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第4話

「嫌だ! 行きたくない! 行きたくないです!」


 部屋を出た後、ドアノブを片手でギュッと掴み必死の抵抗を見せるユエルと、それでも連れて行こうとする琴葉の力比べ対決が始まった。


 その様子はまるで病院に行きたくない子どもと連れて行こうとする母親のやり取りだ。


「だ、大体! 私みたいな人見知りが初対面の……それも歳上の異性の方の教育係なんて務まると思ってるんですか!」


「何を仰いますか、ユエルさん。君がどんな感じで指導するのか想像するだけでニヤニヤが止まらない。ま、頑張ってくれたまえよ、『先輩』」


「う~~~~~! もう! 分かりました、分かりましたよ!」

 

 どんなに嫌がってもこれは上の決定に違いなくユエルに拒否権など無い。本人に相談せず裏で話がどんどん進んでいっていた事には文句を言いたいが、今それを嘆いても仕方が無いと言うものだ。

 

 少し冷静になったのかそれとも諦めが付いたのか、ユエルはようやくドアノブを離して琴葉と一緒に目的地へと向かう。


「それで……男の子って事でしたけど、私の後輩君はどんな方なんですか?」

 

 道中、やはり気になるのはそこなのか既にその彼に会っていそうな感じの琴葉に、後輩の人物像について質問する。


「んっと……結構可愛い系だったぞ。年齢は16歳……ユエルより二つ上だな。華奢な体に可愛い笑顔、おまけに礼儀正しいし、印象は良かったな」


「取り敢えず恐い系の男性じゃなくて安心しました」


「ははは、それは無いから安心して良いと思うぞ。ただ線が細くてちょーっと男性としてのたくましさが足りないかなーとは思ったけど」


「來冥力を解放した時は筋骨隆々の巨人になるかもですよ」

 

 バトル時に姿が変わると言うのもラスボスのお約束とも言える要素だ。それは転生協会に所属する彼女たちも例外では無い。普段は普通の人間の姿をしているが來冥力を解放すると一気にボス感が増す容姿へと変貌する。

 

 ユエルも今は少女の見た目をしているが來冥力を解放すると羽衣の天女の様になり、纏う雰囲気も別人となる。

 

 だがいつでもどこでも來冥力を解放できる訳では無い。來冥力を使うには条件が整った環境下で無い限り使用はできない。転生した主人公が暮らす異世界で使用できるのは当たり前だが、今ユエルたちが居るアルカナ・ヘヴンはその環境下に無いのだ。

 

 つまり來冥者は残念な事にこの世界においては來冥力を使用できないと言える。

 

 琴葉の話を聞く限り、青年と言うよりは少年の印象を受ける彼の來冥者としての姿はどんな形態になるのか、少し楽しみではあった。


「ああ、それなんだけど……」


「はい?」


 何故か急に怪訝な表情になった琴葉は顎に手を当てて不可思議な現象に遭遇したかのような感じで続きを話した。


「彼、能力や経歴を明かしてくれなかったんだ」


「能力や経歴を明かしてくれなかった……?」


 ユエルは不可思議な状況に思わずオウム返しをした。

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