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第28話

 隕石の如く岩塊がマキナに迫る。このままマネキンの相手をしていれば岩塊の命中と共に地面に押し潰され、防御や回避をしようとすればマネキンの重い一撃を喰らう事になるだろう。


 そんな究極の二択を迫られている中、彼女はニィッと笑った。


「ユエルちゃん……実を言うと私、火力には自信無くて単純な力のぶつかり合いだったら多分負けちゃうんだよね。でもその分……」


 岩塊が後少しでマキナのに命中しそうな時だった。


「スピードには本当に自信あるんだ!」


 マキナの姿が一瞬にして消え、瞬時にユエルの元へとやって来る。そして剣によるフルスイングをユエルの腹部にヒットさせる。


「……ッ!」


 時を同じくして先程までマキナが居た場所では岩塊とマネキンの右拳が激突し、岩塊は粉々になって地面に散らばる。それだけでどれ程の威力があったのか想像に難くない。


 綺麗に決まった。ユエルへの攻撃が成功した時、マキナはそう思った。


 しかし当のユエルは、少々苦しそうな顔をしてはいるが数歩後退るだけで済んでいた。そして息切れを挟みつつもマキナの瞳をジッと見ながら話し始める。


「……私の能力の性質は五つあります。『吸収』・『召喚』・『爆発』・『治癒』・『新星』です」


「最初の岩吸収とさっきのマネキン召喚が、その内の二つだね」


「はい、そしてこれが『新星』です」


 ユエルは右手で彼女の剣を握り、腹部から離す。


 明らかに纏う雰囲気が変わったユエルを目の当たりにし、警戒心が働いたのかマキナはバックステップをして彼女と距離を置く。


 いくらマキナが攻撃力に自信が無いとは言え、あの大打撃をまともに喰らって平気な訳は無いのだ。となれば考えられる可能性は一つしかない。


「……。察するに『新星』は身体能力強化って所かな?」


「本当は『吸引』と『召喚』だけで決めようと思いましたけど、どうやら甘かったみたいですね。今からは『新星』も使用して、あなたに真正面から挑みます」


 先手必勝とでも言いたげにユエルは地を蹴り上げてマキナの背後にまわる。『新星』を使用する前では実現できなかったスピードだ。


 だがそのステータスに特化したマキナからすれば、余裕で反応できるレベルであった。ユエルの渾身の回転蹴りを難なくいなし、剣を片手で持ち替えた後に彼女の胸に掌底を放つ。


 息が止まる程の衝撃が体全体に伝わり、ユエルは後方へと吹き飛ばされた。


 ユエルが召喚したマネキンの近くに浮遊していた岩石の一つへと背中を打ち付け、そのまま垂直落下していく。


 このチャンスを逃すまいとマキナは剣を握り締める力を強め、彼女の元まで飛翔した。斬撃が届く距離まで詰め、豪快な兜割りを決め込もうとする。


 だが失念していたのか、この近くにはまだ例の召喚生物が居るのだ。ユエルにピンチが訪れるのであれば全力で守り、反撃にも出るだろう。


「あ。まず……」


 気付いた時にはマキナの頭部に召喚生物の巨大な手の平が命中し、押し潰すように地面に勢いよく叩き付けられた。爆発が発生したと勘違いしてしまうレベルの爆音と振動が一帯に響き渡る。

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