第13話
ユエルは驚きのあまりバッと顔を上げて司を見るが、彼は本当にただの雑談時のようになんてことない顔をしていた。
「はい。まぁ僕は『來冥者』だったので、牢政を辞めた後もラスボス役として転生協会に入れたって訳です」
「………………」
來冥力は、來冥者の中でもその優劣はハッキリと実力差として存在する。
司の実力がどの程度かは不明だが、取り敢えず最初はその來冥力を転生協会ではなく牢政で活かす道を選択したのだろう。結局辞めてしまって今は転生協会でその力を振るおうと考えている訳だが。
頭の中で情報を整理したユエルはここで一つの予想をする。彼を転生協会で採用した理由は彼のこの経歴にあったのではないかと。
琴葉曰く経歴書には特に記載なし、來冥者の能力も明かしてくれないとの事だったが、それでも上層部が彼を採った理由は元牢政のメンバーであるという経歴を知っていたからかも知れない。
元牢政だから何だと正直言いたくはなるが、今の所考えられそうなそれっぽい理由はもうそこしかない。
「……? ユエル先輩、どうかしましたか? 考え込んじゃって」
「あ、い、いえ、気にしないでください。と、取り敢えずお二人の関係性と司くんの一部経歴は把握しました。そろそろ本題に入りましょう」
司の事についてもっと知りたい欲が湧いたがユエルは何とか堪えた。今はそれよりもあの店で何が起こっているのかを知る事の方が優先的だからだ。
せっかくの昼休憩を無駄にしてしまっている感がしなくも無いが、ここで関係無いからと離れてはモヤモヤが残ってしまう。ここは事情を彼から聞いておいた方が良いだろう。
「そうですね。空久良、何が起こったか説明してくれる?」
司の質問に先程までヘラヘラしていた空久良の表情が引き締まる。元同僚に会ったおかげでオフの状態になっていたみたいだが、オンの状態に戻したようだ。
「状況はシンプルだ。あの店で立てこもり事件が発生した。普通であればこの国の牢政支社の奴らが対応するんだろうが、犯人が犯人なだけにな。偶然この国に出張に来ていた俺が応援に来たって訳だ」
「という事は牢政本部からこの事件の為だけにわざわざ人を派遣したって訳では無いんだね。それはまたご苦労様。で、犯人が犯人なだけにって言うのは?」
「厄介な事に、犯人が來冥者なんだよ。おっと、これ口外しないでくれよ? 俺たちしか握っていない情報でまだ公表していないからさ」
「了解。なるほどね、空久良も一応來冥者だもんね。そりゃ一人でも多い方が良いだろうし、応援に駆け付けるよう命令も飛ぶか」
逃亡犯や立てこもり犯が強い來冥力を有している來冥者かどうか。この点は非常に重要視されるところだ。
もし犯人が來冥者で異世界へ逃亡した場合、弱い來冥力しか扱えない非來冥者では太刀打ちできず確保は出来なくなってしまう。
牢政としてはそれだけは避けたいのだ。故に偶然にも出張に来ていた來冥者である空久良を応援に飛ばしたのだろう。




