第21話
「それは司くんが來冥者としての姿を明かしたくないからっていうのと関係がありますか?」
「ふふふ。どうだろ~ね?」
正解とは言ってくれなかったが、彼女のその態度がもう答えだった。
この時ユエルは悲しい気持ちになった。
「 (今日この日まで司くんに付きっきりだったけど、思えば私って彼について何も知らないんだなぁ。彼女の方が多分司くんについて色々と把握してそう……。この一週間、私何してたんだろう……) 」
しょんぼりとしたユエルを見たマキナは意地の悪い顔になる。
「あ! 良い事思い付いた。私とのゲームに勝ったら、司くんについて知っている事全部教えちゃおっかな~」
「……!」
ピクリとユエルが反応する。
「見た所ユエルちゃん、あまりにも詮索入れるのは良くないとか考え過ぎて、彼の事全然知らなそうじゃん! どう? 私と遊んでくれる気になったかな~?」
「……。良いでしょう」
乗せられたのは重々承知していた。それでもユエルは知りたい欲が勝ってしまった。
どのみち彼女に付き合わなければこの世界から無事に脱出できそうにない。それならばここは大人しくマキナの相手をしてあげるしかない。
覚悟を決めたユエルは目を閉じてすぅと息を吸って吐く。瞬間、ユエルの見た目が変化した。
ユエルが司と知り合う前に担当していた人工異世界でも見せた、彼女の來冥者としての形態だ。着ている漢服の袖やスカート部分が風で靡く。
「うんうん。その気になってくれて嬉しいよ。それじゃあ私の事楽しませてよね!」
マキナもスイッチをオンにしたのだろう。ユエルに対抗するように同じく來冥力を完全に解放し、來冥者へと変化する。
銀翼の数が二枚から右翼三枚・左翼三枚の計六枚へと変わり、頭部には三日月の形をした物体が天使の輪の如く浮かんでいた。
VRゴーグルのような物を装着し、顔は鼻から下しか露出していない状態に。
そして圧倒的な存在感を放っているのが彼女が両手で握り締めている巨大な剣だ。大きさは二メートル以上はあり、常人ならば持つ事すら不可能な程の重厚感がある。どんなものでも一刀両断できそうな迫力があり、見た目は非力な少女のマキナがあの武器を振り回す姿は想像できない。だが來冥者にそんな常識は通じない。來冥者である今ならば簡単にできてしまうのだろう。
「……」
ユエルは戦闘態勢となっているマキナを目の当たりにして、心臓の鼓動が早くなる。
演技でも訓練でも無い本気の來冥者との戦いは経験した事が無い。おまけにマキナがどんな戦いをするのか、彼女に関するデータは一切無い。
空久良と会った時は協力すると息巻いていたが、いざその状況に近い事が起こると緊張感に呑み込まれそうだった。




