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第12話

 司の事を見て固まっていた衛兵は他の衛兵たちに目配せをしてから軽く頷くと、こちら側にやって来た。


「驚いたぞ、司。まさかこんな所で再会するとは。確かラスボス役になったんだってな」


「僕に気付くの遅くない? まぁそれはそうと、僕もこんな所で君に会えるとは思って無かったよ。久し振り」


「 (だ、誰? 見た感じこの人、年齢は私たちより十歳くらい上かな。それにしても衛兵相手にタメ口って本当にどういう関係なんだろう?) 」


 今目の前で起きているであろう事件の事とか、この衛兵の事とか知りたい事が一気に生まれたユエルは司と衛兵を交互に見て落ち着かない様子だ。


 そんなユエルに気付いたのか、司が衛兵の紹介を始めた。


「ああ、こちらは五大機関――牢政(ろうせい)本部に所属している衛兵で、名前は空久良陸(からくらりく)


「……! 牢政本部……」


 想像以上の大物でユエルは驚愕する。


 司の言う五大機関とは、アルカナ・ヘヴンを統治する五つの最高機関の総称である。ちなみに転生協会は誰もが認める機関ではあるが、五大機関の一つでは無い。


 牢政は五大機関の内の一つであり治安維持や防衛活動、法を専門としている所だ。この空久良という男性の厳かな装備を見ても、普段から安全保障を目的として奮闘している背景が何となく見えてくる。


 今ユエルたちが暮らしているメルトリアや、他国にもその国を主に防衛対象とする牢政の支社があるが、彼は本部の人間だ。本部に所属ともなれば相当な実力者である。


 かなりの大事が起こっているのだろう。


 基本的に各五大機関の本部はアルカナ・ヘヴンの各国に存在しており、一つの国に二つ三つ密集している状況にはなっていない。


 メルトリアには五大機関の本部は無いが、代わりに転生協会がある。その為、一応は主要な国の一つとして人々に認識されてはいる。


「牢政本部からわざわざメルトリアに派遣されるなんてよっぽどの事件なんだね」


「それについて説明する前に……こちらのお嬢さんは? 司の恋人か?」


「……! ち、違います! 私は司くんの先輩です!」


 珍しく大声を上げたユエルに周囲の人々の視線が突き刺さる。それに気付いたユエルは顔を真っ赤にして縮み込んだ。


「ここじゃ目立つな。少し離れた所で話そうか」


 周りの野次馬たちががこちらに注目している事を確認した空久良は辺りをキョロキョロした後に店から少し距離を置いた場所へと司たちを誘導した。


「で、さっきの続きだけど転生協会での先輩って所か? 随分とまぁ可愛い女の子じゃないか。羨ましいな、こんな子が教育係として面倒見てくれるなんて。俺が牢政に入った時はさぁ……」


「そういうの良いから。ユエル先輩も反応に困ってるし」


 面と向かって可愛いと言われ、恥ずかしさで顔を上げれないユエルを見ながら司は言う。


「あーすまんすまん。ユエルちゃんって言うのか。よろしくな、こいつの事しっかり教育してくれよ。優秀な奴とは言え、転生協会でラスボス役として活動するのは初めてみたいだからよ」


「は、はい……!」


「先輩。一応補足しておきますけど、僕は元牢政所属なんです。とは言え、先日辞めて転生協会に来た訳ですけど。で、空久良はその時の同僚なんですよ。辞めた後も連絡は取り合おうって約束してたんですけど、まさかこんなに早く再会するとは」


「え……! 司くん、元牢政の人間だったんですか?」


 司が元牢政の人だと知り、先程までの羞恥心が驚愕で上書きされた。

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