第33話
まだまだ遊び足りない様子を見せるマキナだが、ユエルとの戦いで少しも体力が消耗していないなど有り得ない。高速で動き回り、召喚生物に地面に叩き付けられ、更には自身の大技を全力で放ち、ユエルのフルパワーと正面から押し合ったのだ。
今は興奮状態で実感が無いかも知れないが、体は確実に疲弊しているに決まっている。そう思った司はこんな提案をした。
「ねぇマキナ。一つ約束するよ。ゲームの性質上、僕は君が持っている四つの破片を奪いには向かうけど君にダメージを与えるような攻撃はしないって」
「ほえ?」
唐突な提案にマキナは気の抜けた返事をする。
彼の言いたい事は、先程のマキナとユエルの戦いのようにアグレッシブな行為は一切しないという事だ。無理な強奪はせず、危害は加えない。これは司が与える一種のハンデなのだろう。これくらいしないとフェアでは無い。
ゲームに興味が無いのは間違いないが、やるからにはなるべく対等な状況を作った上で開始したいと思っているのだ。
「もしかして私が連戦だからそういう事言ってくれるの? 司くん、やっさし~! でも今はその気遣いしなくても良いよ! ハンデがある相手に勝っても、別に嬉しくな……」
「僕も疲労困憊の相手に勝っても嬉しくないよ。これくらいのハンデ付けさせてよ」
こうなれば司とマキナのどちらかが折れないと話が先に進まない。ここはわがままに付き合ってもらっている自分が司の意思を尊重しようと思い、マキナは首を縦に振った。
「もう~真面目なんだから~。分かったよ」
「了承してくれて助かるよ。取り敢えずさっさと勝たせてもらって、早く僕らの世界に帰りたいよ」
「お~? 随分な自信だね。言っておくけど、司くんの『攻撃できない』って結構なハンデだと思うよ? 提案してきたのはそっちなんだから、私は遠慮なく攻撃しまくって奪いに来れるチャンスなんか作らせないからねっ!」
「はいはいはい」
マキナの発言にも司は動じる気配が無く、余裕の態度が崩れる事は無かった。
ハッタリの可能性もあるが、根拠のある自信に基づく態度である場合も当然ながら存在している。何せ司はあまりにも謎に包まれており、その判断が極めて困難だ。
「 (この自信はどこから来てるの? まさかやっぱり司くんって結構な実力者だったりするのかな? 結構彼の事は調べたけどそれらしい情報は全く掴めなかったし……) 」
「僕の事をいくら見つめても僕に関する手掛かりは得られないよ。ユエル先輩の前では多分、いかにも僕の事を知り尽くしているかのように振る舞ったんだろうけどね」
「……! (ばれてる~ッ!) お、お見通しなんだね。だって仕方ないじゃん! そうでもしないとユエルちゃんの闘志に火が点かないと思ったんだもん!」
思い返せばマキナはユエルに対して司の言及は避けていた。ユエル視点からすればマキナとのゲームに挑戦する理由作りとして、敢えて情報を言わなかったように映るだろう。だが実際のところマキナはシンプルに司について何も知らないから、情報を言えなかったに過ぎない。
司とユエルを別々にした理由を問われた時に気を遣ったと発言したが、あれも『ここまで秘密にしているという事は他人に知られたくないのだろう』と勝手に予想して発言しただけなのだ。




