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第11話

「あ、もしかして怒っちゃいました?」


「いえ。ただ司くんって意外と意地悪だなぁと思いまして」


 あんなに悩んでいた自分の裏側でまさかそんなお楽しみをしていたとは知らず、ユエルはどこか恥ずかしい気持ちになった。


 ユエルからのジト目を受け取った司はバツが悪そうな顔になって目を逸らす。


「あはは、今から行くカフェでデザート奢るのでそれでチャラって事で」


「さ、さすがに新人君に奢らせる訳にはいかないですよ! その気持ちだけで許しておきます」


 協会内では先輩ではあるが自分より歳下の女の子と言う事もあり、一人の男性としてユエルに奢ってあげたそうな司だったが、ここは従っておいた方が良さそうだ。


 司は困ったように微笑んだ後に頭だけ軽く下げて、ありがとうの意を示す。


「あれ?」


 そんな時、歩きながらユエルがふと何かに気付いたようで声を上げる。


「どうかしましたか?」


「何か人だかりができてませんか?」


 道路を隔てた向こう側、ユエルの視線の先には多くの人が集まっていた。行列と言うよりは物珍しい何かを見たいが為にやって来た野次馬のようだ。

 

 一つの店の前に銃やプロテクター等の厳重装備をした衛兵が十数名立ち、その前に野次馬たちが対面する形になっていた。更に彼らの間には立ち入り禁止のバリケードテープが貼られており、明らかに何か事件が起こっている事は誰の目から見ても明らかだった。


「何か事件みたいですね。と言うか僕たちの目的地、あのお店なんですけど」


「え? それは気になりますね。衛兵さんも結構な数居ますし、一体何があったんでしょうか」


「……あれ? あいつ……」


 司はユエルの質問とも独り言とも取れる言葉に特に返す事無く、しばらく考え込んだ後に店の近くへと向かって歩き始めた。


「あ。ちょ、ちょっと、司くん! 待ってください!」


 何が起きているか分からないが危険な事が発生しているなら彼一人を向かわせる訳にはいかない。そう思ったユエルは小走りで彼を追いかけた。


 そんな中、司はフードを被ってマスクもしていた男性と肩同士でぶつかってしまう。


「あ、すみません」


「……!」


 その男性は司を見た後に驚いたような表情に一瞬なるが、すぐに引き締めて頭だけを軽く下げて足早にその場を去って行った。


「……? 何だ今の人」


 少しだけ疑問に思った司だったが気にする程でもないかと頭を切り替えて、再び店の近くまで歩みを進める。そして野次馬の最前列まで来た所で足を止めた。


 やがて司の隣までやって来たユエルは疑問顔で彼の横顔を見る。


 確かにここは目的地の店である訳だし、普段から利用している身として気になるのも理解できるが、それにしたって彼の様子は少し変である。


「司くん! どうしたんですか? 何か変ですよ?」


「ああ、すみません。ちょっと知り合いが居たもので」


「知り合い?」


 ユエルがどの人だろうと衛兵一人一人に視線を送っている中、司は衛兵の内の一人と意識して目を合わせた。やがて目の合ったその衛兵は司の存在に気付いた後に驚愕の表情になる。


 その流れを見ていたユエルは、疑問が更に膨れ上がる。衛兵の反応を見るにどうやら司の事を知っているように見えるが、一体どういう関係なのだろうか。

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