第25話
「実は上の方でユエルちゃんの動きずっと見てたんだ。だから私知ってるよ。ユエルちゃんが今破片を四つ持ってるの」
「……!」
ほんの少しだけ友達同士のような空気が流れたのも束の間、マキナの発言によって瞬く間にピリッとした空気に逆戻りとなる。
マキナが今破片を持っていようといまいと、ユエルから強奪しに来たのだ。今まで上空で傍観者になっていた彼女がいきなり姿を現した理由はそれしかない。
そう結論付けたユエルはマキナの一挙手一投足に気を配る。もしも不意を突いて攻撃を仕掛けても即座に対応できるように全神経を彼女の動作観察に集中させた。
「それでね、ラス一なんだけどさ、実はここにあるんだ」
マキナは左手を前に出してから、ここにやって来る前にもしたようにコイントスの如く最後の鏡の破片をピンと打ち上げた。
「 (最後の一つ……マキナちゃんが持ってたんだ) 」
マキナに対して意識を向けていたユエルだったが、真上に向かって垂直上昇していく破片の方にこの時意識を持っていかれてしまった。
これはユエルがずっとマキナの動きに対して警戒していた為に発生した副作用のようなものかも知れない。動きに対して敏感になり過ぎてしまい、思わずマキナから発生する事象全てに反応してしまったのだ。
破片ではなくマキナだけに注意していなければならなかったと後悔するのは、その僅か一秒後、自身の体に衝撃が広がった瞬間だった。
「ぅぐっ!」
何が起きたのか理解したのは斜め後ろにある岩石の上に自分が落下してからだった。仰向け状態でマキナに押し倒されているような構図になり、先程彼女から攻撃を受けたのだと認識した。
ユエルの意識がマキナから破片へと逸れたその一瞬を、マキナは見逃さなかったのだ。
「ふふ。そうだよね、ユエルちゃん。音がしたら音源の方を向いちゃうし、物が動いたらそれに従って視線が対象物を追っちゃうよね」
成功した事が素直に嬉しいのか、マキナはゴーグル装着状態でも分かるレベルのドヤ顔で話し始める。この隙にどうこの窮地を脱するか必死に考えるユエルだったが、焦燥感からか全く良いアイディアが浮かばなかった。
「一つだけ自力で探して、後の四つは相手から奪う。これだけでこのゲームは楽に勝てるんだよね」
「なるほど。だからさっきまで傍観者だった訳ですか」
ユエルのように探知性能に優れた能力がある者に多く集めてもらい、収集後は機動性と攻撃性能に長けたマキナが奪う。確かに理に適ってはいる。マキナには初めから破片を集める為に飛び回る必要など無かった訳だ。
自分の能力があまりにもこのゲームとの相性が良く、ユエルは何の疑いも無く使用したが、もしかしたらそれを見越してマキナはこういうゲームを開始したのかも知れない。
早い話、ユエルはマキナの計画通りに動かされていたのだ。




