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第15話

「行ってしまいましたね」


「空久良は優秀で実力のある來冥者です。心配する必要は無いでしょう」


「司くんがそこまで言うならそうなんでしょうね。分かりました」


 これ以上ここに居ても意味が無いと察した二人は店を離れる。


 ユエルは言葉とは裏腹に未だに少しだけ手伝った方が良いのでは、と言う気持ちを抱いていたが、すぐに切り替えねばと自分に言い聞かせる。


「動向は気になりますけど、私たちにも今日するべき事はありますし、気を取り直して別のお店に行きましょうか」


「はい! ……。……?」


 急に立ち止まった司は道路を隔てて左に聳え立っている高層ビルの屋上を見上げる。まるでそこに誰かが居て、その者を射抜くような目つきだ。


 彼の右側を歩いていたユエルは司のその鋭い目には気付けなかったが、彼がどこを見ているかは分かるので思わず彼と同じく見上げる。


 視力は悪くないがさすがに高層ビルの屋上の様子を把握できる程の超人視力は持ち合わせていない。結果何の情報も得られなかったユエルは我慢できずに司に尋ねた。


「司くん? どうしました?」


「いえ、何でも。さ、どこかお店に入りましょうか。この辺にも美味しいお店たくさんあるんですよ。あ、でも、せっかくだし先輩のおすすめとかあったら聞いてみたいですね」


 誤魔化された気がしたが、仮にそうだとしたらこれ以上しつこく追求しても彼から情報を得る事は難しそうだ。少なくともユエルの話術では無理である。


「私もそこまで詳しい訳では無いですけど、一応利用頻度の高いお店はあるんですよ。そこにしましょうか」


「良いですね!」


 今度こそ二人は立てこもり事件の事に関する話は一切せず、ユエルおすすめの飲食店に向かって歩みを進めた。


 どうやらユエルについて聞きたい事がたくさんあったと言っていた、司の発言に嘘は無かったようでユエルは司から質問ラッシュを受ける事になった。




 一方その頃。司とそれにつられたユエルが見上げていたビルの屋上では。


「あーびっくりしたぁ~。急にこっち見てくるんだもん。て言うか双眼鏡越しで目合ったし、少なくともあの男の子の方は絶対私の事気付いてたじゃん」


 一人の少女が双眼鏡を装備し、ビルの下を覗き込むように見ていた。後ろから軽く押されたらそのまま落下しそうな場所であり高所恐怖症には耐えがたい光景だろう。


「ふふっ……調査対象は見つけたけど、このまま終わらせるのはもったいないなぁ~!」


 そう言って少女は双眼鏡を外し、嬉しそうに微笑む。


 大きく膨らんだ胸に、160センチ後半程はあるであろう身長、スタイルの良さは恵まれた容姿と言って差し支えないだろう。腰まで伸びた綺麗な銀髪に、美しいブルーの瞳が特徴的で、その長く伸びた銀髪が風で靡く。


 紺色のブレザーとグレーのスカートに身を包んでおり、学生のような恰好をしていた。


「これは面白くなりそう~! あの男の子の事、もっと知りたいかも……! よ~し、まずは調査からだ~!」


 異様にテンションが高い少女はそのままビルの屋上を後にする。そのワクワクとした様子は無邪気に遊ぶ子どものようであった。

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