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第17話

 長い銀髪にスタイルの良い容姿、学生のような制服姿をした少女だった。年齢は恐らく司と同じくらいだろう。


 ユエルは資料室の扉の方へと向いていた為、反応が遅れたが司は彼女の登場に即気付き一気に鋭い目つきになる。


「え、えーっと……?」


 急に知らない女の子が話し掛けて来た事によりユエルは困惑する。鍵をかけようとしていた手が止まり、彼女の方を向いたまま固まる。


 そんなユエルの反応とは真逆に司には一切の動揺が見られない。


 至って冷静に彼女の顔を見据えたまま口を開いた。


「君は誰かな?」


「お! 突然現れた怪しい人にも全然動じないね! さすが~!」


 少女は可愛い人形を与えられた子どものように、はしゃぐ。


 色々な情報と疑問が錯綜してユエルは脳の処理が追い付かなかった。


 司の態度は有り得ないくらいに冷静なものだが、ユエルは違った。彼女は一体何者なのかといった考えが脳内をぐるぐると駆け巡り、言葉が出て来ない。


「あ! 私、マキナって言います! よろしくね~。司くんにユエルちゃん!」


「え? え? え? な、ななな何で私の名前……え?」


「……」


 会った事も見た事も無い謎の少女が自分の事を知っているのは、恐怖でしかない。今まで感じていた疑問が全て恐怖で消し飛んだ。


 ユエルは震えながらマキナに質問するが彼女はニコニコ笑顔のまま答えない。


 司はと言えば無言状態でマキナを見つめ続ける。


「そんなに怯えなくても良いよ~。それにしても君可愛いね~。ん~お人形さんみたい」


「ひぅ……!」


 マキナはゆっくりとユエルに近付きユエルを優しく抱き締めた。マキナの豊満な胸がユエルの顔に押し当てられ、男性から見たら羨ましい光景だろう。甘い匂いが鼻腔をくすぐり頭がオーバーヒートしてもおかしくはない。


 いつものユエルならば恥ずかしさでボンッと湯気が出る所だが、今は圧倒的に恐怖心が勝っていてそんな気持ちにはならなかった。


「マキナって言ったっけ? 彼女、恐がってるから放してくれない?」


「えー? でもぉ……」


「それとも」


 なかなか放さないマキナに対して司はいつもの優しい表情から一変。冷血で鋭利な目つきで静かに言う。


「どうしてもって言うなら僕が暇潰し相手にはなってあげるよ」


「……ふーん……」


 司の言葉に対してマキナはユエルを放して今度は司の側に近寄り、彼の周囲をウロウロと周り、興味深そうに全身を観察する。


 司の圧に屈して言う通りにしたと言うよりは、単純に興味の対象がユエルから司の方へと移行しただけのようだ。


「へー……ほーん……ふーん……ほほぉ」


 時折うんうんと唸りながら一人で楽しんでいる様子のマキナにイラッとしたのか、不機嫌な声色で司は彼女に言う。


「僕も一応男だから女性に興味を持ってもらえるのは素直に嬉しいけど、今は不快感しかないよ。君が今したい事があるなら僕は付き合ってあげる。要件を言いなよ」


 遠回しにユエルは巻き込むなとマキナに伝える。彼女はそんな司の発言の意図を理解したようでいたずらっ子のようにニヤッと笑う。


「ふふっ。話が早いね!」


 満足気な様子を見せたマキナは胸ポケットから手鏡を取り出した。


 その鏡の正体を知っている司とユエルは、彼女が転生協会の一員である事を把握する。


「意地悪したくなったからユエルちゃんも招待しま~す!」


「え? ちょっと待った、彼女を巻き込むのは……!」


 司の制止空しく眩い光が発生し、三人の姿が消えた。資料室の鍵をその場に残して。

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