそれまでである。

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