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第30話

「まったく……この辺の地形めちゃくちゃにしたら、上の人に怒られるのは私たちなんですからね!」


「え? そうなの?」


「当たり前です! そんな事も知らずにこんな大技繰り出したんですか!」


 この世界は全來冥者共用の場所だ。もし『モデルNという世界がある』と存在の認知さえされていれば、アルカナ・ヘヴン以外の世界の人間も訪れる事だろう。


 実技訓練を兼ねて多少の破壊が生じるのは問題無いが、特定の地域全域を丸ごと消し飛ばすような過度の消滅はやり過ぎとなり、大目玉を食らってしまう。


 シンプルにそれは嫌なユエルは一切の迷いなく召喚生物に向かって全速で移動し、頭部へと跨る。そして斜め上を見上げ、落下してくる大剣に狙いを定めた。


「 (『新星』と『召喚』を組み合わせた攻撃だったら……きっと……!) 」


 ユエルはその小さな右拳を爪が食い込む程にギュッと握り締めた後に、体を右側に捻りながら腕を引いた。そのユエルの動きに合わせて召喚生物も同様のポーズになり、今この瞬間はリンクしている事が窺える。


「はああああああ!」


 丁度良い位置まで落ちて来た事を確認したユエルは、気合いを入れながら勢いよく殴り飛ばした。


 『新星』のバフ効果を火力に全振りし、それを伝達させた『召喚』の拳が大剣と正面からぶつかり合う。単純な物理攻撃で見たら間違いなくユエルが放てる最大級の一撃だ。瞬間火力だけで見たら來冥者の中でも頭一つ抜けているだろう。


 普段の異世界運用時はいわゆる負けイベで主人公たちを強制敗北に追い込む時に使用している。当然その時は威力も大分落としているので火力は今の十分の一以下だが。


「「――ッ!」」


 両者とも叫び声を上げながら気分を高揚させ、相手をねじ伏せようとする。


 火力は完全に互角なのか、十秒は過ぎたのに均衡が傾く事は無かった。お互いの声が耳に入らないレベルの轟音が辺りに鳴り響き、來冥者の大技同士が真っ向から激突した時の破壊力を物語っていた。


「 (ちょっとで良い……あとちょっとバフがあれば……!) 」


 今の状況が完全に釣り合ったものである場合、ほんの少しでもどちらかの火力が上昇すれば必然的に優勢になり、そのまま押し切れる。


 ユエルにはその確信があり、『新星』のバフ量の限界値に悔しさを感じていた。


「ん……?」


 もはや我慢比べの領域に到達していた時の事だった。


 マキナは吹き荒れる暴風と激しい閃光の中、召喚生物に近付く人影を見た。その人物は優しく召喚生物の左腕に触れ、即離れる。


 ユエルはけたたましい轟音に加えて大剣を押し切る事に集中していて、人影には気付いていない。


「……!」


 そんな状況下でもユエルは異変に気付いた。原因は分からない。でも確実に召喚生物の火力が上昇していると。


「 (気のせい? いや、気のせいじゃない。確実に威力が増してる……よく分からないけど、やるなら今しかない) 」

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