第42話
「そもそもの話にはなるんだけどさ。私、もともと司くんを探していたんだよね。ある男の人に写真を見せられて、『協会内にこの男が居るはずだ。見つけたら接触してその男について詳しく調べて欲しい』って言われたんだ!」
「は? 写真? 僕の?」
「そそ」
司はシンプルに恐怖を感じた。司は誰かと一緒に写真を撮ったり撮られたりする事は滅多に無い。せいぜい空久良や家族との写真くらいだ。
そんな超が付く程の激レアな司の写真を当たり前のようにその男性が所持している事に不気味さを覚えたのだ。
確かに司は謎に包まれているせいかユエルのように知りたい欲が強まってしまう人が現れても不思議では無い。だが自分の知らない謎の男が何故か自分の写真を持っていて探りを入れている事は不快感の極みだ。
「何だそれ……ちなみに探偵署で依頼を受けたって感じかい?」
「うん! 立てこもり事件があった日のお昼ちょっと前にね!」
琴葉がマキナたちを探していたキッカケとも言える、探偵署の人間同士の会話では確かに司の事を知っているかのような内容になっていた。恐らくその依頼繋がりでマキナが司という男を調べているという事だけは把握していたのだろう。
「少し恐いな。……あ! もしかしてあれか? 司くんのストーカー的な? 司くん綺麗な顔してるもんな」
どちらかと言えば司は可愛い寄りの男性だ。女性はもちろんそういう趣味の男性にも好かれてしまう傾向があるのかも知れない。
「有り得るかも! でも依頼人、男だったからな~。ストーカーならせめて美少女の方が司くん的にも嬉しいんじゃない? 例えばほら、私みたいなさ」
「あーはいはい、そうだねー」
もはやツッコむ気にもなれない司は棒読みで適当に返す。
「人間ってここまで声に感情乗せれないんだね。逆に驚いたよ」
「うーん……正直ストーカーだったら異性だろうと同性だろうと私は同じくらい怖いですけどね」
來冥者と言っても來冥力が使用できなければただの人だ。アルカナ・ヘヴンにおいては普通の人間である事に変わりは無く、ストーカーを怖がるのは至極当然の事である。
「ところで肝心要のその男は誰なの? 僕の知り合いなのかな」
「知り合いって言ってたよ。引き受けた理由としては報酬が良かったからかな」
「知り合いねぇ」
「でね? ユエルちゃんの質問の答えに戻るけど、高い所から全体を見たかったからかな。あの辺は協会の人間が多いからね。高所から双眼鏡で一気に見渡した方が司くんを早く見つけられるんじゃないかなって思ったの!」
「な、なるほどです。確かに地上で探すよりもそっちの方が早そうではありますね」
「まぁ取り敢えず、そういう経緯で僕を見つけた訳だったんだね。それは納得したよ」
言葉では表せないが何かが気になっていた司はスッキリした気がした。
何故マキナがそもそも司に目を付けたのかという点。
自称司の知り合いを名乗る謎の男性からの依頼により司を探していたマキナは、協会の人間が多く歩いている場所を高所から見ればより早く見つけられると考え、ビルの屋上で人探しを始めた。
その際に歩いていた司を幸運にも発見して、写真と一致する男であると気付いたのだ。更にこれまでただの調査対象でしかなかった司に興味を持ち、今に至る訳だ。




