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第18話

「う……ん……?」


 マキナの手鏡から発せられた光に包まれた後、司よりも先に目を覚ましたのはユエルだった。

 

 身体に伝わる感触から察するにどうやら今は横になっているようだ。ゆっくりと体を起こし、周囲を見渡す。


「ここは……?」


 そこは明らかに転生協会どころかメルトリアですらない異質な場所だった。


 隕石のような歪な形をした巨大な岩石が周囲に何個も浮遊しており、その内の一つの上にユエルは横たわっていた。


 空は暗く夜のようだ。


 下を覗き見ると荒れ果てた大地の中央に巨大な穴が開いており、その穴からは禍々しい紫の光が放たれていた。


「まさかここって……」


 実際に来た事は無い。だがそういう場所がある事を知識として知っているユエルは冷静に辺りの観察を更に続けた。


 およそ生命体が住んでいけそうにない独特な環境がどこまでも広がっており、彼女は確信する。


「モデルNの……危険区域……?」


 前述の通り異世界には転生する主人公用に用意された人工的な世界と、最初から存在していた天然物の世界の二つがある。


 ここはユエルの見立てではどうやら後者の方の世界となるモデルNのようだ。つまりここはもうアルカナ・ヘヴンですらない場所となる。


 普段からユエルも利用している世界となるが、まるで初見かのような反応を彼女が見せたのには理由があった。ユエルが先程口にした危険区域というワードだが、文字通りこの世界には近付く事が非推奨とされている区域がある。ここはその内の一つという事だ。


 絶対に近付くなという訳では無いが、何が起きてもそれは自己責任という事になっている。小心者のユエルは恐れてこの場所に訪れる事は無かったが、どんな景観なのかだけは把握していたおかげか、自分が今どこに居るのかを運良く知る事ができた。


「うぅぅ……まさかこんな形で危険区域に来る事になるなんて……。ああ、いやいや、それよりもまずは元の世界に帰らないと……」


 すぐにでも離れたいがモデルNからアルカナ・ヘヴンに帰るには、この世界に来るのと同じく専用の転移場所に行かないといけない。しかし周囲を見渡してもそれらしいものは見当たらなかった。


 ここは恐怖心を必死に殺して転移場所を探すしか無いようだ。そう思ったユエルだったが、ここである事に気付く。


「とにかく転移室を探しましょう、司くん! ……あ、あれ……? つ、司くん?」


 司が居ない。


 ここに飛ばされてしまった原因は恐らくマキナの仕業だ。彼女が持っていた手鏡。あれはわざわざ転移室 (モデルNとアルカナ・ヘヴンを行き来する為の場所) を利用せずともどこからでも自由に行き来が可能になる便利な代物だ。


 あの手鏡は転生協会の一部の人のみに配布されており、マキナが窃盗して入手した可能性を考慮しないのであれば、彼女が転生協会の人間である事の証拠となる。


 マキナが資料室の前で手鏡を使用した時、自分だけでなくマキナと司もここに飛ばされたはずだ。誰をどこに転移させるかは使用者の意思によって決定付けられるが、どうやら司とは離れ離れになったようである。

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